ドッグフードの品質向上や医療技術の進歩などにより、犬の平均寿命はどんどん延びています。これからより飼育環境が良くなれば、もっと愛犬と長い時間を一緒に過ごすことができますよね。そのためには、まず現状と向き合うことが大切です。時代の流れとともに、犬の平均寿命はどのように推移していったのか、何が寿命を延ばす要因となっているのかなどを、詳しく解説します。
目次
寿命が長い犬はどの犬種?平均寿命ランキングTOP5
犬の寿命は、犬種によって異なります。なるべく長く一緒にいたいと願う方であれば、平均寿命の長さは犬を飼う際の選考ポイントとなるのではないでしょうか。
では、犬種によってどれだけの違いがあるのか、ペット保険会社のアニコム損害保険株式会社がデータ化したものをもとに、長寿犬種TOP5を紹介します。
参考:アニコム損害保険株式会社
1位:イタリアングレーハウンド(15.1歳)
「イタグレ」という愛称で知られるイタリアングレーハウンドは、細身なスタイルの小型犬です。短毛の毛は光沢があり、全体的に優美な印象があるため、古来より貴婦人たちに好まれていたようです。
性格は、活発で運動好きです。そのため、体は程よい筋肉で引き締まっており、まるでモデルのようなかっこいい印象を与えます。また、温厚で愛情深いため、ペット向きの犬種と言えるでしょう。
細身ゆえに骨折や脱臼に注意が必要ですが、先天的な病気がほとんどないことが長寿につながっていると考えられます。
2位:ミニチュアダックスフンド(14.7歳)
短い脚で一生懸命走る姿が可愛らしいミニチュアダックスフンドは、ペットとして常に人気が高い犬種です。まるで子どものように元気で活発な性格ですが、長い毛が優雅さも感じさせます。
遺伝的な病気は、どんな両親を持つかでかかる病気の種類・確率が変わるため、飼う前に両親についても知っておくことが大切です。
また、ミニチュアダックスフンドは椎間板ヘルニアになりやすいため、体をしっかり支えられるよう、日頃から筋肉を鍛えておく必要があります。
2位:トイプードル(14.7歳)
同率2位となったトイプードルは、プードル種のなかでも特に体が小さいのが特徴です。まるでぬいぐるみのようで可愛いと人気になり、今やペットとして人気の犬種第1位です。
プードル種は様々な交配が行なわれてきたため、遺伝的な病気を持っている可能性があります。また、室内犬として飼われることがほとんどなので、活発な子は室内で怪我をすることも多いようです。日頃のお世話をしっかり行ない、怪我に気を付ければ長生きを期待できるでしょう。
4位:柴犬(14.5歳)
古くから日本人に愛されている柴犬は、今もペットとして人気の犬種です。天然記念物に指定されており、三角に立った耳と賢い顔立ちに愛嬌があります。
比較的体が丈夫なので、病気にかかりにくいと言われています。ただ、アトピー性皮膚炎などの皮膚病にかかりやすい傾向があり、飼育環境は常に清潔にする必要があります。
柴犬自身はきれい好きのため、自分で毛づくろいをする姿も見られますが、犬小屋やベッドなどに住み着いたダニによる被害も多いため、飼い主がしっかりと衛生的な環境を整えてあげましょう。
5位:パピヨン(14.4歳)
大きな耳と整った顔立ちが印象的なパピヨンは、古くから上流階級者たちに愛されてきた犬種です。一説によれば、フランス王妃マリーアントワネットから寵愛されていたらしく、「パピヨン」という名前もマリーアントワネットが名付けたと言われています。
絹のような美しい毛並みから優雅さを感じますが、その反面活発で飼い主とのスキンシップを好む、という無邪気さもあります。パピヨンは、遺伝的な病気が比較的少ないですが、活発ゆえに骨折や脱臼のリスクが高いようです。
また、目の病気にかかりやすいとも言われているため、安全に過ごせるような飼育環境を整えてあげることが大切です。
ギネス記録より長生きした最高齢犬「マギー」とは?
