猫の寿命は、生活習慣によって変わります。平均寿命より短くして生涯を終える子もいれば、20年30年と長生きをする子もいるでしょう。愛猫とずっと一緒にいたい、と願う飼い主にとっては、長寿のコツを日常生活に取り入れたいですよね。そこで今回は、猫の特徴と寿命の関係性や、長寿のコツなどを紹介します。
目次
猫の平均寿命を種類別に紹介
飼育環境や餌の質が向上したことなどを理由に、猫の平均寿命は、増加傾向にあります。しかし、生活習慣や猫の種類によっても寿命は異なるため、一概に全部の猫が長生きだとは言えないようです。
一般的な猫の平均寿命
現在、猫の平均寿命は15歳くらいと言われています。人間で例えると、80歳手前くらいの年齢になるようです。
種類で違う平均寿命
猫は、種類によって病気のかかりやすさ、体の仕組みなどが異なるため、種類ごとで平均寿命が異なります。例として、人気の品種をいくつか紹介します。
- アメリカンショートヘア:15~20歳
- オシキャット:10~15歳
- コラット:15歳
- サイベリアン:11~15歳
- スフィンクス:13~15歳
- ペルシャ:15歳
- マンクス:8~14歳
- ラグドール:12~17歳
猫の特徴によっても寿命は変わる?
性別の違いや飼育環境の違いなど、猫の特徴によって寿命はどう影響するのでしょうか。
室外猫か室内猫か
室内から一歩も外に出さない、という完全室内猫もいれば、自由に家を出入りし、時折外を冒険することができる室外猫など、飼い方は人によって様々です。
しかし、外に出る機会が多いということは、それだけ危険に直面する可能性も高くなります。他の動物とケンカをしたり、高いところから足を踏み外して落下したりなど、怪我だけでなく死のリスクも高いと言えるでしょう。
冒険に出かけたっきり、帰ってこなくなったというケースも珍しくありません。自由でマイペースな猫にとって、家の中と外を自由に行き来できるのは、ストレスフリーで心の健康には良いかもしれませんね。
しかし、それと引き換えに、危険がたくさんあるため、室外猫の方が平均寿命が短い傾向にあります。また、室外猫は外から病原菌をもらってくることも考えられます。
少しでも長生きさせたいのであれば、安全度の高い室内で飼う方が良いと言えるでしょう。
オスとメスの寿命の違い
オスとメスでは、1歳近くメスの方が長生きする傾向があるようです。人間も、女性の方が平均寿命が長いですよね。これは、染色体による老化防止効果が影響していると考えられます。
ただ、猫が人間ほど染色体の影響を受けるとは考えにくいと言われているため、染色体が寿命の差の要因とは言い難いようです。猫の場合、家族を守るために体を張るオスの方が危険にさらされることが多く、その本能が、結果的に短命を招いているのではないか、というのが有力な説と考えられます。
野良猫と飼い猫の寿命の違い
野良猫は、日々様々な危険と向き合いながら生活をしています。そのため、寿命を全うすることも難しく、その命は大体3~5年程度と言われているようです。
また、飼い猫のようにワクチン接種をしていないため、病気にかかるリスクも高くなります。飼い猫と10歳近く平均寿命に差があるのは、これらのことが原因と考えて良いでしょう。
去勢・避妊手術をしているかどうか
去勢・避妊手術をすると、約2.5年ほど寿命が延びると言われています。この理由には、以下のようなものがあります。
- 発情期のストレスから解放される
- 異性を求めて家から脱走することが減り、事故などのリスクが下がる
- 避妊をすることで、婦人系疾患を予防できる
手術をすることで、身体的にも精神的にも健康になり、寿命が延びると考えられています。しかし、手術後は太りやすいという説もあるため、肥満から何らかの病気を患う可能性があります。そのため、寿命が縮むと考える人もいるようです。
「オッドアイの猫は寿命が短い」は本当?
左右で目の色が異なるオッドアイは、見た目がきれいでかっこいいですよね。しかし、巷では「オッドアイは寿命が短くなる」という不吉な噂が囁かれているのを知っていますか。
なぜこういった噂が流れるようになったかの理由ですが、それは体の機能が弱いことが原因と考えられます。オッドアイの子は、目の色素が薄いことから、視力が悪かったり、聴力が弱かったりする傾向があります。
また、先天性の遺伝子異常によるオッドアイであれば、紫外線の刺激から目の細胞を守ることができず、目の病気にかかりやすいようです。こういったオッドアイならではの特徴から、短命と噂されるようになりました。
視力や聴力が弱いと、動物は自分の身を守ることが難しくなります。その結果、事故などのトラブルに巻き込まれやすく、命を落としてしまうことがあるのです。つまり、この噂はあながち嘘ではないと言えるでしょう。
病気を発症した猫の寿命はどれくらい?
