メス猫を飼う場合、生理用品を準備しておかなければならないのか、生理中にどう接すれば良いのかなど、気になることがいろいろありますよね。しかし、猫には人間のような生理はありません。そのため、妊娠のきっかけになる発情期の対処に気をつける必要があります。具体的にどのような対応をすれば良いのか、メス猫の発情期事情について解説します。
目次
猫に生理はない!
子どもを作るための準備である生理は、人間だけでなく犬にもあります。そのため、猫にもあると思う人もいるかもしれませんね。
しかし、猫には生理がありません。では、どのようにして妊娠、出産という一連の流れが生まれるのでしょうか。
一般的な生理のメカニズム
生理は、人間などの高等霊長類に見られるものです。一定の周期で訪れ、受精卵が着床しなければ、子宮内の膜が剥がれて排出されます。
これに伴い、生理中は出血が見られます。しかし、生理出血があるのは人間と犬くらいだと言われており、生理があるからと言って、必ず出血を伴うわけではないようです。
無事に受精卵が着床すれば、子宮内膜が剥がれ落ちることがないため、生理が止まります。
猫は「生理」ではなく「発情」をする
猫に生理はありませんが、その代わり、妊娠のきっかけとして「発情期」が一定の周期で訪れます。
猫にとって、これが生理だと言っても過言ではないでしょう。では、猫の発情はどういったものなのかを解説します。
いつから発情する?
個体差はありますが、大体生後6~12ヶ月程度で初めての発情を迎えます。
一般的に、長毛種より短毛種の方が性成熟が早い傾向があり、長毛種のなかには生後12~18ヶ月になって初めて発情する、という子も多く見られます。
発情周期
周りにオス猫がいるかどうかや生活環境など、様々なことが影響するため、猫の発情周期は不規則です。
人間のように月に1回と定まっていない分、飼い主がちょっとした異変にすぐ気づいてあげる必要があります。
一般的に、発情期間は2~3週間程度で、5~16日くらいの休止期間を経て再び発情する、というサイクルとなります。
猫は交尾排卵を行なう
人間は、一定の周期で排卵日が訪れ、妊娠できる準備をします。これを「自然排卵」と呼び、妊娠を望む場合は、排卵周期をしっかり把握しておくことが重要となります。
しかし、猫はこの自然排卵を行なう動物ではありません。発情期を迎え、交尾をしたいときだけ排卵する「交尾排卵」が行なわれるのです。
いつ子どもができても良いよう準備する期間がないため、生理出血も見られません。
また、交尾のタイミングで必ず排卵が行なわれることから、猫の妊娠率は90%以上の高確率と言われています。
猫以外に交尾排卵を行なう動物
猫以外で、交尾排卵を行なう動物は以下のとおりです。
- ウサギ
- フェレット
- ラクダ etc
ペットとして人気のウサギやフェレットも、交尾排卵を行ないます。そのため、飼育中に生理出血が見られることもありません。
猫の発情期に見られる特徴
猫の発情期は、普段とは違う様々な異変が見られます。それに飼い主が対応してあげる必要があるため、どんな特徴が見られるかを理解しておきましょう。
発情期は4つの周期に分けられる
猫の発情期は、4つのサイクルによって成り立っています。それぞれの特徴は以下のとおりです。
発情前期
前期は、いつもよりメス猫が活発になるのが特徴です。そわそわと落ち着かない様子で、トイレの回数が増えたり、飼い主に何度も頭をすり寄せてきたりなどがあります。
この段階では、まだオス猫の交尾を受け入れようとしません。それどころか、拒否の意を示し、オス猫を避ける姿も見られるでしょう。
期間は、およそ1~5日程度です。
発情期
本格的な発情期に入ります。前期で見られる異変に気付かなかった人も、発情期に入ると普段と違うと感じ取れるほど、メス猫は様々な変化を見せます。主な特徴には、以下のようなものがあります。
- 普段と違う大きな声で鳴き、オス猫にアピールする
- 背中を地面につけてくねくねと動く
- お尻を高く持ち上げたり、尻尾を横にずらしたりする
- スプレー行為をする
この時期にオス猫と交尾をすると、約50時間ほどで排卵が起こりますが、交尾が行なわれなければ、卵胞が退行します。期間は、およそ4~10日程度です。
