目次
猫の保護施設とは
猫の保護施設とはどのような場所か
猫の保護施設とは、飼い主がいない猫たちが里親を待つ施設のことです。
この保護施設のおかげで猫の殺処分は昔に比べたら減ってきているものの、平成26年度の猫の殺処分はまだ全国で10万匹を超えています。
このように猫が殺処分されるのを減らすために、個人ボランティアや民間団体がさまざまな形で猫の保護施設を運営しています。
そこにいる猫は、捨て猫、飼い主を失くしてしまった猫、野良猫などです。猫たちはこの保護施設で新しい飼い主を待ちながら暮らしています。
日本の猫の保護施設
日本にある猫の保護施設は以下の3つがあります。保護施設によりますが、譲渡会の会場や猫カフェなどを備えている保護施設が多いようです。
- NPO団体が運営する大規模施設を持つ動物保護施設
- 民間団体や個人が運営する開放型保護施設
- 猫カフェ保護施設
猫の保護施設の活動
猫の保護と世話
猫の保護施設の多くは、施設の職員が保護現場に出向いて猫を保護することが多く、野良猫や多頭飼育崩壊の現場などで猫を保護します。
保護依頼は近所の住民からの依頼であったり、市町村の相談会で依頼されることもあります。
猫の健康管理
猫を保護したらすぐにノミ・ダニの駆除を行って、動物病院で検便検査や血液検査をします。猫エイズなどの病気にかかっていないかを検査で確認し、去勢・避妊手術をしていない猫には年齢に応じて手術を行ないます。
その後、保護施設で飼育しますが、毎日猫の健康状態に気を配り、必要に応じて動物病院へ連れて行きます。また、ワクチン接種も欠かさず行ないます。
日常の世話
猫の世話は曜日に関係なく毎日必要なことです。食事を与えて、トイレを掃除し、保護した猫に里親が見つかるように、健康状態を把握して世話をしなければなりません。
また、保護した猫はいろいろな性格の子がいます。人馴れしていないため、触ることもできないどころか人間に対して威嚇して餌を食べないような猫もいます。
反対に人に馴れていて甘えてくる子がいたり、中には他の猫とケンカばかりするような子もいます。職員はこのようなさまざまな性格をした猫に合わせて対応を変えることも必要です。
猫にとって住みやすい環境を作るとともに、人は怖くない存在だと分かってもらい、人を好きになってもらうことも大切な仕事です。それは、人馴れしている猫のほうが里親が見つかりやすいためです。
猫の譲渡会開催
猫の保護施設の仕事で大きなものは、譲渡会の開催です。施設以外の場所を借りて開催することもありますし、保護施設内に譲渡会ができる場所があり、そこで定期的に譲渡会を開催して猫の里親探しをします。
猫の保護にかかる費用
【画像】:ポペットフレンズの小夏ちゃん
餌代
猫を保護するとさまざまな費用がかかります。まず、必ず必要になるのは食費です。必要なのは水とフードですが、保護施設にいる頭数が多ければそれだけ餌代がかかります。
普通のドライフードだけなら比較的値段は安くなりますが、猫の健康を考えるとウェットフードを与えるのは重要です。
猫はあまり水を飲まないので、水分を多く含むウェットフードを与えることで水分を補給させるのです。ウェットフードはドライフードに比べると金額が高いので、その分餌代が増えることになります。
医療費
動物病院での医療費は全額負担です。ペット保険に加入していれば、何割か負担される場合もありますが、保護猫は保険に入っている場合はほぼありません。
猫を保護した時、最初にしておきたい医療行為は、「検便や血液検査などの健康診断」「ウイルス検査」「予防接種」「去勢・避妊手術」「ノミ・ダニ駆除」です。
迷子になった猫の中には、手術されている場合もありますが、されていない一定の年齢に達している猫に関しては手術を行ないます。
また、日頃の健康チェックをして、体調が悪そうな猫がいたら動物病院へ連れて行きます。年に1回のワクチン接種やノミ・ダニ駆除なども行います。
保護猫の数が多ければ多いほど、感染症にかかっている猫がいれば他の猫に感染する可能性があるため、医療費が莫大にかかることがあります。
雑費
