猫一度の出産で複数の子猫を産む動物です。比較的安産だといわれており、猫自身で行うため飼い主の手助けは必要ないものとされています。しかし、何かあったときのために猫を守れるよう、猫の出産について詳しく知っておきましょう。ここでは猫の出産に関しての過程や猫の変化、また猫が安心して出産するために飼い主ができることをご紹介します。
目次
猫の出産時期はいつ?時間は?
猫の発情期
猫は生後6~9カ月頃に発情期を迎えます。発情期には、他の動物に優しくなったり、乳首が大きくなったりと精神面や肉体面でも変化が見られます。
猫の出産時期
妊娠した猫は、妊娠60日を過ぎた頃から出産の準備を始めます。一般的に出産時期は春と秋の2回といわれており、これは猫の発情期に関わるもので、発情期の時期が2~4月、6~8月にピークとなるためです。
猫の出産にかかる時間
猫の出産は、20~60分程の陣痛ののち、出産が始まります。出産にかかる時間は最大で3時間程度で、通常は1~2時間ほどです。1時間以上陣痛のまま出産は始まらない場合には、逆子、微弱陣痛といったトラブルも考えられるため、すぐに獣医師に相談してください。
猫は15~30分間隔で子猫を次々と産み落とすのですが、頭だけが出ている状態で5分以上経っている場合や大量出血している場合はも獣医師に連絡を取り、状況を説明した後、支持を仰ぐようにしましょう。
出産する場所
猫が出産するための場所「巣作り」は、段ボールやペット用のサークルを使用して作ってあげましょう。ポイントは3つあります。
- 暗い場所にする
- 柔らかい毛布を敷いてあげる
- 周囲を囲む
この3つの条件を満たして、「人目につかない場所」と猫に思わせることが大切です。そう思うことで、母猫は安心して出産することができます。
一度に何匹産むの?
猫は一度の出産で3~5匹の子猫を生みます。しかし、母猫の身体の大きさによっても変わってくるので、大きい身体の母猫の場合だと1~8匹生まれてくることもあります。生まれてから慌てないよう、あらかじめ多めに考えて準備しておきましょう。
妊娠が分かったら、動物病院での診察は必要?
猫は比較的安産なため、動物病院の受診も必須ではありませんが、初めての出産で不安な場合には一度動物病院で診察を受け、猫の状態を見てもらうようにしてください。
交配から1ヶ月たった後だとエコー検査で妊娠しているかどうかを確認することができますし、45日後からはレントゲン検査を行って胎児の数を確認することも可能です。猫はたくさん子猫を産むので、出産前に正確な子猫の数が分かっていれば、「まだお腹の中に一匹残っていた」というトラブルを避けることができます。
猫の出産過程を詳しく解説!
妊娠期
妊娠期の身体の変化
妊娠すると、活動の低下、乳房のふくらみ、腹部の胎動といった猫の変化が見られます。人間のように、ひどい悪阻は見られませんが、妊娠初期には食べ物の好みが変化することはあります。お腹が大きくなってくると、猫は横向きに寝そべることが多くなり、胎動は妊娠50日ほどで感じることができます。
分娩が始まる2~3日前にはお乳が出てくるようになります。猫は出産に備えるため、高いところや危険な場所には寄りつかなくなりますが、基本的に普段と変わらない生活を送るようにしましょう。
妊娠期の食事
妊娠すると食欲旺盛になります。通常の倍ほど食べる時期もありますが、妊娠中は必要なカロリー量も通常の2倍になるといわれているので、しっかり食べさせてあげましょう。
市販されているドッグフードのなかにも、妊娠母猫用を兼ねるものも販売しています。そういったドッグフードを食べさせて、母猫の体調管理をしてあげましょう。ただし、出産が近づくと食欲も減っていきます。
出産
分娩直前には、猫のこのような変化が見られます。
- 攻撃的になり、警戒心が強くなる
- 乳房や陰部をグルーミングする
- 周囲を探索したりと、そわそわして落ち着きがない
- 形だけの排便姿勢をとる
そして陣痛が始まると、用意しておいた出産場所に移動し、ゴロゴロと喉を鳴らすようになりまったり、出産場所にあるものをかきまわし始めます。いきみだして出産が始まったら、決して手を出さずに見守っていましょう。
そして、子猫が生まれたら母猫は羊膜を取り除き、鼻先を舐めて自力で肺呼吸できるように促します。子猫が生まれた後出てくる胎盤は母猫が食べて、へその緒は噛み切ります。胎盤を食べるのは出産の痕跡を消すため、そして母猫の栄養源となるためです。
出産後
出産が終わったら、母猫は自分の身体を舐めて綺麗にし、出産の痕跡を残さないようにします。そして、子猫に授乳を始めます。授乳の他にも、子猫を温めたり排泄を促したり、また外部の危険から子猫を守ることもあります。
出産後にみられる母猫の病気
産褥熱
