暑い夏に体調を崩しやすいのは、人間だけではなく犬も同じです。犬も夏バテをすると、様々な症状が見られます。飼い主は、しっかりと暑さ対策や体調管理をしてあげる必要があるのですが、具体的にどのような対策を行なえば良いのか、その方法や便利グッズなどを紹介します。
目次
犬が夏バテしてしまう3つの原因
犬が夏バテをしてしまうのには、大きく分けて3つの原因が考えられます。それぞれを理解することが、夏バテ対策の第一歩となるので、しっかり覚えておきましょう。
発汗による体温調節が難しい
人間は、汗をかいて体温調節をするために汗腺が体中にあります。暑さにあわせて発汗量が変わり、正常な体温を保とうとしますが、犬には、この汗腺が舌と肉球にしかありません。
運動したときや、暑い時に舌を出して荒い呼吸をしているのはこのためです。これは、犬が舌にある汗腺から汗を出し、体にこもった熱を外に逃がそうとするための行動です。しかし、汗腺が人間より少ない分、体温調整がうまくできず夏バテを引き起こす可能性があります。
暑さによる体力の消耗
体温調節が難しいこともあり、犬は暑さによって大幅に体力を消耗します。体中が体毛に覆われているため、寒さには比較的強いのですが、暑さには弱い犬が多い傾向にあります。
毛を短くカットして熱がこもるのを防いだり、暑い環境で育ったことで暑さに慣れていたりする犬もいますが、毛が多い犬や、室内で快適な環境で過ごしてきた犬は、外の暑さに対応するのが難しくなります。こういったことから、体力を著しく消耗してしまい、元気がなくなってバテてしまうのです。
食欲低下によるエネルギー不足
暑い夏に食欲が落ちるのは、人間も犬も同じです。しかし、しっかり食べなければ栄養が摂れず、エネルギー不足になり、体の不調をより悪化させてしまう恐れがあります。この悪循環が、夏バテを重症化させる原因と言えます。
犬種によって夏バテしやすさが違うってホント?
汗腺が少ないのは、どの犬種にも共通していることです。そのため、基本的に体に熱がこもりやすく、毎年のように夏バテをしてしまう犬もいるでしょう。
しかし、犬種によっては夏バテしにくい犬もいます。どんな違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
夏バテしやすい犬種
夏バテをしやすいのは、ダブルコートの犬と、短頭種の犬です。
ダブルコートというのは、長い上毛の下に下毛がある、2層構造の体毛のことを指します。ダブルで毛に覆われているため、寒さには耐性がありますが、その分暑さには弱い傾向があります。主な犬種をいくつか紹介します。
夏バテしやすい犬 ダブルコートの犬
- ゴールデンレトリーバー
- ウェルシュコーギー
- 柴犬
- シベリアンハスキー
この他にもたくさんの犬種がありますが、日本ではダブルコートの犬種が多く飼われています。換毛期には、ブラッシングを念入りにしてあげることで体感が下がるとも言われているため、飼っている人は気を付けて見てあげる必要があります。
夏バテしやすい犬 短毛種
そして、同じように暑さに弱い犬種として短頭種が挙げられます。これは、頭蓋骨に対して鼻の長さが短い犬のことを指します。口の中の空間が狭くなってしまうことから、呼吸がしづらくなり、舌の汗腺で熱を逃がしにくくなることが考えられるのです。短頭種の犬種をいくつか紹介します。
- シーズー
- ブルドッグ
- パグ
- チャウチャウ
この他にも様々な犬種がありますが、人間にとってはそれほど熱いと感じられない環境でも、一生懸命熱を逃がそうと呼吸が早くなる様子が見られたら、熱がこもらないような工夫をしてあげましょう。
夏バテしにくい犬種
基本的に、夏バテをしにくい犬種などいないと理解しましょう。汗腺数が少ないのはどの犬種も同じですし、犬は古来寒い国で生きてきた動物なので、暑さには慣れていない構造をしています。
そのなかでも、比較的汗を発散させやすいのが、シングルコートの犬種です。ダブルコートの犬種とは違い、覆われているのは上毛のみなので、その分体内の熱を逃がしやすく、冷却対応なども感じやすい傾向があります。シングルコートは、下記のような犬種が挙げられます。
- パピヨン
- プードル
- アフガンハウンド
- ヨークシャーテリア
シングルコートの中には、毛が短い犬と長い犬がいますが、より短い方が熱を逃がしやすいので、夏バテしにくいと考えられます。
犬に見られる夏バテの症状とは?
