「ブリーダーから直接譲り受ける」という子犬の販売方法が徐々に増えつつあるのをご存知でしょうか。ブリーダーから子犬を購入する際に便利なのが、子犬販売サイト・掲示板です。しかし、ブリーダーと気軽に繋がることができる反面、注意点を押さえておかないとトラブルに巻き込まれる恐れがあります。販売サイト・掲示板を利用する前に、そのメリットとデメリットを理解しておきましょう。
目次
ペットショップだけじゃない!多様化する子犬の販売形態
ペット先進国のヨーロッパでは「ブリーダー直販」が一般的
現在の日本では、「子犬を新しい家族として迎え入れたい」と思った場合、まず最初にペットショップに足を運ぶという人が多いのではないでしょうか。しかしながら、この「ペットショップにおける子犬の購入」は、実は子犬に大きな負担がかかる方法なのです。
日本のペットショップで販売されている子犬の多くは、ブリーダーの元からペットオークションを経てショップに展示販売され、飼い主の元に引き取られるという流通経路を辿っていますが、こうした流通の過程で命を落としてしまう子犬も少なくないという現状があります。
一方で、海外では日本のようにペットショップで子犬が販売されているケースは珍しいとされています。とくに動物愛護の先進国と言われているヨーロッパでは、ペットショップでの子犬の販売が禁止あるいは制限されていることが多く、子犬を迎え入れる場合はブリーダーから直接購入するか、保護施設から引き取るのが一般的なようです。
日本でも、近年徐々に子犬にとって負担の少ない、「ブリーダー直販」の販売形態へと流通改革が進んできており、子犬販売サイト・掲示板を介して手軽にブリーダーと繋がることができるようになりました。
しかし、このような販売サイト・掲示板を利用して子犬を購入するには、まだまだ問題点が多いのも事実です。販売サイトや掲示板を賢く利用するためにも、次に説明するメリット・デメリットをしっかりと押さえておきましょう。
子犬販売サイト・掲示板を利用するメリット4つ
子犬の販売情報を手軽に入手できる
以前はペットショップに行かないと手に入らなかった子犬の販売情報が、販売サイトや掲示板を利用することで簡単に入手できるようになったのは、大きなメリットであると言えるでしょう。
販売サイト・掲示板では、犬種・性別・サイズ・毛色などで子犬を検索できるほか、写真や動画も掲載されているため、わざわざお店に出向かなくてもお気に入りの子犬を比較検討することができます。
健康上のリスクが比較的少ない
子犬が購入者の元に届くまでにペットオークションやペットショップを経由する場合、流通の段階で感染症にかかってしまったり、ストレスから免疫力低下を引き起こす恐れがあります。
子犬販売サイト・掲示板では、ブリーダーから購入者へ直接子犬が引き渡されるため、迎え入れる子犬が健康上のリスクを抱えている可能性は比較的少ないと考えられます。
社会性が身に付いた子犬を購入できる
ブリーダーの元では、親犬はもちろん兄弟犬も一緒に飼育されています。社会性が育まれる大事な時期を、親犬や兄弟犬たちに囲まれて過ごすことで、他者との関係性を学ぶことができると言われているからです。
そのため、ブリーダーから譲り受ける子犬は社会性が身に付いていることが多いのですね。
ペットショップよりも安く購入できる
ブリーダー直販の場合、ペットショップなどの中間業者を挟まないため、中間マージンや人件費がかかりません。そのため、ペットショップで購入する場合よりも、低価格で購入できる場合が多いでしょう。
子犬販売サイト・掲示板を利用するデメリット4つ
子犬販売サイト・掲示板は手軽に利用できるなどのメリットがある反面、慎重に利用しないと思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。以下に、最低限押さえておきたい4つのデメリットについて説明していきます。
悪徳ブリーダーを見分けるのが難しい
販売サイト・掲示板に登録しているブリーダーが、全て優良ブリーダーとは限りません。残念ながら、中には「パピーミル」と呼ばれる悪徳ブリーダーがいるのも事実です。パピーミルとは「子犬工場」を意味し、利益追求のためだけに子犬の乱繁殖を行なう悪質なブリーダーのことを指します。
