猫にイカを食べさせてはいけないのは知っていても、その詳しい理由について知らない人も多いのではないでしょうか。「猫がイカを食べると腰を抜かす」のはなぜなのでしょうか?キャットフードの原料にイカが入っているから、あげても大丈夫なのではないか?と思っている人も少なくないと思います。今回は、猫にとってイカを食べることのメリットやデメリットについて解説します。
目次
猫がイカを食べてはいけない?
猫にイカは与える際は、さまざまな注意が必要です。そのため、イカは与えないほうがいいとされています。しかし、イカの状態や調理法などを守ることで食べても問題のない食材に変えることができるのです。
イカには猫が必要とする栄養が含まれていた
イカには下記のような猫にとって必要な栄養が豊富に含まれています。
タンパク質
タンパク質とはアミノ酸が繋がって構成されています。肉や魚介類、乳製品(卵・牛乳など)に含まれている栄養素です。猫は肉食のため、たんぱく質は欠かせません。猫の筋肉や被毛、臓器、皮膚、ホルモン、抗体、酵素を作るために必要な栄養素になります。また、猫にとって必要なたんぱく質の摂取量は下記の通りです。
【1kgの体重あたり1日に与えてもいい分量】
- 猫5.0g
- 犬4.8g
- 人間1.2g
しかし、高齢であったり腎臓病にかかっている猫は、体内でたんぱく質を分解吸収する際に尿素を体外に排出しきれなくなってしまいます。そのため、たんぱく質の摂取量に注意しましょう。
カルシウム
カルシウムは筋肉を動かすために必要な栄養素です。神経の伝達や心臓の筋肉収縮にも関係しています。カルシウムが低下すると心臓の筋肉の動きも低下しますので、猫が生きていくためにカルシウムはなくてはなりません。
そのため、骨に貯蔵しているのです。カルシウムが不足すると骨のカルシウムが血中に放出されます。カルシウム不足が続いてしまうと、骨が脆く骨折をしやすくなってしまうのです。ただし、猫はカルシウムを過剰摂取すると膀胱結石を引き起こしてしまいますので注意しましょう。
タウリン
タウリンは身体の働きの中でも、目や心臓、肝臓、生殖機能の働きに必要な栄養素です。猫の成長を手助けするタウリンですが、人や犬が体内で合成することができるように、猫はうまくできません。そのため、食事などで摂取するしかないのです。タウリンが不足するとタウリン欠乏症になってしまいます。
タウリン欠乏症の代表的な症状は、網膜萎縮や拡張型心筋炎です。キャットフードには必要量が入っていますが、手作りでご飯を与えている場合はタウリンが不足してしまわないように、サプリメントなどで補うことをおすすめします。
また、猫の中でもドッグフードを好んで食べる猫がいますが、この場合も犬とは栄養素が違うためタウリンや他の栄養素が不足してしまいます。そのため、タウリン欠乏症の原因になってしまいますので、ドッグフードは与えないようにしましょう。
DHA
DHAの正式名称はドコサヘキサエン酸と言い、高度不飽和脂肪酸のことを指します。全身の細胞に取り入れられ、血中のコレステロールや中性脂肪を減少させる作用があります。退治や成長期の身体が発達していく時期に最も大切な栄養素の一つであり主に猫の皮膚トラブルを予防してくれ、毛並みをきれい保つ効果が期待できます。
また、DHAには脳の記憶力を高める力があると言われています。しかし、DHAは酸化しやすいためビタミンC・E、βカロチンと一緒に摂取するといいでしょう。
キャットフードにイカが入っていることも
上記のようにイカには猫にとって必要な栄養素がたくさん含まれています。そのため、キャットフードにもイカを原料としたものが販売されているのです。キャットフードに入っているイカの成分はしっかり処理をされているため、中毒症状は出ません。
しかし、イカそのものを与える場合は注意が必要ですので、しっかりとした知識を得ずに与えるのは控えてください。
猫がイカを食べると腰を抜かすと言われている理由
猫はイカを食べると腰を抜かすと言われていますのが、その理由は生のイカにあります。
猫が最も必要とするビタミンB1(チアミン)の働きを壊すチアミナーゼ酵素が原因
生のイカにはチアミナーゼ酵素が含まれているため、体内にあるビタミンB1(チアミン)を壊してしまうのです。チアミンは細胞にエネルギーを運ぶ役割をしているため、チアミナーゼ酵素に壊されてしまうと全身に力が入らない状態になってしまいます。猫は人間よりもチアミンを必要とし、その量は人間の7倍にも及ぶのです。
チアミナーゼ酵素によってチアミンが分解されてしまうと、猫は全身に力が入らなくなり、足を立てられない状態になる恐れがあります。この現象を見て「腰を抜かす」と言われ始めたのです。チアミンは猫にとって生きていくために欠かせない栄養素です。そのため、むやみに与えるのはやめましょう。
チアミナーゼ酵素は、筋肉部分にはあまり含まれていませんが、内臓には多く含まれています。人間の体内でも同じ働きをするので、食べ過ぎには注意しましょう。