子猫を出産の際に、子宮や膣内壁に傷がつき、そこから細菌が侵入し高熱が出ることがあります。症状は進行すると、子宮内膜炎、腹膜炎といった重い病気になる危険性があるので、産後は外陰部を清潔な状態に保つようにし、母猫の様子を観察しましょう。
無乳症
無乳症は、子猫を出産したにも関わらず、母乳が分泌されない状態のことを言います。無乳症の原因は、初産や早すぎる帝王切開が考えられ、いくら乳首に吸いついてもお乳が出てこないため、子猫の空腹は満たされない状態となってしまいます。
そのため、子猫には人工哺乳を行い、栄養を補給します。母猫に対しては薬を使いプロラクチンの分泌を促して、乳汁の産生を促すようにします。
異常出血
出産が完全に終わった後でも、延々と血が止まらない状態となると異常出血の可能性があります。原因には、子宮・膣壁への物理的な障害や胎盤の壊死、退縮不全、血液凝固異常などが考えられます。処置に関しては獣医師での診察を経て、原因を特定してからとなるので、すぐに獣医師に診てもらうようにしましょう。
猫が出産しているときの注意点
出産中は手を出さない
猫は本来、人間の手を借りることなく出産をする生き物です。自分で出産する場所を決め、自分で出産を行います。そのため、人間はよっぽどのことがない限り手出しはしません。
もし、不用意に手を出してしまうと母猫を刺激することとなり、子猫を殺したり、育児放棄をする可能性もあります。まずは「母猫に全て任せる」ということを肝に銘じ、出産中はじっと見守ってあげましょう。
異常がある場合は手助けする
出産中にあきらかな以上がみられる場合には、飼い主の手助けが必要です。陣痛から1時間以上経っているのに、子猫が生まれない、出産途中での出血や出産後の大量出血、生まれた子猫が動かない場合、母猫が出産後にぐったりしている場合などです。子猫の命だけでなく、母猫の命にも関わってくるので、すぐにかかりつけの獣医師に相談するようにしてください。
猫の出産後にケアしてあげたい4つのこと
子猫が過ごしやすい環境を作る
出産が終わった後は、母猫、子猫ともに過ごしやすい環境を作りましょう。
- 空調管理
- 猫に直接エアコンの風があたらないようにする
- 風通しの良い快適な環境を作る
- 部屋の中を安全な状態にする
など気を配りましょう。出産を終えた母猫はとてもデリケートな状態ですし、子猫も免疫力が十分ではなく、すぐに病気になったりします。そのような時期ですので、母猫、子猫とも過ごしやすい環境を用意してあげましょう。
子猫の羊膜を除去する
生まれたばかりの子猫を清潔な布やタオルで羊膜ごと包み、母猫の近くに連れて行きます。母猫が羊膜を除去しない場合は、くるんでいる布ごと子猫をなでるようにすると、羊膜が剥がれてきます。
へその緒を処理する
へその緒の処理も出産後の大切なケアです。とはいえ、始めは母猫に任せましょう。母猫はへその緒の処理も自分で行いますが、もし行わなかった場合は手助けが必要です。子猫の身体から5cm程の部分を木綿糸を使用して縛り止血した後、母猫の胎盤側を清潔なハサミで切ります。
くれぐれも止血点を切らないように注意してください。処置に不安がある場合には、すぐに獣医師さんに相談するようにしましょう。
栄養価の高い食事を用意する
出産した後の母猫は、普段よりも多くの栄養を必要とします。そのため、出産が終わった後にたくさんご飯を食べることができるように、栄養価の高い食事を用意しておいてあげましょう。
母猫が過ごしやすい環境を作る
出産を終えたあとの母猫は非常に疲れていますし、子猫に必死です。過度な接触は控えるようにし、そっとしてあげましょう。そのとき、母猫用の食べ物、トイレ、新鮮な飲み水を近くに用意してあげるといいでしょう。
猫の出産後に見られる異常行動
猫の中には、出産後に通常ではみられない異常な行動を見せる猫もいます。すべての猫に当てはまるわけでは決してありませんが、覚えておきましょう。
育児放棄
育児放棄とは、子猫に適切な保育を行わないことで子猫を舐める・授乳する・抱いて温める・排泄を促すといった母性行動を行わなくなります。育児放棄の原因には、ストレスや他の猫との接触不足、人間への過剰な愛着などが挙げられ、母猫が育児放棄をした場合には人間が介助してあげる必要があります。
カニバリズム
カニバリズムは共食いのことを言い、生まれてきた子猫を母猫が食べてしまうという行動です。これは、ストレスや母猫の極端な栄養不足、ホルモン異常などが原因と考えられます。
愛猫の出産は慌てずに見守ろう
愛猫が出産で苦しんでいる、大変な思いをしているとなると、少しでも手助けしてあげたくなりますよね。しかし、猫のお産は基本的に母猫に全て任せます。
手を出し過ぎると、子猫の面倒を一切見なくなることもあることから、あくまでも母猫主体で、どうしても無理な場合のみ手助けするようにしましょう。出産が始まると、飼い主の方が慌ててしまいますよね。でも頑張っているのは猫ちゃんです。慌てず焦らず、じっと見守ってあげるようにしましょう。