猫の飼い主を明確に証明してくれるものとして、今マイクロチップが注目を集めています。そのためか、飼い猫でも首輪をしていない子が増えてきました。では、猫に埋め込むマイクロチップとは、一体どのようなものなのでしょうか?また、どんなメリットがあるのかも一緒に紹介します。
目次
猫に埋め込むマイクロチップとは?
マイクロチップとは、猫の身元証明となるものです。動物それぞれに識別番号が割り振られ、埋め込まれたマイクロチップを読み取ることで、住所などの登録情報が分かります。
2016年に、日本でスタートした「マイナンバー制度」をイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。では、具体的にどのようにして使われるものなのか、もう少し詳しく解説します。
マイクロチップとはどんなもの?
マイクロチップはどんな形状のものなのか、またどのようにして使うものなのかなどを解説します。埋め込みを考えている人は、ぜひ参考にしてください。
外見
マイクロチップは、直径2mm、長さ8~12mm程度の標識器具です。細長いカプセルのような形で、内部はIC、コンデンサ、電極コイルから構成されています。外側は、生体適合ガラスで覆われているため、体内で溶ける心配もありません。
特徴と仕組み
マイクロチップには15桁の数字が記録されており、内訳は以下のとおりです。
- 国コード:3桁
- 動物コード:2桁
- ディーラーコード:2桁
- 個体識別番号:8桁
以上の計15の数字が、個体識別の役割を果たします。また、リーダーから発信される電波を利用しているため、電池不要で半永久的に利用できます。
埋め込む場所
埋め込む場所は、動物によって異なります。猫の場合は、首の後ろの皮下に埋め込まれることが一般的です。
探し方
動物病院や保健所、動物保護センターなどに、マイクロチップを読み取るためのリーダーが置かれています。それを使ってマイクロチップの番号を読み取ることで、登録情報の閲覧ができる、という仕組みです。
こうして飼い主の連絡先を得ることができたり、目の前の猫が本当に自分の猫なのかを識別することができます。
使える動物の種類
埋め込み時は、注射を刺すときのような痛みがあるようです。しかし、その後は痛みを感じることなく、普通に生活をすることができます。
動物に対する負担が少ないという理由から、ほとんどの動物に使用することが可能です。犬や猫はもちろん、鳥類や爬虫類、両生類などにも埋め込むことができますよ。
マイクロチップに登録できる情報
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猫の識別に役立つマイクロチップには、以下のような情報が登録できます。
- IDナンバー:識別番号
- 埋め込んだ日時
- 飼い主情報:飼い主の名前、住所、電話番号
- 動物情報:名前、生年月、性別、動物種、被毛の色、去勢・避妊済
- 獣医師情報:獣医氏名、所属獣医師会コード
- 獣医施設情報:住所、電話番号
飼い主情報だけでなく、獣医情報の登録までできるのが驚きですね。これならば、身元不明な猫がいても、すぐに関係者に辿り着くことができそうです。
AIPOへの登録がおすすめ
AIPOとは、動物ID普及推進会議の略称です。マイクロチップの普及推進を行なっているため、マイクロチップの登録先として一番メジャーな機関だと言えるでしょう。
他にも情報登録ができる団体がありますが、知名度でAIPOの右に出るものはいません。他団体に登録している人は、念のためAIPOにも登録しておいた方が良いでしょう。
住所変更があれば必ず変更手続きをしよう
様々な情報が登録できるマイクロチップですが、引っ越しなどで住所が変わった際には、必ず変更手続きが必要です。
変更し忘れていると、万が一の場合、飼い主との連絡が取れないことが考えられます。
変更手続きは、動物病院などにある登録内容変更の書類に、必要事項を記入するだけなので、忘れず行ないましょう。
マイクロチップを猫に埋め込むメリットとデメリット
猫の明確な身元証明ができるため、マイクロチップの関心は年々増加傾向にあります。しかし、良い面もあれば、懸念される面もあるのも事実です。
ここでは、マイクロチップのメリットとデメリットを明確にして紹介します。
