犬は足が丈夫で、元気に走り回っているという印象を持つ人が多いと思いますが、飼い主が気づかないうちに骨折していることがあります。そこで、犬が骨折した場合の症状について飼い主が把握し、原因と対処法を正しく知っておくことが必要です。骨折の状態がひどいと手術になる場合もあるので、愛犬の様子をしっかり見ておきましょう。
犬が骨折した場合の気になる症状は?
犬が骨折した際、どのような症状が現れるのでしょうか?症状について詳しく知っておき、愛犬に異変がないか様子を見ておきましょう。
骨折を起こしている部位が痛む
骨折しているとき、痛みがやってくることが多いです。手や足の一部を痛そうにしている、動かしにくそうにしている、触ろうとしたら避けるなどの異変を感じたら、骨折していないか確認する必要があります。
この痛みに関して、犬は飼い主に直接伝えることができません。痛みをうまく表現することができないため、早く飼い主が異変に気づいてあげることが大切です。抱っこしようとしたら怒る、散歩に行きたがらないといった変化があったら、体のどの部位の様子がおかしいか探ってみましょう。
骨折していると腫れる場合もある
骨折していると、痛みだけでなく腫れる場合もあります。明らかにいつもより一箇所だけが腫れて膨らんでいるといった状態を確認したら、骨折の可能性があります。
腫れているだけでなく、動かしにくそうにしていたら、早めに動物病院へ連れていきましょう。骨折したことによって患部が腫れてしまうことがあるので、いつもと違う様子を確認した時点で早めに対処したいです。
歩行障害が出ることもあるので要注意
骨折によって、歩行障害が出ることもあるので注意しましょう。足を引きずるようにして歩いている、ケンケンしながら歩くといった動作で動いている場合には、骨折から歩行障害が現れている可能性が高いです。
このとき犬は、骨折しているのに動こうとするため、いつもとは違う体の動かし方をします。このような歩行障害が出ているかどうか確認を行ないながら、愛犬が骨折しているかもしれない部位の様子を見ておきましょう。
神経麻痺が起きるケースもある
骨折は骨が折れることから、腫れや痛み、歩行障害といったトラブルを引き起こしますが、それだけでないので注意が必要です。場合によっては、神経麻痺が起きることがあります。特に、骨折した部位が頭や背骨である場合に、この神経麻痺という症状は現れやすくなります。
大事な神経が通っている場所を骨折したことによって、麻痺という状態に陥ってしまうのです。神経が麻痺してしまうと、犬自身気づかずに過ごしてしまうことも多いため、飼い主が小さな異変にもいち早く気づいてあげることが大切です。
全く痛がらない場合もある
骨折の度合いや箇所によっては、全く痛がらないこともあります。一般的には痛みを伴うとされている骨折ですが、一概にそうとは言えないという点を理解しておきましょう。
全く痛がらないけれどいつもより歩きにくそう、手足の一部に力が入っていない感じがするといった症状を発見した場合には、動物病院で診察を受けましょう。
なかなか痛がらないことからそのまま過ごしてしまうことがありますが、念のため検査をしてもらうようにしましょう。
犬が骨折する原因3つ
犬の骨折は、症状にレベルがあるため、飼い主がまめに様子を見てあげることが大切です。そこで、犬が骨折してしまう原因についての知識も深め、愛犬をそのような状況におかないように心がけましょう。
病気によるもの
犬の骨折は、病気によって生じていることがあります。たとえば、骨に腫瘍ができているとき、その腫瘍によって骨の組織が傷つけられる関係でもろくなり、骨折しやすくなります。腫瘍ができる部位によっては骨折を招くリスクが高まるので、注意が必要です。
また、老化に伴って骨密度が低下して骨が弱くなっていきやすいです。その結果、骨折を起こしやすくなります。また、骨密度の低下だけでなく、ホルモン異常が原因で骨折を起こすこともあるので気をつけましょう。
骨折を繰り返す、まだ若いのに骨折しやすいといった状態が見られたら、病気が関係しているかもしれません。犬の病気と骨折の関係についても知っておくとよいでしょう。
交通事故などによる衝撃
骨折の原因として一番多いのが、交通事故による衝撃です。交通事故の場合、車やバイク、自転車などと犬の体がぶつかると、瞬時にかかる負荷は非常に大きなものになります。その結果、細い足を持つ犬は簡単に骨折してしまいます。
また、交通事故以外では、高いところから足を滑らせて落ちてしまった、他の動物に噛まれて骨が折れてしまった、ドアに挟まれたことにより骨折してしまった、というケースもあります。
毎日何気なく過ぎていく生活ですが、犬が骨折をしてしまう危険は常に潜んでいるのです。そのことを理解したうえで、愛犬を危険にさらさないように過ごしましょう。
栄養不足によって骨折する場合もある
犬の骨折は、交通事故や病気によって起きるだけでなく、栄養不足によって生じることもあります。栄養バランスを考慮せずに適当にフードを与える、おやつをたくさん与えてしまうといった生活が続くと、犬の体は栄養不足になってしまいます。
カルシウムやビタミンDなどが不足することで、どんどん骨が弱くなってしまいます。カルシウムとリンのバランスが崩れることで脆い骨にもなりやすいので、ドッグフードを選ぶ際には栄養面を重視しましょう。
犬の骨折に正しい対処法は?