発情後期
後期に入ったメス猫は、オス猫の交尾を受け入れなくなります。大体1日ほどで終わり、次に発情期を迎えるまでの休止期間に入ります。
発情休止期
交尾を行ない、無事に妊娠できたメス猫は、次の繁殖期を迎えるまで発情しません。しかし、妊娠しなかった場合は、5~16日程度経てば、再び発情期を迎えます。
メスの特徴
発情期を迎えたメス猫には、様々な特徴が見られます。鳴き方やスプレー行為など、普段と違う様子から発情期を察する人も多いでしょう。
しかし、頭をすり寄せてきたり、地面に寝転がってごろごろしたりなど、ただじゃれているだけにしか見えないこともあります。
そのため、発情期に気づけない人もいるかもしれませんね。人間に見られる生理出血のように、猫の発情には明確なサインがありません。
いつの間にか子猫が生まれていた、ということも考えられるため、メス猫を飼っている人は、普段との違いをきちんと見極めてあげましょう。
オスの特徴
発情期を迎えたオス猫も、大きな声で鳴いたり、スプレー行為をしたりなどの特徴が見られます。
興奮状態にあるため、攻撃的になることが多く、他のオス猫とケンカをしてしまうこともあるようです。
猫に出血が見られたら病気の可能性大
猫が生殖器から出血をすると、それを生理だと勘違いする人がいるかもしれませんね。しかし、猫に生理はなく、出血が見られることもありません。
万が一、生殖器から出血が見られる場合は、何らかの病気が原因と考えられます。どんな病気が考えられるかをいくつか紹介します。
泌尿器系の病気
血尿が見られた場合、泌尿器系の病気が疑われます。よく見られるものとして、以下の2つがあります。
- 膀胱炎
- 尿路結石
細菌感染や尿結石により、膀胱が傷ついて血尿が出ます。命にかかわる病気ではありませんが、トイレのたびに痛みを感じるため、トイレを我慢するようになります。
症状が悪化する前に、病院で治療を受けることが大切です。
腎臓や尿管など、様々な場所に結石ができる病気です。結石によって膀胱の粘膜が傷つき、膀胱炎になることもあります。
尿が少しずつしか出なかったり、常にそわそわとした様子だったりする場合は、結石によって痛みを感じているのかもしれません。
食の影響による出血
ネギ類には「アリルプロピルジフィルヒド」という成分が含まれています。これは、赤血球を破壊する働きがあるため、溶血性貧血を起こす原因となります。
初期は、よだれや下痢などの症状が一般的ですが、進行すると血尿も見られます。ネギ類を食べたら、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
内臓のケガや炎症
ガラスの破片やネジなど、エサとは違う何かを誤食したことによって消化器官が傷つき、血尿が出る場合があります。
また、体内の一部で炎症を起こしている場合も、同様に血尿が見られます。体の見えない部分でケガや病気がある、というサインだと考えられるため、すぐに動物病院を受診しましょう。
子宮の病気
メス猫には、オスにはない子宮の病気があります。陰部からの出血で考えられる病気は、以下の3つです。
子宮内膜炎
発情休止期の猫の子宮頚管は閉じられていますが、発情期に入ると、精子を迎え入れるために子宮頚管が開きます。
しかし、このタイミングで菌が子宮内に侵入し、内膜が炎症を起こすことがあります。これが子宮内膜症という病気で、長引くと子宮蓄膿症を併発すると考えられます。
膣内の常在菌や、その他の消化器官に常在する菌による細菌感染が原因とされていますが、ホルモンの影響も原因のひとつです。
受精卵を着床させやすくするため、「エストロゲン」という女性ホルモンが分泌されます。
しかし、これによって子宮内がより快適な環境になり、侵入した菌も繁殖しやすくなるのです。
赤ちゃんのために行なっていることが、菌の繁殖を助長しているとも言えるでしょう。
子宮蓄膿症
子宮に膿がたまる病気です。膿が外に漏れだす「開放型」と、子宮内にたまって外に出ない「閉鎖型」の2種類があります。
陰部に血がついているだけでなく、悪臭を伴う汚れがついていれば、膿が出ていると考えて良いでしょう。
