愛犬も年を取ると介護が必要になります。老化のサインに気付いたら、できるだけ元気で暮らせるようにサポートしましょう。自分の心を保ちながら、愛犬の心に寄り添うには、肩の力を抜いて楽しむことが大切です。今回は、老犬介護の内容や、介護を楽しむためのコツ、介護に役立つアイテムなどを紹介します。
犬の介護はいつから必要になるの?
人間の社会では高齢化が進んでいますが、犬の世界でも同様です。平均寿命が伸びたことにより、介護が必要な犬が増えてきました。
犬は人間の約4~5倍のスピードで年をとると言われていますが、老化のスピードに犬種差があることを知っていますか?身体の大きい犬種ほどシニア期が早く訪れ、寿命が短い傾向にあります。また、生まれつきの体質や、生活習慣などによる個体差によっても異なります。
「シニア期」は、小型犬 8~11歳ごろ、中型犬 7~9歳ごろ、大型犬 6~7歳ごろです。シニア期で人間の介助を必要とすることは滅多にありませんが、内臓機能や代謝が衰え始めたり、白髪や薄毛、肌の乾燥やべたつきなど、老化の兆候が表れはじめます。
「ハイシニア期」は、小型犬 12歳以上、中型犬 10歳以上、大型犬 8歳以上です。このころになると、生活のあらゆる場面で介護を必要とする犬が増えてきます。
犬の老化の症状は?
犬が年を取ると、人間と同じように老化の兆候が表れるようになります。当り前にできていたことができなくなるのは、犬自身にとってもストレスです。老化していく犬の自立心を、上手にサポートしていきましょう。
足腰が弱ってくる
足腰が弱ると、立ち上がる時に足が震えたり、歩き方に元気がなくなったり、つまずきや転倒が目立つようになります。犬の多くは、前足より先に後ろ足の筋肉が衰え、徐々に自分の力で立てなくなります。
衰えてきた足の筋力をそれ以上悪化させないために、年をとっても無理のない量の散歩を続けましょう。リンパマッサージで血液のめぐりを良くしてあげるのも、老化を遅らせるための良いサポートとなります。
寝ている時間が長くなる
成犬の一般的な睡眠時間は、1日におよそ12~15時間です。それでも人間と比べて長いですが、老犬ではさらに長くなり、長い犬では18時間もの睡眠をとります。
1日中寝ているように感じて心配になりますが、ゆっくりと休むことで体力を回復させているので、温かく見守ってあげましょう。
トイレの失敗が増える
老犬になると、トイレに間に合わないことが多くなります。膀胱のしまりが悪くなったり、筋肉が衰えたりすることが原因です。
トイレの広さを拡大してあげたり、トイレを生活スペースに近付けることで対策しましょう。
できる限りは、犬が自分でトイレに行くという行動を諦めさせないことが大切です。そのため、おむつの着用は最終手段にしましょう。
ご飯が食べにくく食欲が減る
老犬になると、食事をあまり食べなくなる傾向があります。考えられる理由は、大きく3つです。
1つ目は、使うエネルギーの量が減ったことで、自然と食事量が減っているパターンです。ある程度の食欲があって、栄養が足りている様子であれば問題はありません。お皿に盛るドッグフードの量を見直す時期かもしれません。
2つ目は、味覚や嗅覚の衰えから食欲が低下しているパターンです。このようなときは、ドッグフードにぬるま湯をかけて、香りを強めてあげたり、甘味のあるトッピングを混ぜたりして、食欲を掻き立たせてあげましょう。
3つ目は、噛む力や飲み込む力が弱くなったことで、食事が進んでいないパターンです。このような愛犬には、飲み込みやすくて消化に良く、高カロリーな老犬用フードに切り替えてあげましょう。
耳が聞こえにくくなる
老化による音の聞き取りにくさは、少しずつ段階的に進行します。初期の老化では全体的に聞こえが悪くなり、徐々に聞こえない音域が出てきます。
耳が聞こえにくくなった犬は、大きな不安を感じているはずです。身振り手振りを交えながら声をかけたり、笑顔でたくさんのスキンシップを取ったりして、不安を和らげてあげましょう。
ある日突然聞こえなくなった様子であれば、老化以外の病気が隠れている可能性が高いです。すぐに獣医師へ相談しましょう。
目が見えにくくなる
老犬になると、視力も衰えます。障害物にぶつかるようになったり、以前より怖がりになったり、急に触れたときに驚いたりするのは、視力が低下しているサインです。
白内障、緑内障など、失明につながる病気も多いので、日頃から目の健康状態をチェックしてあげましょう。
認知症になる
人間と同じように、犬も脳機能の低下によって認知症を発症します。
以下のような行動が現れたら、認知症になり始めている可能性があります。一度、獣医師の診察を受けましょう。
- 夜鳴きをする
- 攻撃的になる
- 徘徊する
- 甘えてくる
- 昼夜逆転生活になる
- 名前を呼んでも無反応
- 同じ所をぐるぐる回る
- トイレの失敗が多くなる
犬の介護は具体的にどんなことをするの?
