アロマは私たちにとって、日々の疲れを癒し心身ともにリフレッシュさせてくれます。ところが、猫にとっては非常に危険な存在となります。そのため、猫を飼っている人は、アロマの使用に注意が必要です。なぜ猫にアロマは危険なのか、その理由を知って安全なアロマオイルを使用するようにしましょう。
目次
猫にアロマが危険な理由とは?
猫にアロマが危険とされている理由は、主に以下の4点があげられます。
猫は肉食動物
猫は、古来魚や肉を好む肉食動物です。生きていくうえで、実質植物は必要としません。このことから、猫の体には植物を消化・分解する力が備わっていません。
そのため、アロマオイルに使用される精油が植物由来である場合に、中毒症状を引き起こしてしまう可能性がるのです。植物をうまく分解することができないため、体内に成分が留まり続け中毒を招きます。
アロマオイルによって中毒症状を引き起こすのは、猫だけではありません。猫以外の肉食動物も植物を分解することができないため、危険となるのです。
猫は人よりも皮膚が薄い
全身を毛で覆っている猫ですが、皮膚は人よりも薄くなっています。人間と猫で、皮膚の構造は同じです。表皮と真皮、皮下組織の3つから成り立っています。このなかの表皮の部分が、猫はとても薄いのです。
表皮には異物の侵入を防ぐ働きがあります。しかし、猫の表皮は私たち人間の半分以下ほどの薄さのため、アロマオイルに含まれる植物由来の成分による影響を受けやすくなっています。皮膚が、より敏感に反応してしまうのです。
そのため、ほんの少しのアロマオイルであっても、猫の体にはどんどん吸収されてしまい影響を及ぼします。
モノテルペン炭化水素類を敏感に察知する
哺乳類にとっては無害となる芳香分子「モノテルペン炭化水素類」も、猫にとっては有害となります。このモノテルペン炭化水素類というのは柑橘類に多く含まれており、アロマオイルでもレモンやオレンジ、ベルガモットといえば知っている人も多いでしょう。この柑橘類の香りが、猫には毒となり、過剰に反応してしまいます。
人気のある香りの種類と言える柑橘類ですが、猫のいる空間では使用しないようにしましょう。
肝臓に解毒作用がない
アロマオイルが猫にとって危険とされているのは、猫の肝臓の作りとも関係しています。猫の肝臓は、私たち人間のものとは違い、解毒する際に必要となるグルクロン酸抱合が存在しません。
肝臓における最も大きな解毒機構ともされているグルクロン酸抱合ですが、猫の肝臓には存在しないため、アロマオイルを解毒・分解することができません。
猫の肝臓にグルクロン酸抱合が存在しないのは、肉食動物であるという点と関係しています。肉食に合った体の作りになっているのでグルクロン酸抱合が必要なくなり、機能が退化していったと考えられています。
猫がアロマを感じることで起きる症状とは
猫にとって危険なアロマ、その理由には体の特徴が大きく関係していました。それでは、万が一、猫がアロマを嗅いでしまったときにはどのような症状が現れるのかということについても知っておきましょう。
筋肉の震えや運動に障害が生じる
猫がアロマを嗅いだり、皮膚に精油が付着することで、筋肉の震えや運動に障害が起きることがあります。
痙攣し始めたり、歩きにくそうにしている、いつもと動きが違うといった変化を感じた場合、そばにアロマオイルがあるなど心当たりがあれば、中毒症状が起きていると考えてよいでしょう。
人間にとっては何でもないアロマですが、猫にとっては体に大きな影響を与えるのです。
嘔吐やめまい、異常行動を起こすことも
筋肉の震えや運動障害以外に、嘔吐やめまい、異常行動を起こすこともあります。ふらついたように歩いたり、いつもとは違う行動に出る場合があります。
うっかりアロマを嗅いでしまったときなどでも、しばらくは異常が起きないかを、飼い主がしっかりと見守りましょう。
そして、明らかにいつもとは様子が違うと感じたら、早めに動物病院で診察を受けるようにしましょう。
失禁や食欲の減退
アロマを嗅いだり触れたりすることで、猫が失禁してしまったり食欲の減退といった症状が見られることもあります。いつもはそんなことがないのに失禁をしてしまった、明らかに食欲がないといったときに、アロマが近くにないかを確認してみましょう。
特に、飼い主がアロマ好きである場合は、猫にとってもアロマと接する機会が増える環境にあります。飼い主の知らない間にアロマを触れてしまう恐れもあるため、いつもと違う様子が見られた注意が必要です。
猫とアロマオイル、安全または危険なものは?