長寿犬としてギネス記録に認定されている犬は、世界中にたくさんいます。もっとも長寿な犬だと公認されたのは、29歳と193日生きたイギリスのラブラドルレトリバーです。
犬の平均寿命が12~15歳なので、約2倍近くも長生きしたことになります。それだけでもすごいことなのですが、実はギネス記録を上回る記録を持つ長寿犬がいるのをご存知でしょうか。
その子は、オーストラリアに住む「マギー」という名前の子で、年齢は30歳だったと言います。間違いなく世界で一番の最高齢犬と言えるのですが、残念ながら年齢を証明する書類がなかったため、ギネス記録には認定されなかったようです。
ギネス記録に認定された日本の雑種犬「ぷースケ」とは?
画像引用:日本経済新聞
長寿犬の戦いは非常にハイレベルで、ギネス記録に認定された犬の上位10犬は、すべて26歳以上となっています。平均寿命をはるかに上回る数字に、驚きを隠せない人も多いでしょう。
様々な国の子がランクインするなか、唯一日本からランクインした子がいます。それは、雑種犬の「ぷースケ」です。日本一長生きした犬と言われるプースケの年齢は、なんと26歳と248日。
世界の長寿犬に引けを取らないほどの記録です。日本の犬が世界の長寿犬と肩を並べているのを見ると、日本人として誇らしいですよね。
参考:日本経済新聞
犬の平均寿命の推移
犬の平均寿命の変化について、須田動物病院の須田院長が解説を行っています。具体的なデータも掲載されているため、その報告書をもとに推移を見ていきましょう。
参考:家庭動物の高齢化対策
現在は1980年代の約2倍
1980年に入った頃の犬の平均寿命は、大体3~5歳くらいでした。これほどまでに寿命が短かったのは、感染症の流行や交通事故の多発、幼獣の栄養失調などが考えられます。
その後、ワクチンの普及や飼育環境の改善が行なわれたことで、平均寿命は徐々に延びていき、1980年中頃は7歳前後、後半には10歳近くになっています。
いかに飼育環境が大切か、というのがこのデータから分かりますね。犬の平均寿命は順調に延びていき、2000年に入ってからは13~14歳くらいになりました。1980年中頃に比べると、2倍近く寿命が延びていると言えます。
犬も高齢化の時代へ
最近では、犬を「ペット」ではなく「家族」と考え、大切に育てようと尽力する人が増えてきました。おかげで、犬はどんどん長生きをするようになり、現代では犬の高齢化が進んでいます。
そのため、シニア用のドッグフードやシニア用のおむつなど、様々なシニア用グッズが販売され、最期まで快適に過ごせるような環境が整っていると言えます。
犬の寿命が延びた理由とは?
平均寿命というのは、そう簡単に延びるわけではありません。老化は誰にも止められないので、大切に育ててきたつもりでも、長生きができなかったという子もいるでしょう。
しかし、犬の平均寿命の推移を見ても分かるとおり、数値は右肩上がりを維持しています。なぜ、ここまで平均寿命を延ばすことができたのでしょうか。そのポイントを4つ紹介します。
ワクチンの普及
現代では当たり前となっているワクチン接種ですが、1980年頃はまだ普及しておらず、感染症にかかる子が多かったようです。そのため、寿命が約3歳と非常に短く、現代の1/5程度しかありませんでした。
しかし、混合ワクチンが普及したことで、様々な感染症を予防することが可能となり、犬の健康に大きく貢献したと言えます。
ドッグフードの品質向上
昔のドッグフードは、とにかく販売側の儲けを第一に考えて作られていました。原価が安い穀類や炭水化物を多く含み、美味しく感じられるよう添加物をたっぷり含んでいたのです。
そのため、現代のようにドッグフードから肉のニオイは感じられず、コンソメなどの調味料系のニオイが強かったようです。また、肉食動物の犬に対して穀類や炭水化物を多く与えていたことから、消化不良やアレルギーを起こす子も多く見られました。
これらが原因で「ドッグフード=不健康」というイメージが強くなり、愛犬に与えようとしない人が次第に増えたのでしょう。しかし、現代のドッグフードは栄養バランスや原料にこだわるとともに、犬が少しでも美味しく食べられるような工夫がされています。
