犬が舐めるのは愛情表現だけじゃない?場所で分かる伝えたい心情とは

犬が舐めるのは愛情表現だけじゃない?舐める場所で分かる犬の気持ちを知ろう!

犬が舐める仕草をするのは、人間に対する愛情表現でもあり、病気などの異変に気づいてほしいというサインでもあります。どこを舐めるかが犬の気持ちを知るためのポイントになるので、舐める場所の違いを理解しておくことが大切です。具体的にどんな場所を舐めることが多いのか、また舐める原因について解説します。

犬が飼い主のどこを舐めるかで意味が変わる

犬は、心を許している人間に対して舐める仕草で愛情表現をします。そんな姿を見て、愛らしいと思う人もたくさんいるでしょう。

しかし、この愛情表現は、飼い主のどこを舐めるかで意味合いが変わります。どんな違いがあるのかをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

口を舐める

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犬が飼い主の口を舐める理由は、敬意と甘えの2つの意味があると言われています。

  • 敬意の意味がある場合の舐め方
  • 敬意の意味があると言われる理由は、犬の祖先にあたる狼の習性が由来しています。群れをなす狼は、その中でそれぞれ立場があります。群れには、必ずリーダーとなる上位の狼がおり、下位のものは上位の狼の口を舐めることで敬意を表します。この名残が犬にも残っているため、自分より立場が上だと認識している飼い主の口を舐めようとするのです。

  • 甘えの意味がある場合の舐め方
  • 次に、甘えの意味があると言われる理由ですが、これは子犬の習性によるものです。子犬はお腹がすくと、その意思表示として母犬の口を舐める習性があります。母犬と同じように食事を与えてくれる相手だと認識すると、犬は口を舐めて食事を催促します。

手を舐める

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犬が舐める行為をするのは基本的に心を許した飼い主であることが多いのですが、なかにはまったく知らない人を舐めようとする犬もいます。そんなときに多く見られるのが、手を舐めるという動作です。これは、犬が相手に遊んでほしいと思っている気持ちの表れだと言われています。

手は、おもちゃを持ったり、頭やお腹を撫でたりなど、スキンシップをとる際によく使われる部分です。それを犬も分かっているので、手を舐めることで「遊んでほしい」と伝えようとします。

鼻や耳を舐める

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顔全体を舐めてくる場合は、飼い主に対して甘えていると捉えられるのですが、鼻や耳をピンポイントで舐めてくる場合には、甘え以外の理由が考えられます。

鼻や耳は皮脂分泌が盛んで、汗の影響でしょっぱくなります。犬は塩分があるものが大好きなので、それを味わいたいという気持ちから、鼻と耳を舐めようとするのです。

また、鼻の場合は汗だけではなく、鼻水が出ることがあります。鼻水も塩味があるので、それを理解している犬は、積極的に鼻を舐めようとするでしょう。

足首より先を舐める

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足は汗腺が多いので、体の他の部位に比べて汗をかきやすい傾向があります。そのうえ、汚れがたまりやすいことから雑菌が盛んに繁殖し、嫌な臭いを発生させてしまいます。この臭いに惹かれ、犬は足を舐めようとすると考えられています。

犬は嗅覚が鋭いので、嫌な臭いに対して寄り付かないのでは、と思う人もいるでしょう。しかし、犬は汗くさいところはしょっぱい、ということを理解しています。先程も説明したように、犬は塩辛いものが好きなので、汗をかきやすいところには、特に惹かれてしまうのです。

腕や脚を舐める

腕や脚を舐めるのは、単にじゃれているだけの可能性もありますが、ストレスからくる常同行動の可能性もあります。

この常同行動は、人間の場合、自閉症や認知症などを患っている人に見られる行動です。犬の場合、ストレスがたまることで起こりやすいと言われており、それによって様々な異常行動を見せます。

腕や脚を舐めるのも、そのひとつだと考えられているので、特定の部分ばかりを舐めていたり、長時間舐め続けていたりするようであれば注意が必要です。

犬は飼い主以外にもいろんなところを舐める!考えられる原因にはどんなものがある?