一般的に、猫にとって危険となるアロマですが、危険なものと安全なものとがあります。では、それぞれの種類を把握して正しく利用するようにしましょう。
猫にとって安全なアロマオイル
まずは、猫にとって安全と言えるアロマオイルを紹介します。
芳香蒸留水
ハイドロゾールと呼ばれる芳香蒸留水なら、猫の体にも害はないだろうとされています。それでも不安だという人は使用を控えると安心ですが、成分のほとんどが水なので、よほど敏感な猫出ない限り安心と考えられています。エッセンシャルオイルを作る段階でできる副産物となっているのが、芳香蒸留水です。
水以外にごくわずかな水溶性の芳香成分が含まれているという特徴があります。まれに製造の段階で、少量の精油が含まれることがあるので、その点だけ注意が必要です。芳香蒸留水はほとんど水に近いものなので、香りを感じることはありません。
猫にとって危険なアロマオイル
猫にとって危険なアロマオイルは、こんなにもたくさんあります。猫を飼っている人は、アロマに関する知識を深めておくと安心でしょう。
リモネン類
リモネン類は、猫にはとても危険な成分のため、アロマにおいても使用しないようにしましょう。リモネンとは、柑橘類の皮に含まれる成分です。
オレンジやグレープフルーツ、レモン、ユズやベルガモット、フェンネル、ネロリなど、多くの柑橘類があげられます。アロマオイルに使用される柑橘類も多いので、リモネンが含まれている種類について理解しておく必要があります。
リモネン類は、すっきりとした爽やかな香りでリフレッシュできるという点から、アロマオイルのなかでも人気があります。しかし、繰り返しになりますが猫には非常に危険な成分となるため、注意が必要です。
ヒノキなどのピネン類
アロマオイルのなかにピネン類という種類がありますが、これも猫にとっては危険です。まるで森林浴をしているかのような気分にさせてくれるため、室内でアロマを焚くとストレス解消にもなるとされています。
そんなピネン類ですが、猫には危険なので使用しないように気をつけましょう。ヒノキやパイン、サイプレス、ジュニパーベリーなど、ピネン類には様々な種類があります。そのなかでもヒノキには多くピネンが含まれているので、アロマオイルを選ぶときには避けるようにしましょう。
フェノール類
フェノール類は、私たち人間にとっても多く使用しすぎると肝臓に影響を与えるとされている成分になります。皮膚への刺激も強いため、猫にとってはもちろん危険なアロマの種類となります。
フェノール類の割合が多いアロマオイルとしては、オレガノやクローブ、シナモン、タイムなどが挙げられます。どれも私たちにとって身近なものと言えるので、猫を飼っている人は注意しましょう。アロマオイルとしてだけでなく、食材としても出回っているので、猫が接することのないように配慮する必要があります。
ケトン類
ケトン類と呼ばれる種類についても、猫が触れることないように気をつけたいです。授乳中や幼児においても使用は控えるようにとされているケトン類は、強力な成分を持っています。
ケトン類を含むアロマオイルには、スペアミントやセージ、ターメリック、カンファーといったものがあります。身近な植物とも言えるスペアミントやセージも含まれるので、日頃から猫が触れないように注意しましょう。
ラベンダーやイランイランにも要注意
ラベンダーといえばアロマオイルの定番とも言え、部屋の芳香剤としても人気があります。花壇や鉢植えで育てているという人もいるでしょう。そんな身近なラベンダーですが、猫にとっては非常に危険です。
ラベンダーなど観賞用の植物にも注意
ラベンダーは、アロマオイルだけでなく観賞用の植物としても人気が高く、いくつかの品種があります。庭先などに植えて楽しむ家庭も増えていますが、以下の6種類については猫にとって特に注意が必要です。
アングスティフォリア系
小さな粒がたくさんついている定番とも言えるラベンダーです。香りが強いという特徴があるので、猫のいる空間では危険といえるでしょう。
