犬にマイクロチップを装着することは、まだ私たちにとって身近なものではないかもしれません。マイクロチップの装着で、愛犬の身分証明が確実に行えるということはイメージができるかもしれません。しかし、大切な愛犬の体に異物を埋め込むとなると悩んでしまいますよね。マイクロチップのことをもっと知りたい方や愛犬に装着を考えている方は、メリットやデメリットなどを詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
犬のマイクロチップとはどんなもの?
マイクロチップとは、直径2mm、長さ8~12mm(1円玉が20mm)のほんの小さな円筒形の電子タグです。チップには犬ごとに異なる15桁の数字が記録されています。
- 国コード:3桁で日本は392
- 動物コード:2桁でペットの場合は14
- 販売会社のコード:2桁
- 個体識別コード:8桁
の合計で、これを読み取ることで犬や飼い主の情報が明確になる仕組みです。これらの情報が登録されたマイクロチップを、獣医師などの専門家により犬の皮下に埋め込むことで装着が完了します。
マイクロチップ普及の動き
現在マイクロチップは、その有益性が評価され世界的にも普及が広まっています。では、日本ではどうでしょうか。
義務化について
世界では、イギリス、フランス、オーストラリアなどがすでに義務化をしています。
現在、日本では飼い犬にマイクロチップを装着させるという義務はありませんが、飼い主は首輪や名札などで、自分が飼っているペットだということを明らかにするように努めなければならないという努力規定があります。
つまり、ペットと暮らすことに飼い主がしっかり責任を持たなければいけないという環境は諸外国と変わりません。また、マイクロチップの有益性から義務化へ向けた検討もされています。
普及率について
イギリスが2016年から義務化するなど、諸国の動きとともに世界的な普及率は高まっていますが、日本ではまだまだこれからというのが現状です。残念ながら、日本での装着率は1割に満たないと言われています。
マイクロチップを装着する主なメリット5つとは?
普及への動きが高まるマイクロチップですが、装着するとどんなメリットがあるのでしょうか。
1度の装着で一生使える
マイクロチップの外側には、鉛を含まない生体適合ガラスが使われています。生体適合ガラスには、体内に長い間入っていても劣化しない、毒性や発がん性がないなどの安全衛生上配慮されているという特徴があります。
日本獣医師会のホームページでは、日本国内でマイクロチップを装着したことによる副作用やショック症状の報告は1件も寄せられていないとあります。また皮膚に埋め込むため、汚れや紛失の心配もありません。
マイクロチップが皮下で動くのを防ぐため、表面に特殊な加工が施されているのも安心できます。
災害時、迷子、盗難など、はぐれてしまったとき
愛犬とはぐれてしまったときにマイクロチップを装着していれば、愛犬が戻ってくる可能性が高まります。
特に災害時では、首輪や名札などの身につけるものは、汚れてしまう、外れてしまうなどのリスクがありますが、マイクロチップは体内に装着するためそのような心配がありません。
また、愛犬が迷子になり保護された際にマイクロチップがついていれば、野良犬ではないということが示せるため、殺処分を防ぐことができます。
愛犬と海外に行くとき
入国するための条件として、マイクロチップの装着が決められている国があります。海外へ渡航する場合は、事前に日本にある各国の大使館や、行く予定のある国の動物検疫機関に確認してください。
義務がない国でもマイクロチップを装着していれば、慣れない土地でもしものことがあっても安心ですね。
体温を測れるマイクロチップもある
マイクロチップのなかには、体温を測れる機能が付いているライフチップバイオサーモという種類があります。犬の体温は、一般的に肛門から体温計を入れて測りますが、なかにはその測定行為を嫌がる犬もいます。
マイクロチップを装着していれば、専用の機器で読み取るだけで測定が可能なため、犬や獣医師に負担をかけることがありません。
ペット保険が割引になる場合がある
マイクロチップを装着していると、保険料が割引になる場合があります。この割引はすべての保険会社で行われているわけではないため、あらかじめ調べておきましょう。
マイクロチップを装着するデメリット3つと注意点2つ
マイクロチップ装着にはたくさんのメリットがあることがわかりました。しかし、懸念すべきところもあります。次はデメリットと注意点を見ていきましょう。
体に異物が入るということ
これはマイクロチップ装着を考えたとき、飼い主が真っ先に心配することではないでしょうか。上記のとおり、大前提としてマイクロチップには安全性や耐久性に優れた素材が使われています。