また、お腹が膨れや多飲多尿なども子宮蓄膿症の代表的な症状です。進行が早い病気なので、早期発見が愛猫を助ける大きなカギとなるでしょう。
子宮ガン
子宮ガンを患うと、長期的におりものが見られるようになります。さらさらとした液体状のものもあれば、膿や血が混ざっているものもあり、状態は猫によって様々です。
この他にも、嘔吐や下痢、食欲不振などの様々な症状が見られます。治療は外科手術による子宮摘出が一般的ですが、悪性の確率が高いため、発見時には他に転移していることも珍しくありません。
少しでも異変を感じたら、すぐに医師に診てもらう、というのが愛猫の生存率を高めるポイントとなるでしょう。
発情による負担を軽減させるには避妊手術が一番効果的
発情期を迎えた猫は、普段は見せない様々な変化を見せます。そのたびに気を遣って接するのは、飼い主にとって負担ですよね。
そんな飼い主の負担を減らすため、もっとも効果的なのは避妊手術です。
避妊手術による恩恵
メス猫を飼うことになったら、できるだけ早めに行なった方が良いと言われるのが避妊手術です。
病気やケガをしていないのに、手術を受けさせるのは可哀想だと思う人もいるかもしれませんね。しかし、繁殖を望まない場合は、避妊手術を受けておいた方が、愛猫の健康を守ることにも役立ちます。
では、具体的にどういったメリットがあるのでしょうか。
婦人系の病気も予防可能
婦人系の病気は、子宮や卵巣などに発症することがほとんどです。命にかかわる病気が多く、異変に気付いてあげられなかったことが原因で、手遅れになってしまった、ということもあるでしょう。
しかし、生殖器を除去することにより、病気の土台となるものがなくなるため、愛猫の健康を守ることにつながります。
性格が穏やかになる
発情期を迎えるのは、性的に成熟し、妊娠できる体になってからです。そのため、あえて性的に未熟な状態の体にすることで、発情期をなくすことができます。
発情期はそわそわと落ち着かない姿を見せるメス猫ですが、発情期をなくすことで、落ち着いた生活ができ、性格も穏やかになる傾向があるようです。
避妊手術に適した時期
メス猫の繁殖を望まない場合は、避妊手術をさせるのが一般的です。できるだけ早めに、と言われますが、どれくらいの時期に行なうのがベストなのでしょうか。
生後6ヶ月くらい
個体差はありますが、生後6ヶ月くらいから初めての発情期を迎える子もいます。
そのため、ある程度体ができあがり、かつ発情期を迎えていない5~6ヶ月程度を狙うのがベストです。
あまり早すぎると、小さな体に負担がかかってしまうので気を付けましょう。月齢の他に、タイミングを見極めるポイントは以下のとおりです。
- 体重2kg程度、あるいは体重増加しなくなったら
- 永久歯が生えそろったら
なかには、飼育中のメス猫が一度出産を経験してくれれば、その後は妊娠を望まない、という人もいるでしょう。
こういった場合は、大人になってから避妊手術を受けさせることになります。
子猫が乳離れをした頃を狙って避妊手術を受けさせると、その後の発情は食い止められるでしょう。
しかし、子育て中でも妊娠が可能なため、オス猫が近くにいると避妊手術前に再び妊娠してしまう可能性があります。
乳離れができるのは約5~6週間と言われているため、その間は絶対にオス猫を近づけないようにしてください。
発情期中は避けよう
避妊手術を受けさせようと思っていたら、その前に発情期間に入ってしまった、ということもあるかもしれません。
実際は発情中でも手術が可能ですが、メス猫の体は妊娠の準備を整えるため、子宮が活発になっています。
手術中に血が止まりにくくなったり、術後の体調が安定しなかったりなどが考えられるため、できるだけ発情期中は避けましょう。
猫の発情は生理と一緒ではない!出血があればすぐに動物病院に連れて行こう
メス猫の発情期は、人間の生理とは異なります。生理出血がないため、発情期を明確に見分けるのも難しいでしょう。
気づけば妊娠していた、というケースも珍しくはありません。もし、生殖器からの出血があれば、それは愛猫が病気を患っているサインの可能性が高いと言えます。
生理と勘違いして放っていると、病が愛猫の体を蝕んでいくことになります。大切な家族の命を守るため、猫の発情期を正しく理解し、適切な対処をしましょう。