犬は、自分から「暑くてつらい」とは言えません。そのため、飼い主側で愛犬の異変に気付けるように、夏バテだと考えられる症状を事前に理解しておくことが大切です。基本的に人間の症状と同じですが、代表的な症状を3つ紹介します。
食欲がなくなる
普段はよく食べる犬が、食事を残すようになったり、餌入れに寄り付こうとしなかったりするなど、明らかに食欲がない様子は夏バテの可能性があります。
食欲不振は、様々な病気の症状としても挙げられますが、ドッグフードは嫌がっても、水や冷たいものは食べようとするという場合、特に夏バテの可能性が高いと言っても良いでしょう。
元気がない
暑さで体力を消耗していたり、体がだるいと感じたりすることで元気がなくなります。日中も寝ころんでいることが多かったり、散歩で歩くスピードが遅いなどの症状が見られると、夏バテの可能性があります。
下痢や嘔吐をする
気分が悪くなり、食べても下痢や嘔吐を繰り返す場合があります。また、室内犬の場合は、クーラーがきいた室内の温度と外の温度の差で体調を崩してしまい、お腹を下すことも考えられます。
夏バテだけじゃない!犬が熱中症や脱水症状を起こしたときに見られる症状
暑い夏に夏バテをする犬も多いのですが、なかには、熱中症や脱水症状などを起こす犬もいます。夏バテとは少し症状が違うので、飼い主は、その違いに気づいて対処しなければなりません。では、症状や対処法にどういった違いがあるのかをそれぞれ見ていきましょう。
熱中症
熱中症は、熱に感作することで症状が悪化します。犬だけではなく、熱中症で命を落とす人もたくさんいるので、早急に対処しなければなりません。熱中症になった犬の症状には、以下のようなものがあります。
- 元気がなく、ぐったりしている
- 舌を出して苦しそうな呼吸をしている
- 多量のよだれが出る
- 下痢や嘔吐
- 体温が上がる
これらは夏バテでも見られる症状なのですが、熱中症の場合、進行すると下記のような症状も出始めます。
- 痙攣
- 意識を失う
- 血便や血尿
- チアノーゼ
熱中症は、初期段階だと夏バテとの見分けが難しく、様子を見る人も多いでしょう。涼しい場所に移動させたり、冷たいタオルで体を拭いてあげるなどの対処で回復する場合もありますが、進行してから症状が出ると、一刻を争う事態になっている場合もあります。
いつもと少し違うと感じたら、すぐにでも病院に行って診てもらいましょう。
脱水症状
体内の水分量が減る脱水症状は、十分な栄養や酸素を供給しづらくなることから、様々な機能に支障が出る恐れがあります。
また、尿中の水分も減ってしまうので、尿の成分が凝縮されて結石ができる可能性があります。しかし、夏バテと脱水症状をどう見分けたら良いのか分からないという人も多いでしょう。脱水症状と考えられるのは、下記のような症状が挙げられます。
- 目や口が渇いている
- おしっこの回数や量が少なく色が濃い
- 皮膚の張りがない
これらは、体内の水分不足による症状だと考えられるので、脱水症状を疑いましょう。水分補給をしてしばらく休めば、元通りに元気に動き回る犬もいます。
犬の夏バテ対策3選!