保護猫施設で他にかかる費用は、雑費です。トイレや猫砂、爪とぎ、食事用の食器、病院へ連れて行く時に使用するキャリーバッグ、猫が暮らすケージ、キャットタワーやベッドなど、猫を飼育するために必要なものを揃えるとかなりの金額になります。
猫の保護施設を手伝う
猫の保護施設でボランティア活動をするためには
猫が好きで、力になりたい人がいたらボランティア活動をおすすめします。
動物の保護施設の中には、ボランティアの人数が足りなくて困っているところがありますので、家から通える場所にある施設に問い合わせてみましょう。ボランティアの形には下記のようにさまざまな方法があります。
- 保護施設で働く
- 預かりボランティア
- ミルクボランティア
- 譲渡会お手伝い
保護施設では、猫の世話や施設内の掃除、遊び相手をするボランティアが必要です。保護施設で保護されている猫は、施設で暮らしながら里親を待っています。譲渡されるためには少しでも人に馴れているほうが有利な場合が多いので、ボランティアと触れ合うことはとても大切なことなのです。
保護施設では、健康状態を常にチェックし、食事やトイレの世話など猫にとって快適な環境を維持するため、保護できる数に限りがあります。ボランティアが自宅で猫を一時預かりしてくれれば、その分保護施設に空きが出るため殺処分される猫を減らすことができます。
預かりボランティアは、里親が決まるまで猫を自宅で飼育します。人馴れさせる目的もありますが、病気や障害がある猫で常に目配りが必要な猫を預かることもあります。また、他の猫との集団生活にストレスを抱えてしまう猫を預かっているボランティアもいます。
生まれたばかりの子猫を預かるミルクボランティアもいます。生後間もない子猫の飼育はとても大変です。体温調整をして、数時間おきにミルクをあげて排泄補助する必要があるため、保護施設で健康管理するのは難しいのです。ミルクボランティアをするためには、猫の飼育経験がある人のみの応募としているところが多いのが現状です。
毎日の世話、体重測定など子猫にかける時間や手間がかかるので、仕事をしている人や1日3時間以上家を空けることがある人はミルクボランティアはできません。
猫の保護施設では、里親を探すために定期的に譲渡会を開催するところが多いのですが、譲渡会を開催するためのお手伝いボランティアもあります。譲渡会で里親希望者への対応や、募金活動などのお手伝いをします。
猫の保護施設に寄付する
ボランティアが困難な場合は、保護施設に寄付する方法もあります。ほとんどの保護施設は、活動資金を寄付やグッズ販売の売上などでまかなっています。お金を寄付するのではなくても、団体のホームページで必要な物資を掲載している場合があります。猫砂やフードなど、インターネットを通じて物資を寄付する方法もあります。
保護施設でボランティアをするときの注意点
猫の保護施設でボランティアをするとき、以下のことに注意する必要があります。
- ケガがつきもの
- 里親詐欺に注意する
猫の保護現場では特に、猫は人に捕らえられないように噛み付いたりすることがあります。
また、保護したての猫は人を怖がって自分の身を守ろうと攻撃的になることがあるため、ケガに注意する必要があります。猫に噛まれたり引っかかれることで、猫ひっかき病になったり死亡してしまうこともあります。
残念ながら、猫を虐待目的で引き取る人や、引き取っても手術をさせないで無責任に猫を増やす人、飼育放棄する人が存在します。
猫の里親希望する人がこのようなことをしない人であるのを見極めるのは難しい場合がありますが、猫のために十分注意しなければなりません。
猫の保護施設で猫を譲渡してもらうためには
譲渡には条件がある
猫を譲渡してもらうためには、ほとんどの保護施設が譲渡に必要な条件があります。猫の寿命は20年近くありますので、最期まで責任を持って飼育できるように年齢制限を設けている場合が多く、一人暮らしの場合も譲渡ができないことが多いです。
譲渡の条件は保護施設によって異なりますので、希望する場合は問い合わせてみましょう。
譲渡してもらうために用意するもの
猫の保護施設では、猫の譲渡のときに必要なものがあります。
- 身分証明書
- 契約書
- 印鑑