犬の老化は、人間より早いスピードで進行します。この前までできていたことを手間取るようになったとき、飼い主としてして何がしてあげられるでしょうか?
すぐに手を貸したい気持ちをぐっとこらえて、愛犬のペースを優しく見守ってあげましょう。自分の身体の変化に戸惑う愛犬に、「このままでいいんだよ」という安心を与えてあげましょう。
早い段階からの過剰な介護は控えて、広い心で接することが大切です。そして、本当に必要になったときに、愛犬のためにどんなサポートをしたら良いのかを紹介します。
外飼いの犬は室内飼いの生活へ
愛犬を家の外で飼っている人は、必要な介助や介護の必要な程度に応じて、室内飼いへの切り替えを考えましょう。
天候や気温に左右されず過ごしやすい室内での生活は、免疫力の低下した老犬に適していると言えます。
また、犬は年を取ると寂しがり屋になるので、家族の姿が見える室内の方が居心地良く過ごすことができます。家族としても、普段から目の届くところにいてもらった方が安心ですね。
食事のお世話
自分の力で食べることができなくなった犬には、消化や吸収に良く、噛まなくても飲み込める柔らかいドッグフードを与えます。スプーンやシリンジを使って、誤嚥のないよう、少しずつゆっくりと食べさせてあげましょう。
食事の終わりには、水を飲ませて口内を清潔にします。最後に口の周りを拭いてきれいにするまでが、食事のお世話になります。
排泄のお世話
関節が弱って足腰の筋力が落ちてくると、今までのように踏ん張ることができなくなります。そのようになったら、お腹の側から下半身を持ち抱えるようにして、排泄のポーズを手伝ってあげましょう。
トイレの後始末は、できるだけすぐに行なうことが大切です。そうすることで、愛犬が自分の排泄物を踏んづけたり、乗っかって身体を汚してしまう危険を防ぎましょう。
さらに老化が進むと、自分の力で排泄ができなくなってきます。そうなったら、飼い主は腹部のマッサージや圧迫をして、一緒に排泄を手伝ってあげましょう。
歩行のお世話
犬は足腰が弱ると、足元がおぼつかなくなったり、立ち上がれなくなったりします。
そんなときの歩行のお世話には、介護用ハーネスを使います。介護用ハーネスで、胴体や後ろ足を持ち上げてあげると、足腰の弱ってきた犬でも、まだ自分の意思で動くことができます。愛犬のトイレのタイミングや移動の合図を敏感にキャッチして、いつでもサッと歩行を補助してあげましょう。
睡眠のお世話
自分の力で寝返りができない犬には、1~2時間おきに寝返りを打たせてあげましょう。睡眠中に水飲みや排泄など、手を貸してほしいことがあると飼い主を呼んできます。できる限りで要望に応えてあげましょう。
夜鳴きをする犬には、不安にさせないよう寄り添って声をかけたり、日中にたくさん日光を浴びさせて体内時計を整えると良いでしょう。それでも良くならず、近所迷惑などが気になるようであれば、動物病院で薬を処方してもらうのもひとつの手です。
また、老化が進行して寝たきりの生活になると、部分的に血液が停滞して「床ずれ」を起こし、皮膚が壊死してしまうこともあります。床ずれ防止のベッドやクッションを用意して防ぎましょう。
心のケア
身体が不自由になった犬は、ストレスを溜めてしまいがちです。単調な生活が続くと、なかなか気分が晴れません。移り変わる外の景色を見せてあげたり、気分転換やリフレッシュができるようなコミュニケーションをとって、精神面のケアも欠かさずに行ないましょう。
犬の介護に疲れたら
あなたの生活に、多くの癒しと喜びを与えてくれてきた愛犬ですが、介護となると一筋縄ではいかないことも出てくることでしょう。
大きな愛情があるからといえ、介護をする人にとって、介護疲れはつきものです。
犬の介護で毎日忙しく、外出が思うようにできなかったり、寝不足が続いたり、イライラが募って声を荒げてしまったり、それに対して自己嫌悪になったりする人は少なくありません。
多くの飼い主が辛さを溜め込んで、ときに体調を崩したり、ノイローゼやうつのような状態になっているのが現状です。
介護のせいで飼い主の心身の健康が損なわれることは、愛犬も望んでいないはずです。そこまで抱え込む前に、一度頭を冷やして、次に紹介することを実践してみてくださいね。
犬用介護施設を利用して負担を減らそう
初めての老犬介護を始める前に、老犬ホームなどの犬用介護施設に預けるという手段があることを、念頭に置いておきましょう。それだけで、気持ちがずいぶんと楽になります。
老犬ホームは、数日単位や数か月単位での一時的な預かりや、終身預かりが可能な犬用の老人ホームです。老犬の介護に慣れたスタッフがいるため、愛犬を安心して預けることができます。