そのため、心も体も満たされる上質なドッグフードとなり、毎日の健康をサポートしてくれます。食が体を作る、とも言われるので、ドッグフードの品質向上がなければ、平均寿命を延ばすことも難しかったでしょう。
犬の精神的安定
昔は、犬を番犬として飼う人も多かったため、現代のように飼い主とのコミュニケーションが濃厚ではありませんでした。あくまでも番犬としての扱いであったため、どこかお互いの間に溝があり、飼い主に遊んでもらえない寂しさを感じていた子も多かったことでしょう。
しかし、現代は犬を家族同然に考える「コンパニオンドッグ」が一般的で、飼い主とのスキンシップも多くなりました。その結果、犬のストレスは軽減され、穏やかに過ごせるようになったのです。心を健康に保てるようになったことが、犬を長生きさせるのに大きく影響したと考えられます。
飼い主が犬をしっかり管理するようになった
昔は、愛犬が亡くなれば、またすぐにどこかで拾ってきたり、近所から子犬をもらってくれば良いという物に近い考えが一般的でした。そのため、一つひとつの命の重さを理解しておらず、愛犬の健康管理もままならなかったのです。
しかし、現代では毎日の食事や運動、健康診断など、愛犬の体調管理をしっかり行なおうとする飼い主が多くなりました。そのため、犬は健康的な毎日を送ることができるようになり、病気を早期発見・早期治療することも可能となったのです。
飼い主となる人間の意識改革が、犬の平均寿命を延ばす大きな要因となったと言えるでしょう。
小型犬より大型犬の方が寿命が短いのはなぜ?
犬種別の平均寿命を見ても分かるように、大型犬より小型犬の方が寿命が長い傾向にあります。これには、以下の理由が考えられます。
生命活動における心臓への負担が大きい
大型犬は、大きな体に対して心臓が小さいため、体の隅々まで栄養や酸素を行きわたらせるのがとても大変です。その分心臓に大きな負担がかかり、心臓の疾患を患いやすいと言われています。
肥大型心筋症のように、発見が難しい病気もあり、今まで元気だった子が突然死する、という事態も珍しくはありません。
胃捻転の発症率が高い
胃捻転とは、その名の通り胃が捻じれてしまう病気です。胃が捻転することで周りの臓器を圧迫し、血液循環が滞って死に至る、というケースもあります。小型犬も発症しますが、大型犬の方が発症率が高いようです。
骨の異常による体力減退
先天性の骨異常もありますが、大きな体を支えるために関節や骨に負担がかかり、脱臼や骨折を招くケースが多々あります。体の節々が痛むことで動くのが億劫になり、次第に筋肉も衰えていくでしょう。
そして老化が進み、さらに体が衰えて動けなくなる・・・この悪循環に陥ってしまうと、寿命はどんどん短くなってしまいます。
肝細胞がんの発症率が高い
肝細胞がんの発症率は、小型犬より大型犬が圧倒的に高く、大型犬の死因でもっとも多いと言われてます。なぜ大型犬に多いのか、それはドッグフードが大きく影響しているようです。
小型犬は、一度にたくさんの量を食べられないため、ドッグフードの消費が少ないですよね。そのため、多少高くても上質なドッグフードを与えよう、という人が多いようです。
しかし、大型犬は1回の食事量が多いので、ドッグフードの消費が早く、その分飼い主には餌代がかかります。餌の消費が早いのに、毎回上質なドッグフードを購入していては、家計へのダメージが大きいですよね。
そのため、質より安さを重視せざるを得ない飼い主が多く、結果的に、がんに侵されやすい体となってしまうと考えらえます。
愛犬の長寿を願って日々のお世話と向き合おう
犬の平均寿命は、確実に昔より長くなっています。いつまでも愛犬と一緒にいたい、と願う人にとっては、嬉しい事実ですよね。そこには、ワクチンの普及や医療技術の進歩、ドッグフードの品質向上などの要因があり、様々な人の努力があってこそ実現したことだと分かります。
しかし、一番大きく影響するのは、飼い主との接し方や毎日の飼育環境です。心も体も健やかに育つよう、日々のお世話を真剣に行なえば、その思いに応えるように愛犬も長生きをしてくれるはずです。
大切な家族の一員として、愛犬としっかり向き合い、元気で楽しい毎日を送れるよう尽力することが、飼い主の務めと言えるでしょう。