メリット
マイクロチップのメリットは、以下のものが挙げられます。
- 飼い猫の証明ができる
- 災害時でも戻ってくる確率が高まる
- 飼育放棄の対策になる
- 種類によっては体温計代わりになる
同じ猫の種類だと、顔や体格がそっくりのため、愛猫かどうかを識別するのは難しいのはないですよね。特殊な特徴がない限り、愛猫だと自信を持って言えない人も多いでしょう。
そこで役立つのがマイクロチップです。飼い主情報が登録されているため、目の前の猫が愛猫かどうかを明確にできます。万が一、数人の飼い主が名乗り出てしまっても、証拠があれば納得して飼い主のもとに戻ることができるでしょう。
災害時などの緊急事態に、愛猫と離れ離れになってしまうことがあります。探しても見つからず、絶望に打ちひしがれる人も多いでしょう。
しかし、マイクロチップを埋め込んでおけば、リーダーで読み取った情報を照会することで、飼い主に連絡をすることができます。そのため、自分の足で探すより、再会の確率が高いと言えるでしょう。
昨今、たびたび大きな災害に見舞われることがあります。その際、ペットと飼い主との再会確率を上げる手段として、マイクロチップは人々の関心を集めています。
飼い主のなかには、飼育ができなくなり、愛猫を捨ててしまう人がいます。そんな無責任な行為を阻止することにも役立ちます。
飼い主の勝手な都合から猫の命を救ってくれるのも、マイクロチップの大きなメリットなのです。
マイクロチップのなかには、ライフチップバイオサーモという温度に対して感度が良いものがあります。そのため、埋め込むだけで体温測定が可能で、リーダーを読み取ることで、そのときの体温を知ることができます。
一般的に、猫の体温は肛門で測ります。しかし、肛門に温度計を入れられることを嫌う子もいるため、検温に手こずる人も多いでしょう。そんな人にとっては、愛猫の体温測定ができる機能は、非常にありがたいですよね。
デメリット
飼い主と猫の繋がりを強める役割が強いマイクロチップですが、利用するうえでのデメリットもいくつかあります。具体的にどんなところが懸念されるのかを紹介するので、埋め込みを行なう前に必ず確認しておきましょう。
- 体内のマイクロチップが移動し破損するリスクがある
- 個人情報が知られる
- リーダーがないと意味がない
- 居場所の特定はできない
- メーカー間の互換性がない
一般的に、埋め込みは猫の首の後ろに行なわれます。皮下組織に定着するため、体内で移動することはほとんどありませんが、極まれに埋め込み箇所から大きくはずれた場所でマイクロチップが見つかることがあります。
リーダーでうまく読み取れなかったり、体内で破損したりするリスクも考えられるため、定期的にマイクロチップが移動していないか確認することが大切です。
実際に、犬のマイクロチップが体内移動したことを記したブログがあるので、参考に覗いてみてください。
ブログ:花梨&いろは
ブログ:犬の時間…ぺんぺん日記
飼い主情報が登録されているため、リーダーを通して個人情報を知られることになります。
データベースの検索は、獣医師や関係者のみとなるため、悪用のリスクはそれほど高くはありませんが、100%安心とは言えません。そのため、個人情報の登録に警戒する人も多いでしょう。
マイクロチップを読み取ることができるのは、専用のリーダーのみです。そのため、リーダーがなければ、猫の情報を知ることができません。
近くに動物病院などがあれば良いですが、ない場合は、すぐに猫を識別できないデメリットがあります。
身元証明になる、という言葉から、GPSのように居場所の特定ができると勘違いされる傾向があります。
しかし、マイクロチップにGPS機能はないため、愛猫が現在どこにいるのかという居場所の特定はできません。
マイクロチップを作っているメーカーはいくつかあります。そのため、ひとつのリーダーですべてのマイクロチップを読む取ることができるわけではありません。
例えば、A社が作ったマイクロチップを埋め込んだ場合、A社のリーダーで読み取ることはできても、B社のリーダーでは読み取れない場合があります。
メーカー間で互換性がないのは、非常時には大きなデメリットとなるかもしれませんね。
猫にマイクロチップを埋め込むときの料金