「もう無理かも…」と精神的に参ってしまう前に、犬用介護施設を一定期間利用して、あなたの心をリフレッシュさせてみてはいかがでしょうか?飼い主が健康な生活をおくることは立派な愛犬孝行ですよ。
老犬ゆる漫画で癒されよう
スティーブン・スピルハンバーグ著の「パンダと犬」を知っていますか?ヨボヨボになった愛犬を介護しながら暮らす日常を、パンダに扮した著者の目線で綴った4コマ漫画です。
どんな苦難も「可愛い」と受け入れる著者の寛大さや、いつも悪びれる様子のない老犬に、優しい笑みがこぼれることでしょう。パンダと犬を読んで癒されたら、介護のモチベーションがアップするかもしれません。
Instagramでは、フォロワー15万人突破中です。
絵が得意な人はスティーブン・スピルハンバーグさんのように、大変な老犬介護を絵と文字で書き留めて、「可愛い」の記念エピソードに変えられると素敵ですね。
励まし合える友人と苦労を共有しよう
愛犬は可愛いですが、介護中は可愛いことばかりではありません。気持ちに余裕がなくなると、些細なことで感情が爆発したり、自分はダメだと落ち込んだりしてしまいます。
そんなときは、介護の辛さを包み隠さず信頼できる相手に話してみましょう。正直な気持ちを表すことは、決して悪いことではありません。
誰かに共感してもらえることで、励まされたり、心が楽になるものです。老犬介護の経験のある友人に聞いてもらうと、いいアドバイスをもらえるかもしれませんよ。
簡単にSNSなどで同じ経験をしている人が探せる時代なので、お互いに励まし合うのも刺激やモチベーションになるでしょう。
愛犬の介護を楽しむコツは?
はじめての老犬介護は、わからないことばかりで悩みを抱える飼い主も多いでしょう。頑張りすぎて寝不足になったり、ストレスのあまりノイローゼになったり、うつ状態になってしまう人もいます。
肉体的にも精神的にも重労働な老犬介護を楽しむためには、どのように接したらいいのでしょうか?
完璧を捨てる
老犬介護に全力を使って、あなたが壊れてしまってははいけません。完璧な介護を目指すのではなく、飼い主が楽しく長続きできる介護を目指しましょう。
そのためには、うまくいかないことに対して開き直る力がとても大切です。一人で抱え込まず家族に分担を要請したり、たまにはサボってみましょう。
残り少なくなってきた愛犬との時間を、少しでも多く笑顔で過ごせる穏やかな時間にすることが大切です。
自分のための時間を確保して気分転換をする
自分の時間を充実させて精神的に満たされると、愛犬の介護で愛情をたっぷりと注ぐことができるでしょう。
一時的に愛犬を預けらる相手が身近にいない場合でも、介護犬のお世話を受け付けてくれるプロのペットシッターがいます。負い目を感じず気軽に利用して、自分の時間を楽しみましょう。
仕事を辞めない
介護に専念するために仕事を辞めざるを得ない場合もありますが、周囲のサポートを借りながらでも、できる限りで仕事を続けることは、気分転換や本来の自分を保つために有効な手段です。
この先、愛犬が旅立った後にペットロス症候群にならないためにも、社会とのわ関りを持ち続けることをおすすめします。
介護グッズを活用する
介護グッズを使うことで、介護の負担を和らげることができます。
実は、日本はペットの介護において先進です。充実した介護用品を手に入れると、快適な介護生活を送ることができますよ。
犬の介護に重宝するアイテム
老化していく身体には、様々な変化がやってきます。介護グッズを利用して、愛犬も飼い主も介護生活をもっと快適に、もっと楽しく過ごせたらいいですね。
愛犬の介護に役立つ5つのアイテムをご紹介します。
ハーネス
介護用ハーネスを使った歩行補助で、自由に歩ける喜びを応援してあげましょう。身体にぴったりしたものよりも、少し大きめのサイズを選ぶと着脱が楽でおすすめです。
MayChan 歩行補助ハーネス
支える面積が広く、愛犬にとって負荷の少ないハーネスです。前足や後ろ足など、補助したい側の足に重心を変えることができます。
また、摩擦が起こりにくく通気性のいい素材が使われていたり、反射材が付いていたりと、愛犬に優しい設計です。
ruru-pet 犬用介護ハーネス
表地には手入れしやすいポリエステル、裏地には柔らかなフリース素材が使われたハーネスです。装着が簡単で、ストラップの長さ調節域が広く、飼い主の使いやすさを考えて作られています。
おむつ
愛犬と飼い主が安心してシニアライフを送れるように、介護用おむつデビューのタイミングを見計らいましょう。常につけるのではなく、おもらしが心配な外出時などから始めてみてはいかがでしょう?