大好きな飼い主を舐めることで、愛情表現を行っている犬も多いのですが、なかには、飼い主以外を頻繁に舐めている犬もいます。

ときには「なんでそんなところを舐めるの?」と思ってしまうほど、人間からは理解しがたい行動をとることもあるでしょう。では、具体的にどんな場所を舐めることが多いのか、そして、その原因についても解説します。

自分を舐める

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犬は基本的に、猫のように自分で毛づくろいをしません。きれい好きな犬の場合は、自分で毛づくろいをしようとする姿が見られることもありますが、犬の体毛のケアは飼い主の仕事だと思っているので、わざわざ自分で舐めて毛づくろいをしようと思わない傾向にあるのです。

しかし、頻繁に自分を舐める姿が見られた場合、それは何らかの異常を訴えている可能性があります。犬が自分の体を舐める原因は、主に3つ考えられます。

病気の可能性がある場合の舐め方

かゆみや痛みを感じる部分があった場合、自分で患部を舐めようとします。そうすることで、飼い主に体の異常を伝えようとしていると考えられるのですが、やりすぎると状態を悪化させる可能性があります。

かゆみがひどい場合には、舐めるだけでは満足できず、噛んでかゆみを抑えようとする犬もいるので、脱毛や出血などの危険性を高めます。

ストレスがある場合の舐め方

舐めるのは犬にとっての愛情表現のひとつなので、飼い主やその他の人など、甘えたいと思う相手を舐めようとします。しかし、周りに甘えられる存在がいない場合、自分を労わったり慰めたりするしかないので、自分を舐めるようになるのです。

犬にとって、愛情を向けられる人がいないというサインなので、このとき、犬は寂しさやストレスを抱えていると考えられます。

避妊・去勢手術を受けた後の舐め方

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子犬の時期に避妊や去勢手術を受けたという子もいるでしょう。その手術後、傷口が気になって舐めようとする犬がいます。傷口がかゆい、痛いなどの違和感を感じての行動なので、治れば舐めるのをやめる可能性があります。

床やガラスを舐める

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床やガラスはほこりがたまりやすいので、頻繁に舐めていると体調を崩すのではと不安になる人もいるでしょう。なぜ、そんな場所を舐めてしまうのか、その理由は主に3つ考えられます。

退屈している

人間が「なぜそんなところを舐めるの?」と不思議に思うようなことをすれば、構ってもらえると思っている犬もいます。そのため、あえて床やガラスを舐めて「私を見て」とアピールしているのです。構ってもらえないストレスや、退屈しのぎの行為と捉えても良いでしょう。

病気やホルモンの異常

犬は、体調の異常を感じるとそれを紛らわせようと何かを舐める傾向があります。

  • 床やガラスを舐める場合
  • 胃腸の病気や神経の病気が疑われます。

  • 胃腸の病気の場合
  • 胃炎やリンパ腫などが原因で不快感を感じたり、摂食障害で過食気味になったりすることで、床やガラスを舐めて紛らわせようとします。

  • 神経の病気の場合
  • 中枢神経の障害が考えられ、車酔いをしたときも、車内のガラスを舐めようとする行為が見られることがあります。

床に落ちているものを食べている

一見何もないような床でも、細かい食べかすが落ちている可能性があります。犬は、それを食べようと床を舐めてしまうのです。うっかり犬が食べてはならないものを落としている可能性があるので、飼い主が食事をするスペースはしっかりと掃除をし、食べこぼしがないかを確認することが大切です。

自分のおしっこを舐める

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人間からすれば、とても考えられない行為ですが、犬の中には自分のおしっこを舐めようとする子もいます。なぜこのようなことをしてしまうのか、その原因は主に3つ考えられます。

ミネラル不足

犬の尿には、ある程度のミネラルが含まれています。そのため、ミネラル不足を補おうと自分のおしっこを舐めてしまうのです。

散歩中に自分がおしっこをした場所だけではなく、関係ないところまで舐めている場合は、他の犬のおしっこの跡を舐めている可能性があります。容認していると癖になってしまうので、きちんとしつけてやめさせることが大切です。

構ってほしい

犬が人間にとって理解不能な行動をとると、なぜそのようなことをするのだろうと不思議に思う人もいるでしょう。実は、それを狙ってわざと自分のおしっこを舐めようとする犬もいるのです。