ラバンディン系
大きな花穂と太めの茎が特徴的で、ラベンダーのなかでも大型品種になります。ミント系が混ざったような香りになっており、猫が嗅ぐと中毒症状を招く恐れがあり注意が必要です。
ストエカス系
花穂がうさぎのようになっているラベンダーです。紫以外にピンクや白など、カラーバリエーションも豊富で香りはやや薄いですが、やはり敏感な猫は感じ取ってしまいます。
デンタータ系
葉に切れ込みがあり、花穂はフリンジのようになっているのが特徴です。香りは強めのため、注意しましょう。
プテロストエカス系
ラベンダーのなかでも特徴的な香りを持っており、やはり猫にとっては有害です。
種間交配種系
交配されて生まれたラベンダーに関しても、猫にとっては危険です。ラベンダー同士が合わさっているので、その分成分が強力になることも感がられるでしょう。
こうしてみると、ほとんどのラベンダーの種類が猫に悪影響と言えます。猫はラベンダーの香りを嗅ぐだけで、皮膚から成分が体内に吸収されていき、1週間ほどで肝臓や腎臓の組織を破壊してしまいます。ラベンダーの影響を受けると中毒症状が現れるので、特に、室内にはラベンダー関係のものを置かないようにするなどの対策が必要となります。
飼い主が気をつけたい猫との生活
部屋で焚くアロマオイルは人気とですが、前述したように猫を飼っている場合には細心の注意を払いながら生活する必要があります。そこで、どのような点に注意しながら過ごせばよいのか、ポイントを押さえておきましょう。
猫へのアロマテラピーは禁忌
極論から述べると、猫へのアロマオイルの使用は禁忌です。そのため、猫へアロマテラピーを行なったり、飼い主自身がアロマを利用するのを避けることがリスク回避をするうえで最も大切です。
猫がリラックスできるようにという思いから、リビングや寝室などでアロマを焚こうと考えてしまいがちかもしれません。
しかし、猫にとってはリラックスできるどころか命に関わる危険が迫っていることになるので、使用しないようにしましょう。
アロマキャンドルやアロマディフューザーも避けよう
自宅でアロマキャンドルやアロマディフューザーを楽しむ人も増えています。可愛らしいデザインのキャンドルやディフューザーが数多く登場し、部屋で利用しているという人も多いでしょう。
しかし、猫と一緒に生活をしているのなら、アロマオイルを使用するのは控えましょう。瓶を置いていたり、アロマキャンドルなどを猫の手が届く場所に置いておくことも危険です。絶対に猫が触れないように、アロマ関係のものは置かないようにすることが猫の身を守る確実な方法です。
アロマ加湿器の使用も控えると安心
アロマオイルは様々な方法で利用できるため、重宝している人も多いでしょう。冬場であれば、ただの加湿器ではなくアロマ加湿器を利用することで乾燥対策を行ないながら、香りを楽しむこともできます。
しかし、猫はアロマオイル全般を避けた方がよいため、アロマ加湿器の使用も控えましょう。寝室でアロマ加湿器を使用しているので安心などと思っていても、猫が寝室に入ってくる可能性も大いにありえます。様々なことを想定したうえで、アロマキャンドルやアロマディフューザーだけでなくアロマ加湿器の使用も控えると安心です。
猫を飼っているのならアロマの使用はNG!
ペットとして猫を飼っているお家も多いなか、アロマオイルが好きという人もいるはずです。人間にとっては癒し効果があり、自宅でのんびり過ごすことができるというメリットがありますが、猫には命に関わる危険が潜んでいます。アロマオイルの種類を見てみても、猫にとって有害となるものが多々あります。
そのため、猫を飼っているのならアロマの使用は全面的に禁止しましょう。愛猫の命を守るためにも、アロマ関連のグッズは自宅に置かない方が安心です。中毒症状が現れるだけでなく、最悪場合死に至るというケースもあるため、アロマ以外の癒しグッズで人間も猫も安心して過ごせる空間を楽しみましょう。