チアミン欠乏症とは
チアミン欠乏症とは食事(生の魚介類)が原因で発症することが多い症状です。イカを食べてから数時間で発症することが多く、初期症状として食欲低下や嘔吐、脱水症状などさまざまな症状が現れます。
進行すると瞳孔が開いたり歩行が不自然になったり痲痺が起きることもあります。命に関わってしまうこともありますので、症状が見られた場合は、すぐに動物病院に行きましょう。治療法は、ビタミンB1の注射や吐き気止め、炎症止めなどです。
<チアミン欠乏症の症状>
- 体重減少
- 食欲不振
- 元気がなくなる
- 口内炎
- 目が虚ろになる
- 足腰が立たなくなる
- うなだれる
- よだれが垂れる
- 脱毛
<症状が悪化した場合>
- 鳴き声が異様
- 動かなくなる
チアミン欠乏症になってしまう原因はイカに限りません。かつお節を毎食与えていたり、マグロの刺身を与えている場合は注意が必要です。チアミナーゼ酵素を含まない食生活に開戦する必要があります。魚介類だけではなく、ゼンマイやワラビにも含まれていますので気をつけましょう。
猫にイカを食べさせる時の注意点
上記で話した通りイカには栄養が豊富に含まれています。しかし、チアミン欠乏症の恐れがあるため、猫にとって安全な食材とは言えません。キャットフードにはイカの持っている栄養素をバランスよく含んでいるので、はるかに安全と言えます。その点を踏まえて、手作りごはんでイカを使用するときや、イカを欲しがったときなどは食べさせ方に十分注意が必要です。下記のことを必ず守りましょう。
生のイカは食べさせないこと
チアミナーゼ酵素は加熱すると失活します。チアミナーゼ酵素を含む魚介類(イカ・まぐろ・カツオ・ハマグリなどの二枚貝)を与える際は、しっかり加熱してから与えましょう。くれぐれも生の部分がないように気をつけてください。
調理してから与える際は、焼く・茹でる・炒めるなど小さくしてから少量にしましょう。塩や醤油などは塩分が高いため使用してはいけません。
間違って生のイカを食べてしまった場合は、動物病院に電話をしましょう。その際は「いつ・どのくらいの量を食べてしまったのか」を獣医師に伝え指示をあおぎます。食べてしまってから、1〜2時間程度であれば、動物病院では嘔吐を誘発させたり、胃洗浄などの処置が施されるでしょう。
スルメは避けた方がいいこと
スルメは加熱処理をされているため、チアミナーゼ酵素の問題はありません。しかし、塩分が高く胃の中の水分を吸収し膨張するので胃に良くありません。腸をふさいでしまう可能性もあります。胃腸に負担がかかることで、消化不良を起こしてしまいます。嘔吐や下痢の原因にもなりますので注意が必要です。また、人間のように汗で排出することができませんので、塩分の摂りすぎは腎臓に負担がかかってしまいます。
スルメを食べてしまった場合は、食べてしまった量を把握しましょう。少量であれば様子を見て嘔吐や食欲の低下がないか確認します。食べた量が把握できないときや、大量に食べてしまったときは、動物病院に行きましょう。自己判断で吐かせたりしてはいけません。
少量を心がけ毎日上げないこと
イカは消化にもよくなく、主食に適している食材ではありません。そのため、消化不良を起こしてしまうことや継続的に与えることは猫にとっていいことではないと考えられます。長期的に与えるのは控えましょう。
アレルギー反応を起こすこともあるので要注意
猫にも食物アレルギーはあります。イカにも可能性はありますので、食べてから嘔吐や下痢、発熱などの症状が見られた場合は注意しましょう。アレルギー症状は比較的治りも早いですが、猫によっては症状が重く命に関わってしまうこともあります。そのため、症状が見られたら獣医師に相談しましょう。
嘔吐したときに気をつけること
猫は毛玉などを吐き出すために、生理的に吐くことがあります。そのため、よく吐く生き物と考えられています。しかし、イカを食べた後に何度も吐いたり、吐物に血や異物が見られた場合は危険です。よく吐く生き物と思い込んではいけません。危険性もありますので吐物を注意深く確認しましょう。
猫にイカを食べさせる時はしっかり加熱することが大切
猫にとってイカは豊富な栄養が揃っていますが、注意しなければいけない危険な食べ物だということがわかりました。「猫にイカを与えてはいけない」とは、このようなことが原因で言われていると考えられます。
イカは調理法次第で与えることも可能ですが、継続して長期的に与えてはいけない点や主食ではない点、キャットフードに含まれている点から考えると、危険性の高いイカを無理に与える必要はないと考えられます。間違って食べてしまったときは、すぐに獣医師に相談し適切な処置を施してもらいましょう。
手作りの食事を与えている場合は、調理法などに注意しバランスよく与えましょう。必要なときはサプリメントなども併用し健康な身体作りをしてあげるよう心がけることが大切です。