そのため、副作用の心配はほとんどありません。しかし、外国ではマイクロチップを挿入した部位に悪性の腫瘍が発生したという報告や、神経性の障害を引き起こすという報告も無いわけではありません。
その他にも皮下出血や感染、異物が入ることによる炎症反応やアレルギー反応を起こす可能性があります。
MRIの画像が乱れる場合がある
マイクロチップの影響でMRIの画像が乱れる場合があります。その際、犬の体やマイクロチップのデータへの影響はないとされています。レントゲンやCTスキャンでの問題はありません。
マイクロチップリーダー(読み取り器)でないと確認できない
マイクロチップを読み取る機械は、動物病院や保健所、動物保護センターなどにあります。そのため愛犬が迷子になったときは、犬を保護した第三者がこれらの場所に連れていき、そこでデータを照合させることになります。
そのような場所が自宅の近くにない場合は、見つかるまでに時間がかかってしまう、見つかったときに飼い主がすぐに行けない場合があるなどの影響が出てしまいます。
迷子や盗難の完全な防止対策にはならない
マイクロチップにはGPS機能がついていません。愛犬が迷子になっても、居場所を確認したり、後を追ったりすることはできないのです。
もしもの場合の対策にはなりますが、いなくなってしまった場合には、データを照合できる環境にたどり着くまで待たなければなりません。
登録情報の書き換えを忘れやすい
住所や電話番号、名前が変わったときには情報の書き換えが必須です。しかし、実際は忘れてしまいがちな飼い主が多いという問題もあります。
登録情報がそのままでは、マイクロチップの装着が無意味なものになってしまいます。
マイクロチップはどこにつける?装着の流れをご紹介
マイクロチップを装着して機能させるまでの流れを見ていきましょう。
どうやってつける?
マイクロチップの装着は医療行為なので、獣医師が行います。注入器を使って犬の背側頚部(背中側の首より少し下の左側の皮下)にマイクロチップを注入します。
その際に使う注射針は、通常のものよりも少し太いものになります。通常は麻酔や鎮痛剤なしで行いますが、通常より太い針を使うので痛みに敏感な犬や病院で興奮してしまう犬は、獣医師と相談して必要であれば麻酔をしてもらいましょう。
いつからつけられる?
犬の場合、生後2週齢からつけることができます。犬の健康状態などを考えて、装着のタイミングは獣医師に相談してみましょう。
値段はどのくらいかかる?
マイクロチップ装着のための値段と、AIPO(動物ID普及推進会議)のデータベースへの登録料がかかります。装着料は動物病院によって異なりますが、3,000円~5,000円が目安になります。
県や市によっては装着費用を一部補助する制度があるので、ぜひお住まいの地域を調べてみてください。これら制度を受ける際は、行政に協力する病院に行って装着をすることになります。
手順や協力病院については、行政のホームページを参考にしてください。また、動物病院によっては協力会社が装着料を負担するため、データの登録料のみで装着できるところもあります。
データを登録しよう
マイクロチップには15桁の数字が記録されていますが、この数字には飼い主の個人情報がないため、これだけでは飼い主の特定ができません。マイクロチップとは別に、詳しいデータを登録する必要があります。
動物病院で登録申込書をもらいAIPOに送ることで、15桁の番号と個人情報が照合できるようになります。
- 飼い主の情報
- 犬の情報
- マイクロチップのID番号
- 獣医師の情報
氏名・住所・電話番号・FAX番号・Eメール・緊急連絡先
氏名・生年月・性別・去勢、避妊の有無・3桁の種類コード・2桁の毛色コード
申込書を送り、登録料1,000円を振り込みます。装着料のなかに登録料が含まれている場合もあるので、動物病院で確認してみてください。登録内容に問題がなければ、申し込んでから2~3週間で登録が完了します。
登録データを変更する場合
連絡先が変わったときや飼い主が変更になったとき、犬が亡くなったときには忘れずに変更を申請をしましょう。登録の変更に費用はかかりません。
登録内容の変更の仕方
飼い主が変更した場合には新しく登録完了通知が届きますが、その他の変更で完了通知は届かないため、覚えておきましょう。
犬のマイクロチップに関して理解を深めることが大切!
よりよい判断をするために、まずはマイクロチップについてきちんと知ることが第一です。マイクロチップ装着には賛否がありますが、愛犬と飼い主を繋ぐ手段のひとつであり、万が一に備えて装着を選ぶ飼い主が増えています。
愛犬のためにも、安易に決断する前に、世間の動きやあらゆる情報を集めながら、愛犬にとってどうするのがいいのか一度考えてみてはいかがでしょうか。