飼い主に構ってほしい、注目してほしいという気持ちの表れから、飼い主が驚くような行動をわざと行ないます。

ストレス

常同行動のひとつで、ストレスが原因となっていることがほとんどです。一般的に常同行動は、変な行動になればなるほどストレス度合いが高いと言われているため、自分のおしっこや、他の犬のおしっこを頻繁に舐めるような行為が見られる場合には、比較的強いストレスを感じていると考えられます。

その場合、おしっこを舐める行為以外の異常な行動が見られる場合があるので、しっかりと観察することが大切です。

犬がいろんなところ舐めることで考えられる危険性3つ

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ただ舐めるだけなら、かじって誤飲をするわけではないので気にすることはないと思う人もいるのではないでしょうか。

しかし、犬がいろんなところを舐めることによって、様々なリスクが考えられます。危険行為の場合は、すぐにやめさせる必要があるので、どんな危険があるのかを事前に理解しておくことが大切です。

床材の影響による嘔吐

床の材質やワックスなどの影響により、舐めることで犬が嘔吐をする場合があります。あえて苦みを感じるものを床に塗ったり、おもちゃやおやつで気をそらせたりして、床を舐めさせない工夫をしましょう。

皮膚の炎症や脱毛

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犬が自分を舐める理由のひとつに、皮膚のかゆみや痛みがあります。症状を軽減させようと頻繁に舐めるようになるので、その結果さらに炎症が悪化したり、毛が抜けてしまったりする可能性があります。

ペロペロと舐めるだけではなく、噛むような自虐行為に発展してしまう場合もあるので、症状が悪化する前に適切な対処をしてあげましょう。

口から病原体に感染

私たちの周りには、多くの雑菌が存在します。どこにどれだけの数がいるかは定かではありませんが、いろんなところを舐めるということは、口から多くの病原体を体内に取り込むことになります。

病原体の影響で、急に嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が出ることも考えられるので、いろんなところを舐める癖がある場合には、きちんとしつけをして不用意に舐めさせないようにしましょう。

パスツレラ症

犬は約75%がパスツレラ菌を常在菌として保有しています。犬が飼い主の口を舐めたり、傷口を舐めてきたりすることで、そこから菌が人体に侵入し、様々な症状を引き起こします。

代表的な症状としては、肺炎や皮膚の腫れなどがあり、重症化して死亡する可能性もゼロではありません。「犬や猫とキスをするのは良くない」とよく耳にするのはこのためです。可愛い愛犬とじゃれ合いたい人もたくさんいるでしょう。しかし、感染症のリスクを高めることにもなるので、過剰な接触は控えた方が無難です。

犬に舐める癖をやめさせるためのしつけ方法3つ

様々なリスクが考えられることから、犬に舐めるのをやめさせたいと思う人もいるでしょう。しかし「舐めてはダメ」と口で言うだけでやめられる犬ばかりではありません。癖になっている子の場合、すぐにはやめられず、何度注意しても続けてしまう可能性もあるでしょう。

そこで、舐め癖がついている犬をどうしつけたら良いのか、効果的な方法を3つ紹介します。

悪いことだと教える

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犬は本来賢い動物であり、飼い主の言葉だけではなく、表情から飼い主の感情を読み取れる子もいます。そのため、きちんと悪いことだと伝えれば、その後は繰り返さないように気を付ける犬もいます。

ただ頭越しなしに「ダメ」と叱っても、犬は何がダメなのか、なぜダメなのかが理解できません。ダメと伝えてやめられたら褒めたりおやつを与えたりすることで、犬もやめることのメリットを理解してくれる可能性があります。

舐めようとしたら座れと命じる

タバコは体に悪いと分かっていても、どうしてもやめられないという人がたくさんいるのと同じように、犬も、悪いことだと分かっていても、すぐにはやめられない場合があります。なかには、無意識に舐めてしまう犬もいるでしょう。

そんなときには、舐めることができないように別の命令を与えてあげるのが効果的です。例えば、床を舐めようと身をかがめたときに、すかさず飼い主が「座れ」と命令します。従順な犬は、飼い主の命令を最優先にするので、舐めるのをやめておすわりをするでしょう。これを繰り返していくうちに、舐める行為を自然にやめられる可能性があります。