病気を発症すると、本来の寿命を全うするのが難しいこともあるでしょう。愛猫が、残りどれくらい生きられるのか、飼い主としては気になりますよね。そこで、いくつかの疾患を例に、猫の寿命の変化を解説します。
エイズ
猫エイズは、いくつかのステージを進み、最終的に衰弱して死亡する、という恐ろしい病気です。ワクチンで防ぐことができる病気なので、猫を飼い始めたら接種させておきたいですね。
ただ、猫エイズは何段階ものステージがあり、一つひとつが数ヶ月~数年という期間となるので、決して進行が早い病気ではありません。
すべてのステージを進み、最終的な後天性免疫不全症候群までなるには、約10年ほどの時間がかかると予想されます。つまり、愛猫が亡くなっても、それがエイズによるものか、寿命によるものかの判断が難しいと言えるでしょう。
白血病
白血病ウイルスに感染すると、症状の出方は以下の2種類があります。
- 急性感染期:ウイルスが体内に入って2~6週間で症状が現れます。免疫力が高い猫であれば、無症状あるいは軽度で済むことが多いですが、子猫や老猫などは重症化する恐れがあります。この時期にウイルスを体外に排出できなければ、そのまま持続感染期に移行します。
- 持続感染期:感染して1~2年程度経過した後、ウイルスが増殖して症状が出ます。約70~90%の猫が、2~5年くらいで亡くなることが多いようです。
しかし、健康的な生活を送り、持続感染期に入っても10年以上症状が現れない子もいます。なかには、自然完治する子もいるので、死亡率が高くても、まだまだ回復の希望は残されていると言えるでしょう。
どちらの段階であっても、100%猫が死亡するとは限りません。そのため、ワクチン接種や免疫力アップにつながる生活習慣などを心がけることで、白血病ウイルスを跳ね返すことができる可能性があります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症の症状は様々ですが、特徴的なのは、食欲旺盛なのに体重が減る、というものです。これは糖尿病と同じ症状なので、間違える人も多いでしょう。
また、他の症状においても、別の疾患に似ているものが多いことから、甲状腺機能亢進症だと気づくのが遅れることもあります。
治療が遅れたり、誤診で適切な処置が行なわれないなどがあると、過剰な甲状腺ホルモン分泌で全身に異常が見られ、最終的に死に至ることも珍しくありません。8歳以上の老猫に発症することが多い病気で、その後の寿命は長くて5~7年程度です。
肥大型心筋症
心臓を覆う筋肉が分厚くなる病気で、心臓周辺の毛細血管が圧迫され、高血圧となります。肥大型心筋症の発見は難しく、なかには無症状の子もいます。完治することがほとんど見込めない病のため、少しでも延命させたい場合は、入院して治療に専念させる必要があります。
検査によって左心房が大きくなっていることが認められれば、寿命は1年ももたないことが多いようです。早期発見のため、愛猫の呼吸がおかしいと思ったときや、どんどん体重が減少していく場合は、一度病院で検査を受けましょう。
多発性嚢胞腎
腎臓に、嚢胞と呼ばれる袋がたくさんできる病気で、不治の病と言われています。点滴や腎臓に負担をかけない食生活などで、ある程度元気に過ごすことは可能ですが、完治はできません。
発症を防ぐためには、多発性嚢胞腎の遺伝子を持っていない品種を飼うか、多発性嚢胞腎の遺伝子と交配させないことが有効だと言えるでしょう。
初期段階は発見が難しいですが、病気が進行すると、お腹が膨らむようになったり、食欲不振、嘔吐などの症状が見られるようになったりします。
症状の進行具合によって寿命は異なり、残り3ヶ月と言われる子もいれば、治療の甲斐あって数年生きた子もいるようです。ただ、長寿猫のように10年以上生きるのは難しいでしょう。
門脈シャント
本来、アンモニアなどの毒素は肝臓などの器官で解毒される仕組みとなっています。しかし、何らかの原因で門脈が枝分かれし、解毒されていない物質が全身を巡るようになります。これが門脈シャントと呼ばれる病気で、猫の発症率は約2%と言われています。
全身に毒素が回ることで、体は様々な不調を訴えます。そのため、合併症を引き起こすことが多く、治療はやや困難です。門脈シャントを完治させるためには、外科手術を行なう必要があります。手術に成功し、その後の経過も問題がなければ完治が可能です。
しかし、内科治療しか行なっていない場合、根本的な原因となっている門脈がそのままの状態になっているため、完治ができず、短くて余命1~2ヶ月と宣告される恐れがあります。
ギネス記録を持つ世界一長生きな猫とは?