母犬の健康状態や体への負担を考慮しない無理な繁殖で生まれた子犬は、病気にかかりやすい傾向がある他、親犬が遺伝性疾患を持っている場合、当然ながら生まれてくる子犬も遺伝性疾患を発現する可能性が高くなります。
子犬販売サイト・掲示板に掲載されている情報だけでは、このような悪徳ブリーダーと優良ブリーダーを見分けるのは難しいでしょう。後述する、「優良ブリーダーの見極めポイント」を押さえたうえで、購入者側が悪徳ブリーダーを見抜く眼を養う必要があると言えます。
詐欺被害に遭う可能性がある
2013年に改正された動物愛護管理法により、ペット販売時の現物確認(販売前に動物の状況を直接見せること)および対面説明(飼育方法や動物の性格など、飼育するにあたって必要となる知識を対面により説明すること)が義務化されているため、以前に比べると安心して取引できるようになりました。
しかし、それでも詐欺トラブルは発生しています。過去にあった被害として、実際に送られてきた子犬がサイトに掲載されていた子犬とは似ても似つかなかったり、購入代金を振り込んだのに子犬が送られずブリーダーとも音信不通になってしまったケースなどが挙げられます。
被害を未然に防ぐためにも、信頼のおけるブリーダーかどうかを購入者側がしっかりと判断する必要があるのです。
子犬の健康状態に関するトラブルが起こることも
子犬を購入したものの、引き渡し後に病気が発覚するなど、健康状態に関するトラブルが起こる場合もあります。
また、ブリーダーと購入者の居住地が遠く離れている場合、子犬の引き渡し方法に宅配便や空輸が用いられることがありますが、こうした輸送方法は子犬にとっての負担が大きく、長時間の輸送中に衰弱して最悪の場合、命を落としてしまう恐れがあります。
見学後に購入を断りづらい
動物愛護管理法の改正により、子犬を購入する前には一度ブリーダーと連絡を取り、購入を検討している子犬を実際に見せてもらい、飼育方法などについての説明を受けなければなりません。
ブリーダーが遠方にいる場合などは見学に行くのにも時間とお金がかかるため、実際の子犬を見て譲り受けることに迷いが生じたとしても、別の子犬を探し直す労力を懸念して購入に踏み切ってしまうケースも多々あるようです。
子犬販売サイト・掲示板を利用する際の注意点とは
子犬販売サイト・掲示板のメリットとデメリットをしっかりと理解したうえで、利用する際の注意点を説明していきます。
優良ブリーダーかどうかの見極めが重要ポイント
子犬販売サイト・掲示板でのトラブルを回避するためにも、まずは登録されているブリーダーが優良ブリーダーかどうかをしっかりと見極めることが重要になります。優良ブリーダーを見分けるためのポイントは以下の通りです。
積極的に質問を受け付けてくれるか
優良ブリーダーかどうかを見極めるために、ブリーダーと積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。優良ブリーダーであれば、専門とする犬種について豊富な知識を持ち合わせているものです。
専門犬種の性格や飼育方法、他の犬との相性などを質問してみて、詳細で丁寧な回答を返してくれるブリーダーであれば、信頼できる可能性が高いと言えるでしょう。
また、購入者に子犬の飼育環境について確認してくるかどうかも、優良ブリーダーかどうかの判断材料になります。優良ブリーダーは専門犬種に誇りを持ち、愛情をかけてブリーディングを行なっています。
当然、子犬を譲り渡した後も愛情を持って育ててほしいと願っているため、購入者にも子犬の受け入れに際してしっかりとした準備を求めます。このようなブリーダーは、まず優良ブリーダーと判断してよいでしょう。
計画的に繁殖を行なっているか
きちんとした繁殖計画に基づいてブリーディングを行なっているかという点も、非常に重要なポイントになります。ブリーダーに繁殖計画について説明してもらい、購入を検討している子犬が、どの繁殖計画で出生したのかを確認するようにしてください。
母犬の負担を十分に考慮した、無理のない繁殖を行なっているブリーダーであれば、安心して子犬を譲り受けることができるでしょう。
犬舎や親犬を見学させてもらえるか