夏バテは、犬にとってもつらいものです。年々暑さが厳しくなっている日本では、より犬たちの健康を脅かす危険性も高まるでしょう。
人間に比べ体温調整が難しい犬には、できるだけ快適に過ごせるように対策を行なうことが大切です。そこで、簡単にできる夏バテ対策を3つ紹介します。
過ごしやすい環境にしよう
過ごしやすい環境づくりは、夏バテを防ぐための第一歩だと言っても過言ではありません。室内犬か屋外犬かで環境対策は変わるので、犬の飼い方にあわせて環境を整えてあげましょう。
室内犬
犬にとって過ごしやすいのは、室温26~28℃、湿度50~60%程度です。これを維持することで、暑い夏でも快適に過ごせます。
クーラーが使える室内であれば、快適な温度調整がしやすいでしょう。しかし、部屋が広いと、場所によって温度差が生じるので、扇風機を使って部屋中を一定の環境に保てるよう、空気を循環させることも大切です。
屋外犬
屋外の場合、クーラーがないので温度調整が難しくなりますが、小屋を日陰に移動させたり、地熱が伝わりにくいようにすのこを敷いたり打ち水をするなどの工夫をするだけでも、暑さを和らげることができます。
ここで注意したいのが、エアコンの換気扇です。夏にクーラーを使っていると、部屋の中は涼しくなりますが、空気の捌け口になる換気扇周辺は、外の暑さと相まって熱風を生じる可能性があります。その近くに犬がいると、余計に暑さを感じさせることになります。
水分補給を小まめにさせる
水分補給をすれば、少ない汗腺からでも汗の発汗を促したり、体内の温度を下げたり、脱水症状を防いだりできます。犬は一度にたくさんの水を飲めないので、小まめに与えるようにしましょう。
また、屋外犬の場合、外に水を置きっぱなしにしていると、暑さで水の温度が上がってしまいます。定期的に水を入れ替え、冷たい水を飲ませてあげることが大切です。
水道水を与えるのも良いのですが、飲み水にも対策を講じたいという方はペット用の飲料水を試してみるのもおすすめです。どういったものがあるのかを2つ紹介します。
ハイポトニック飲料
ペット用の経口補水液で、犬が好む味付けにされています。夏バテで何も口にする元気がない犬でも、嗜好性があるハイポトニック飲料であれば、好んで飲んでくれる可能性があります。
電解質や糖質を補い、腸内での吸収が早いので、脱水の予防にもなります。
アイソトニック飲料
ハイポトニック飲料よりも吸収が遅いのですが、同様に脱水予防に役立ちます。人間が飲むスポーツ飲料と似ていますが、犬に飲ませるのは、必ずペット用に販売されているものにしましょう。
人間と犬では、体液の電解質組成が異なるため、望む効果が得られない可能性があります。また、人間が飲むスポーツ飲料は、犬にとって塩分と糖分が多いため、逆に体調を悪くしてしまう危険性も考えられます。
食べやすい食事にしよう
夏バテで普段よりも食欲が落ちてしまうのは、犬だけではなく人間にもよくあることです。無理に食べさせるのは余計に気分が悪くなってしまう可能性があるためおすすめできません。
しかし、食欲がないからと言って食べないでいると、栄養不足による体調不良を招く可能性があるので、食欲がない愛犬に、どうすれば食べやすいのかを考えてあげることが大切です。できるだけ犬目線で食べやすいようにする工夫をいくつか紹介します。
食いつきの良いドッグフードにする
ドッグフードには、食いつきを良くするために嗜好性を高くして作っているものがあります。犬にとって美味しいと感じる成分が多く含まれていることで、食欲がなくても食べてくれる可能性があるので、夏バテをしているときだけ替えてみるというのもひとつの手段です。
食べやすいように軟らかくする
歯垢や歯石がたまりにくいようにするために、しっかり噛む必要がある硬めのドッグフードがあります。食欲がなく、倦怠感があるときに歯ごたえのあるドッグフードは、食べるだけでも疲れてしまうので、食べやすくしてあげましょう。
軟らかいドッグフードに切り替えたり、ぬるま湯でふやかすことで、食べやすくなり、食が進む可能性があります。消化もしやすくなることで、胃の負担も減るため、ぜひ試してみてください。
水分が多い食べ物を与える
水分が多い食材は、食べやすいだけではなく、栄養と一緒に水分補給もできるので一石二鳥です。食が進まないときは、トマトやキュウリなど、水分量が多い食べ物を与えてみましょう。
スイカやメロンを犬に食べさせても良いのですが、食べ過ぎは糖分過多になる可能性があるので、与える量には注意が必要です。
夏バテ防止グッズ5選!