- アパートなどの共有住宅の場合は飼育許可証
- 譲渡される猫にかかった治療費やワクチン代
東京近郊にある猫の保護施設
東京キャットガーディアン
東京キャットガーディアンは日本初の試みを行っている保護施設です。里親を待つ猫たちの譲渡会会場と猫カフェ、猫関連のグッズショップがひとつになった開放型シェルターとなっています。猫は飼えないという人でもカフェでお茶を飲んだりグッズを購入することで猫たちを救うことに繋がります。
車で行う移動譲渡会では、ホームセンターなどで定期的に譲渡会を開催しています。譲渡希望者はWEBより申込みをして、予約した日時に譲渡会会場で個別面談をします。
東京キャットガーディアンでは1匹でも不幸な猫を減らすため、譲渡するのは去勢・避妊手術が終わった猫です。譲渡希望者の面談後、譲渡の条件を満たした里親さんに猫を譲渡します。
また、猫カフェの運営についての勉強会や猫付きシェアハウスの運営、1日ボランティア体験なども行っています。さまざまな方法で猫の保護に携わることができます。
ねこけん
ねこけんは、「殺処分0」を目指して、TNR活動をメインに行っています。TNRとは、地域猫などの飼い主がいない猫を捕獲(トラップ)して、去勢・避妊手術(ニューター)して元の場所に戻す(リターン)活動のことです。
不幸な猫を減らすために不要な繁殖を防ぐ目的で行われます。手術のときに耳の先端をカットして元の場所に戻すことから、手術場が済んだ地域猫のことを「さくら猫(耳が桜の花びらのような形になることから)」と呼ばれることがあります。
ねこけんの活動は、猫の保護や譲渡会の開催、猫に関する相談などの猫の命を救う活動です。飼い主がいない猫たちの不要な繁殖を防いで、不幸な命が増えないようにTNRで猫たちが増えないような活動をしています。
キャッツイン東京
キャッツイン東京は、猫の里親探しを目的にした里親募集型の保護猫カフェです。カフェに入るためには会員になる必要があります。そして、お茶などのお店の売上は猫のレスキューや譲渡などにかかる費用として活用されます。
また、猫と暮らしたことがない里親希望者には、猫との暮らしを体験できる宿泊研修があります。猫を飼ったことがない人で、猫と暮らす体験をしてみたい方が、1晩だけの里親体験ができる研修です。
申し込みをしたら、到着後は猫についての講座を受講してから、スタッフと共に猫の世話や掃除を体験します。そして、夜間の猫の世話は1日飼い主さんとなる体験者が行ないます。
ねこざんまい
ねこざんまいは、TNRを中心とした活動を行う個人ボランティアの集まりです。去勢・避妊手術が行われていない飼い主のいない地域猫に手術を行って、地域に戻す活動を行うとともに、保護が必要な猫には里親を探す活動も行っています。
手術を終えて元の場所に戻した猫は、そこで一代限りの天寿を全うできるように、外猫用のトイレを作り、地域の掃除を積極的に行うなどして、猫と人が共存できるような活動を行っています。また、譲渡会も定期的に行って里親探しを行っています。
アルマ
アルマは関東圏の動物愛護センターから処分されることが決定した犬や猫を引取り、保護して里親を探すまでの活動を行っています。日本では殺処分される犬や猫の数が10万頭を超えています。
アルマは、動物愛護センターが動物を処分する施設ではなく生かす施設へと変わるように、犬や猫を飼うなら飼育放棄された犬猫を選ぶ選択へと変わるようにとの志で活動を行っています。
アルマの活動の主軸は、センターに収容された犬猫の命を繋げることです。定期的に譲渡会開催して里親を探したり、フリーマーケットを開催して売上を活動費に当てています。
保護猫の存在を知ろう
保護猫施設では、飼い主さんを待っている猫がたくさんいます。猫を飼いたいと考えた時、一度保護施設へ足を向けてみてはどうでしょうか。子猫だけではなく、成猫も家族を待っています。保護猫の存在がもっと広く知られるようになれば、不幸な猫を1匹でも減らすことができると思うのです。多くの保護施設が願っていることは、保護する猫がいなくなること、そして飼い主がいない猫が減ることです。そのためにできることは何かを保護施設は常に発信し続けています。