それぞれに識別番号が割り振られた特別なチップなので、なんとなく費用も高そうですよね。マイクロチップを愛猫に埋め込みたいと思った場合、具体的にどのような内訳でお金がかかるのでしょうか。
マイクロチップ自体は無料
驚くことに、マイクロチップ自体は無料で利用できます。特別なチップなので、ひとつ数万円するものだったらどうしよう、と不安に思う必要もありません。
埋め込み費用
マイクロチップの埋め込みは、獣医療行為となるため、必ず動物病院で行なってもらう必要があります。その際の埋め込み費用は、大体6,000円前後が多く、高いところでも10,000円くらいです。
動物病院によって費用が異なるので、事前に確認をしておくと良いでしょう。
情報登録費用
マイクロチップの情報登録にも費用がかかります。登録料は1,000円で、埋め込み費用と合わせて7,000円くらいになることが多いようです。
補助金が出る自治体もある
マイクロチップの装着を推進するため、補助金を出してくれる自治体があります。指定地域に在住しているペット、情報登録先がAIPOであることなど、補助金をもらうためにはいくつかの条件があります。
補助金を出してもらえるなら、とマイクロチップを前向きに考える人も増えそうですね。
例えば、横浜市などは以下のように推進事業が行われています。
愛猫にマイクロチップを埋め込む必要性
数多くのメリットがあるマイクロチップですが、デメリットのことも考えると、本当に必要なものかどうかと悩みますよね。
実際に、どれだけの必要性があるのか、また、世間一般ではどのように捉えられているのかなどを解説します。
装着数は増加傾向にある
昨今、大きな地震や台風の影響などにより、たくさんの人が命を落としてしまうことがあります。いつ自分の身に降りかかるかもしれない危機感から、防災対策に敏感になっている人も多いでしょう。
そのうちのひとつが、猫へのマイクロチップの埋め込みです。万が一に備えるだけでなく、補助金が出ることもあり、マイクロチップの埋め込みを前向きに考えている人が増えてきているようです。
登録情報と現状が一致しない可能性がある
引っ越しなどで住所変更があると、免許証や住民票など、様々な変更手続きが必要となります。そういった忙しさにより、マイクロチップの変更手続きを忘れてしまうケースも多いようです。
そのため、万が一のことがあった際、せっかく飼い主情報が分かっても、連絡が取れないということが考えられます。こういったことから、本当にマイクロチップが必要かどうか、その情報に信憑性があるかどうかに疑問の声があがっています。
マイクロチップ義務化に反対の声も
日本人全員にマイナンバーが割り振られたのと同じように、飼い猫すべてにマイクロチップを埋め込むことを義務化しようという案もあります。
しかし、これでは野良猫や地域猫など、マイクロチップがない子を殺処分しても良い、という考えになる恐れがあり、義務化に反対する声も多いようです。
猫を守るために必要なマイクロチップですが、すべての猫に対してそうだとは言えないため、義務化をすべきかどうかは慎重に話し合うことが求められています。
愛猫を探すのはマイクロチップと首輪どちらがいい?
愛猫の識別にマイクロチップが注目されていますが、昔はそういった技術もなかったため、家族の証として首輪をつけさせていた人がほとんどでしょう。しかし、それぞれにメリットとデメリットがあるため、どちらが良いと断言するのは難しいのが現状です。
例えば、手軽さで言えば首輪の方が勝りますが、様々な情報を得るためにはマイクロチップの方が勝ります。
どちらか一方が秀でているわけではないため、飼育状況や愛猫のことを考え、どちらが良いかを飼い主が責任をもって決めてあげてください。
万が一に備えて愛猫にマイクロチップを装着させるのもひとつの手段
マイクロチップは、飼い主と愛猫を繋ぐ大切なものです。災害などで離れ離れになってしまっても、再び再会できる確率を高めてくれることに間違いありません。
しかし、マイクロチップを埋め込むことによるリスクもあるため、より安全性が高く、安心して埋め込みを任せられる動物病院を選ぶことが大切です。
補助金を出すことで、マイクロチップの推進を行なっている自治体もあるので、悩んでいる人は、前向きに考えてみてはいかがでしょうか。