夏バテ防止になる便利なグッズがたくさんあります。これらを駆使することで、より快適に暑い季節を過ごせるようになるでしょう。その中でも、特におすすめしたい商品を5つ紹介します。
マルカン 涼感ソフトジェルマット
電気を使わない省エネ商品です。保冷剤などの冷たさとは違い、自然な冷たさを感じられるので、犬の体を冷やしすぎる心配もありません。吸熱素材で、犬が持つ余分な熱も吸収してくれます。どんな犬種でも使えるように、様々なサイズがあり、折りたたんでカバンに収納することも可能なので、お出かけのときにも使えるのも嬉しいですね。
マルカン ひんやりお散歩ベスト
背中に着せ、首とお腹にあるベルトをとめるだけの簡単な着脱ベストです。これを着せることで、太陽から降り注ぐような熱や、地熱から犬を守ります。また、水につけて洗えるので、いつでも清潔に使えます。
愛犬の熱中症チェッカー
夏は、時間帯によって気温が大きく変動します。暑いときは路面温度が50~60℃にもなり、日が落ちた夜になれば、地熱もそれほど高くはありません。散歩をしやすい時間帯を見極めるために役立つのが、この熱中症チェッカーです。熱中症に対する警戒度を4段階で教えてくれるので、本当に犬を散歩に連れ出しても大丈夫かを事前に判断できます。
犬用無添加おやつ クッキー&クリームアイスクリーム
犬用のおやつを販売している帝塚山WANBANAの商品です。馬肉を使用しており、添加物を一切使用していないので、安心して犬に食べさせてあげられます。冷たいアイスクリームを食べることで、体内からダイレクトに温度を下げることで、熱がこもるのを防げるでしょう。しかし、一度にたくさん食べさせると、お腹を冷やして逆効果になるため、食べさせる量には注意が必要です。
クレート クーリングファン
クレートやケージにつけることができる小型の扇風機です。引っ掛ける場所があれば、車内や屋外に置く小屋などにも装着が可能で、空気を循環させて快適な環境を作り出します。
夏バテがひどいときは医師の診察を受けよう
夏バテは、多くの犬に見られますが、重症化すると様々な弊害を及ぼす可能性があります。そのまま衰弱して命を落とす犬もいるため、長引く前に病院で診てもらうことも大切です。
愛犬の様子を伺いながら、2週間をめどに受診を検討しましょう。犬の症状にあった適切な対処法を教えてもらうこともできますし、治療を受けることで、回復する犬もいるでしょう。
愛犬の夏バテ予防をして、季節の変わり目も快適に乗り切ろう!
夏は、天気が良い中で走り回って遊んだり、プール遊びをしたりなど、犬にとっても様々な楽しみ方ができる季節です。
しかし、夏バテで元気をなくしてしまうと、せっかくの夏も楽しめないでしょう。昨今の日本は、暦上の夏が過ぎても日によってまだまだ気温の高い日が続いています。
特に季節の変わり目は、気温変化が激しいため、人間同様に犬も体調を崩しやすい季節といえます。愛犬が暑い夏を乗り切るためには、飼い主の理解と対応力が必要不可欠です。
犬が自力で体調管理をするのは難しいため、しっかりと愛犬の様子を観察し、快適な毎日が送れるようサポートをしてあげましょう。