ブリーダーの元に見学に訪れた際には、犬舎や親犬の見学もお願いしてみましょう。劣悪な環境で繁殖・飼育している悪徳ブリーダーの場合、犬舎や親犬の見学には応じない可能性が高いです。
そのため、見学させてもらえるかどうかという点がひとつの判断材料になります。見学が可能な場合には、犬舎が清潔に保たれているかどうか、親犬の健康・衛生状態は良好かなどを確認するようにしましょう。
健康管理をしっかり行なっているか
当然ながら、優良ブリーダーは親犬・子犬の健康管理をきちんと行なっています。生まれた子犬のワクチン接種や駆虫を実施しているかどうかを確認するようにしましょう。
引退した親犬を大切に飼育しているか
繁殖犬としての役目を終えた親犬の飼育方法も、大事なチェックポイントになります。引退した後もブリーダーの元で他の犬たちと同様に大切に飼育されているのであれば、優良ブリーダーであると判断できるでしょう。
動物取扱業者の標識を掲示しているか
動物愛護管理法により、ブリーダーは動物取扱業者の標識を掲示することが義務となっています。標識を掲げていないブリーダーは法律違反となりますので、子犬を購入する前に必ずチェックしてください。
十分な人手が確保できているか
全ての犬を管理できるだけの人手が足りているかどうかを確認しましょう。人手不足の状態で飼育されている場合、衛生管理が疎かになり感染症などのリスクも高まります。
ブリーダー登録基準をよく確認すること
子犬販売サイト・掲示板によって、ブリーダーの登録基準はさまざまです。
登録基準が厳しいサイト・掲示板のほとんどは、ブリーダーに動物取扱業登録証のコピーの提出を求めることはもちろん、販売に際して生体保証を付けること条件としています。
また、ブリーディングに関して豊富な知識があることや、計画的に繁殖している(乱繁殖を行なっていない)こと、購入者に対して誠意のある対応をすることなどを、登録条件として明記している場合が多いです。
悪徳ブリーダーが登録されることを防ぐために、サイト・掲示板の運営者がブリーダーの元に直接出向き、飼育環境や繁殖方法のチェックを行なっている場合もあります。
一方で、登録基準が非常に甘いサイト・掲示板も存在しています。このようなサイト・掲示板では、運営者によるブリーダーの審査が行われないため、悪徳ブリーダーであっても簡単に登録し子犬を販売することができてしまいます。
ブリーダー自身の情報も、ブリーダーが各自登録した内容がそのまま掲載されているため、利用する場合は細心の注意を払い、契約前に悪徳ブリーダーでないかどうかを慎重に判断する必要があると言えるでしょう。
悪徳ブリーダーから子犬を購入することを避けるために、ブリーダーの登録基準が厳しいサイト・掲示板のみを利用するのもひとつの方法です。
ブリーダー自身のホームページもチェックしてみよう
子犬販売サイト・掲示板で気になるブリーダーがいたら、ブリーダー自身のホームページもチェックしてみましょう。サイトや掲示板からでも最低限の情報は得られますが、ブリーダーがどのような想いでブリーディングを行なっているか、また犬舎や飼育環境についての詳細を記載されていることが多いです。
どのようなブリーダーかをよく知っておくためにも、子犬を購入する前に一度ホームページを確認してみることをおすすめします。
販売サイト・掲示板での子犬購入は慎重に!
日本の子犬販売事情はまだまだペットショップが主流ですが、徐々に販売サイト・掲示板を介したブリーダー直販の購入形態も増えてきています。たしかに、子犬の幸せを考えれば、ペットショップよりもブリーダーから直接譲り受ける方が良いのかもしれません。
しかし、気を付けなければならないのは、販売サイト・掲示板に登録されている全てのブリーダーが優良ブリーダーとは限らないということです。可愛いからという理由だけで衝動買いしてしまうと、後々トラブルに巻き込まれる事態にもなりかねません。
購入前に少しでも気になることがあれば質問し、納得がいくまでしっかりと説明を受けるなどして、本当に信頼できるブリーダーかどうかを慎重に判断するようにしてください。
販売サイト・掲示板を利用した子犬の販売方法が普及し始めている今、購入者自身もブリーダーを見極める目を養う必要があります。