よそ行きにも可愛いおむつカバーをはかせてあげると、ぐっとおしゃれになりますよ。メス犬用とオス犬用があるので、購入時にはお間違えの無いようにご注意くださいね。
ユニ・チャーム ペット用紙オムツ
尻尾が可愛いユニ・チャームのペット用オムツは、身体にフィットして漏れにくいのが特徴です。
・Sサイズ 小型犬用
・Mサイズ 小~中型犬用
・Lサイズ 中型犬用
DJHbuy おむつカバー
おしゃれで可愛いこちらのおむつカバーは、愛犬の肌に優しいソフトコットン素材でできています。幅広なマジックテープでずり落ちがなく、洗い替えにも便利な3枚セットで販売中です。
・メス犬用
・オス犬用
ベッド
大事な愛犬が横になることが多くなってきたら、快適な睡眠をサポートするためにベッドを見直してあげましょう。床ずれなどで辛い思いをさせないためには、未然の予防が大切です。
ペティオ ずっとね 床ずれ予防ベッド
ウレタン2層構造なので、圧力が偏らずに身体が安定して安眠につながります。室内の移動や寝返りのサポートに便利な取っ手が付いています。3つのサイズから愛犬の身体の大きさに合わせて選びましょう。
・小型犬用 小
・中型犬用 中
・大型犬用 大
徘徊サークル
認知症になると、同じ場所をぐるぐる回ったり、家具や壁にぶつかるまで直進したりと、「徘徊」の行動が目立つ犬も多いです。そんなときには徘徊サークルを設置して、安全な場所だけを歩かせてあげるようにしましょう。
徘徊は同じ方向に向かって進む傾向があるため、壁に沿って歩けて、飼い主が見守りやすいタイプのものがおすすめです。
ottostyle.jp 折りたたみ八角形ペットサークル XLサイズ
小型犬~中型犬に対応ができる広いサイズのサークルです。足を滑らせにくく、ぶつけてしまったときに痛くないので、安心して歩かせてあげることができます。設置や収納が簡単な点や、撥水性がある点も魅力です。
サポーター
関節のサポーターは、弱った筋力を回復するサポートや冷え性の対策に有効です。
骨の突出している関節は、床ずれになりやすい部位でもあります。寝たきりになった愛犬にサポーターをつけると、床ずれ予防のための関節保護に役立ちますよ。
エスライフ 犬用膝サポーター
マジックテープで微調整が可能なエスライフの「犬用膝サポーター」は、ウエットスーツ用の素材で作られています。防水性や保温性に優れており、丸洗いもできて便利です。
Bleaf 犬用膝サポーター
両足を支える部分が1つに繋がっているこちらのサポーターは、強力に膝から前足の付け根部分までをサポートしてくれるアイテムです。
飼い主と愛犬の心に残る介護にしよう
命あるものには必ず老化がやってきます。幼かった愛犬が年老いていく現実を受け入れて、生活をより豊かにしていくための向き合い方を考えましょう。
愛犬に必要な介護や、飼い主の心の持ち方を早めにシミュレーションしておくことで、長く楽しい時間を過ごすことができるでしょう。
介護は楽なものではありませんが、愛犬とのより深いスキンシップの時間でもあります。
頑張りすぎず長続きできる介護で、愛犬も飼い主もたくさんの笑顔で満たされるといいですね。