猫の平均寿命は15歳ですが、世界にはそれをはるかに超えるご長寿猫も存在します。ギネス記録にも認定された猫とは、一体どんな猫だったのでしょうか。
不動の王者「クリームパフ」
ギネスが認めた最高齢猫は、アメリカのメス猫で、名前は「クリームパフ」です。その年齢は、なんと38歳と3日。人間に換算すると、およそ168歳と言われているため、非常に長生きですよね。猫の平均寿命を20年以上上回っているのも驚きです。
ちなみに、クリームパフを飼っていた方は、無毛種で有名なスフィンクスも飼育していました。こちらも34歳2ヶ月と非常に長寿で、どんな飼育をしたのかが注目を集めています。
長寿猫の食生活に驚きの声も
平均寿命の倍以上長生きさせるためには、それなりの生活習慣が必要なはずです。そのため、長寿猫の飼い主ジェイク・ペリーさんには、どんなものを食べさせていたのか、という質問が殺到したようです。しかし、その回答は意外なものでした。
ジェイクさんが長寿猫たちに与えていたものは、ベーコンや卵、クリーム入りのコーヒーなど、本来猫に与えるに不適切なものを与えていたというのです。
つまり、何を食べるかということより、好きなものを食べさせてストレスフリーな生活を目指すことが、長寿に欠かせないポイントということなのかもしれませんね。
日本では18歳以上で表彰される
動物は、自分で体調管理ができません。人間のように、太ってきたからヘルシーな食事にしよう、運動をしよう、といったことが自主的にできるわけではないのです。そのため、ペットがどれだけ生きられるかは、個体の生命力だけでなく、飼い主の飼育による影響が大きいと言えます。
現代では、飼育環境や餌の質が向上したことにより、平均寿命が延びてきている傾向があります。しかし、猫特有の病気などもあるため、寿命を全うするのはそう簡単ではありません。
そこで、少しでも多くのペットが長生きするために、日本動物愛護協会は、長寿と認められたペットに表彰状を贈る制度を作りました。
ペットにとっても、飼い主にとっても名誉なことで、この表彰状をもらうために長寿を目指す、という人もいるでしょう。ペットの種類によって対象となる年齢が異なり、猫の場合は18歳以上で表彰してもらえます。
愛猫の寿命を20年30年と延ばすためには?日頃から行なうべき長寿のコツ4つ
「愛猫と少しでも長い時間を過ごしたい」そう願う飼い主も多いでしょう。それを実現させるためには、日頃から正しい生活習慣を心がけることが大切です。そこで、長寿を目指して行なってほしいポイントを4つ紹介します。
ストレスを与えない
ギネス記録に登録された猫の飼い主も、ストレスを感じさせないよう、楽しい生活を心がけていたようです。健やかな精神状態が、いかに生命力を高めるか、というのが分かりますね。では、具体的にどういった方法で愛猫のストレスを防げば良いのでしょうか。
環境の変化を感じさせない
猫は、縄張り意識が強い動物なので、環境の変化に非常に敏感です。知らない人が家に足を踏み入れただけで怒る子もいるでしょうし、引っ越しで住居が変わると、体調を崩すほどストレスを感じる子もいます。そのため、できるだけ愛猫のテリトリーを守ってあげることが大切です。
睡眠時間を確保させる
しっかり睡眠を取ることで、心と体の健康を維持します。毎日安心して眠ることができるよう、快適な寝床を整えてあげましょう。
きれいな環境で飼育する
猫はきれい好きなので、飼育環境も常に清潔にしておくことが大切です。小まめに掃除機をかけ、愛猫が普段使っているクッションなどに、ダニやノミが発生しないよう、適度に洗います。気持ち良い環境で、愛猫と楽しく過ごしましょう。
たくさん遊んであげる
マイペースで孤高な性格であれば、ある程度そっとしておいた方が良い場合があります。しかし、甘えん坊で飼い主が大好きな子は、頻繁に自分から寄ってくることがあるでしょう。
そんなときは、たくさん遊んであげてください。体を動かすことで適度な運動になるだけでなく、飼い主とのスキンシップも取れ、心も満たされます。
健康的な食生活を心がける
食が体を作る、と言われるように、日々の食事は健康維持に欠かせません。そのため、愛猫に合ったキャットフード選びを行なうことが大切です。また、人間の食べ物のなかには、猫が食べても良いものと、食べると健康を害するものがあります。
後々、病気を発症するリスクになるだけでなく、中毒症状で命を落とす可能性もあるため、できるだけ人間の食べ物を与えない方が良いでしょう。ストレスを感じさせないよう、適度に嗜好品を与えることも大切ですが、与え方には気をつけてください。
適度に運動させる
筋力の低下は、怪我や病気のリスクを高めます。そのため、日頃から体を動かして筋肉を刺激することが大切です。ハードな運動でなくて良いので、おもちゃを使ったり、追いかけっこをしたりなど、楽しく運動させましょう。
健康チェックを怠らない
怪我や病気をしないのが一番望ましいですが、どんなに気をつけていても病を患ってしまうことがあります。そこで大切なのが、早期発見・早期治療です。愛猫の異変にいち早く気づき対処することで、体への負担を最小限に完治させることができる場合があります。
早期発見のためにも、毎日愛猫の観察をするだけでなく、定期的に健康診断を受けさせることをおすすめします。
愛猫を長生きさせるためには飼い主の努力が必要
猫の寿命は、種類や体の特徴によっても異なります。そのため、長生きする子もいれば、平均寿命まで生きられなかった、という子もいるでしょう。しかし、病に侵されていたとしても、治療や生活習慣の改善などにより、完治して長生きさせることも可能です。
「愛猫には長生きしてもらいたい」という願いを叶えるためには、飼い主の努力が必須だと言っても過言ではないでしょう。日々の生活習慣をより良いものにし、ギネス記録不動の王者を超えられるほどの長寿を目指してみてはいかがでしょうか。