おもちゃを使って気をそらせる

普段犬がよく遊んでいるおもちゃで気をそらせるのも効果的です。犬が舐める行為をするのは、飼い主に構ってほしいという理由も考えられるので、おもちゃを持ってきてあげることで遊んでもらえると思い、舐めるのをやめられる可能性があります。

犬が自分の体を舐める原因を取り除いてあげよう

構ってほしいなどの精神的な理由であれば、飼い主が犬の気持ちに寄り添ってあげることで舐め癖を改善できる可能性があります。しかし、体がかゆい、傷口が気になるなどの身体的な原因の場合、気をそらせようとしても、なかなかうまくいかないということがあるでしょう。

そんなときには、犬が体を舐める原因そのものを取り除いてあげることが大切です。自分を舐める理由がなくなれば、自然と舐め癖の改善も期待できます。

皮膚のケアをする

皮膚がかゆい場合は、そのかゆみを取り除いてあげることが大切です。清潔な体を保つ、皮膚に異常がないか医師に診てもらうなどの手段もありますが、自宅で皮膚のケアをしてあげることも大切です。そこで、皮膚のケアでおすすめのものを2つ紹介します。

ホホバオイル

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ホホバオイルとは、ホホバという植物の種子から抽出した油のことです。高い保湿性を持つので、化粧品として利用している人も多くいます。このホホバオイルは、人間だけではなく犬に対しても有効です。

犬が頻りに体を舐めたり噛んだりしていると、その部分がジュクジュクになって余計悪化してしまうことがあります。これは、黄色ブドウ球菌が異常繁殖してしまうことが原因です。

ホホバオイルは、殺菌や滅菌効果が高いと認められているので、黄色ブドウ球菌の数を減らし、正常な皮膚に戻すことが期待できます。

ホホバオイルの使い方
シャンプーをして清潔になった体に、ホホバオイルを適量塗り、10~15分程度置いてからタオルやガーゼで拭き取ってあげるだけです。
注意
傷がひどい場所や、肌にあわないと余計に肌荒れをしてしまう可能性があるので、100%効果があるというわけではありません。使うときは、肌に異常がないか事前にパッチテストなどをして様子を見ながら使ってあげましょう。

馬油

馬の皮下脂肪を原料とし、そこにオレイン酸やリノール酸などの、低刺激で保湿性の高い脂肪酸を含んでいるのが馬油です。肌の乾燥だけではなく、ひび割れややけどなどにも効果があると言われています。この馬油も殺菌や抗酸化作用があるので、皮膚の炎症改善に役立つと考えられます。

馬油の使い方
シャンプーをして体を清潔にした後、馬油を患部に優しく塗り込むだけです。

傷口を舐めさせない工夫をする

傷口の回復速度は、それぞれ個人差があります。放っておけば勝手に治る場合も多いのですが、舐めて傷口を刺激することで、余計に悪化させてしまったり、回復速度を低下させる可能性もあるので、できるだけ傷口は舐めさせない方が良いと言われています。では、どのような対策をすれば良いのかを紹介します。

洋服を着させる

傷口が隠れるような洋服を着せてあげると、直接舐めることができないので、犬も舐めるのを諦める場合があります。

エリザベスカラーをつける

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犬の首に装着するエリザベスカラーは、犬が傷口を舐めないようにするために病院がつけてくれるものです。顔を覆うような形なので、傷口まで顔が届かず、舐めるのを諦めてくれるでしょう。

病院以外にも、さまざまな形状のエリザベスカラーが市販されているので、愛犬に合うものを選んであげるといいでしょう。

病院で診てもらう

体に異常があるのかどうかを病院で診てもらい、適切な対処をすることで、犬が舐める原因を取り除いてあげることができます。どうしても舐めるようであれば、エリザベスカラーを希望すればつけてくれる場合もあるので、一度医師に相談してみましょう。

犬が舐める理由を考えて、気持ちを理解したりときには適切な対処をしてあげよう!

犬は、言葉が話せない代わりにいろんな方法で飼い主にコミュニケーションをとろうとします。舐める行為も、犬にとっては大切な感情表現のうちのひとつです。飼い主はしっかりと愛犬の様子を観察し、何を訴えているのかを理解し対処してあげることで、お互いの絆が深まるでしょう。