犬が骨折してしまっているとき、どのように対処すればよいのでしょうか?正しく対処するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
骨折している部位に負担をかけないようにする
まず、骨折している部位がわかったら、そこに負担をかけないようにして過ごす必要があります。骨折している部位が足である場合には、横になるときの体勢に気をつけるようにしましょう。
また、痛みがそれほど出ていないとき、犬は自分で体を動かそうとします。歩こうとして、骨折している部位に力が加わることもあるので、無理をせずゆっくり休ませるようにしましょう。体の一部を動かしにくそうにしているなと感じた時点で、その部位に負担をかけないように対処してあげることが大切です。
フードを見直してみる
犬の骨折は、栄養不足によって起きる場合もあります。そこで、フードの見直しをしてみましょう。ドッグフードにはさまざまな種類があり、栄養面を考慮して作られたものがたくさんあります。愛犬が喜ぶ味で、栄養面についても納得できるフードを選んで、愛犬の健康を維持しましょう。
また、栄養素をバランスよく配合しているだけでなく、添加物の有無も確認しましょう。毎日食べるフード、できる限り高品質で愛犬の健康を維持してくれるものがベストです。
出血している場合はガーゼで止血を
骨折によって出血している場合は、すぐに清潔なガーゼを使って止血を行ないましょう。その際に、出血している部分をきれいに拭いておくことをおすすめします。出血している部分にガーゼを当てて何重かに巻きつけましょう。
骨折によって骨のバランスが不安定になっているようだったら、新聞紙やダンボールを使って折れた部分を支えるように固定しましょう。そうすることで不安定になるのを防ぐことができ、そのままの状態で病院に向かうことができます。
もしものときに備えて、いつも清潔なガーゼは常備しておくと安心です。犬の骨折は、いきなり発症することもあります。そのため、あらかじめ応急処置に活用できるグッズ(添え木、ガーゼなど)は揃えておきましょう。
応急処置を終えたらすぐに病院へ
骨折してしまったかもと思った際の応急処置が終わったら、速やかに動物病院へ向かいましょう。最低限の応急処置が終えた時点ですぐに向かって診察を受けることができれば、症状が悪化するのを予防でき、適切な処置を受けることができます。手遅れになってしまうといけないので、少しでも早く専門医に診てもらいましょう。
緊急事態のときに駆け込むことができるかかりつけの動物病院を見つけておくと、何かあったときにも安心ですね。
犬の骨折は病院でどのような治療が行なわれる?
犬の骨折、応急処置を終えて病院に向かうという流れのあと、病院ではどのような治療が行なわれるのでしょうか?
レントゲンを撮って詳細を確認する
まず状態を確認するために、レントゲンを撮ることが多いです。レントゲン検査を受けると、どこの部位がどのように骨折しているのか、状況を確認できます。
レントゲン検査をすることで、骨折以外の気になる症状などを見つけるきっかけにもなるので、まずは詳しい検査から行なう病院が多いです。
手術ではプレート法や創外固定法が用いられる
骨折による手術が必要になった場合、骨折の状態によって内容が異なります。手術や治療内容については、以下のような種類があります。
- 外固定法
- 創外固定法
- 内固定法
いわゆるギプスで骨折した部位を固定します。ギプス以外に、添え木を使った固定法が用いられる場合もあります。
麻酔を使ったりといった身体面に大きな負荷がかかることはありませんが、しばらくの間は体が動かしにくいという日が続くでしょう。
添え木などではなく、金属で皮膚の外側を固定する方法が創外固定法になります。この創外固定法は、皮膚から骨が出てしまっているときに選ばれることが多い治療法です。
創外固定法の場合は、毎日皮膚から出ているピン部分を消毒しなければいけないという特徴があるので、ケアの仕方などをきちんと聞いておく必要があります。
皮膚の内側にピンやプレート、ネジなどを埋め込む方法が内固定法になります。部品を皮膚の内側に埋め込むことになるので、大きく切開することになる可能性があります。
手術を終えた翌日から歩くことができるものの、切開による傷が修復するまでは体に負担がかかるでしょう。
外固定法や創外固定法に比べると、内固定法は大きな手術という印象も受けます。
このように、犬が骨折してしまった場合、その状態に応じていくつかの治療法があります。愛犬にできるだけ負担をかけずに骨折を完治していくために、獣医師と飼い主が話し合って一番よい方法を選択するようにしましょう。
術後の後遺症は大丈夫?
骨折の治療として手術を受けた場合、術後の後遺症の心配はしなくても大丈夫なのでしょうか?犬の骨折に限らず、何事においても早期発見が重要です。その中で発見と治療が遅れた場合、後遺症が残ってしまう恐れがあるので注意が必要です。
後遺症として、歩きにくそうにしている、骨折した部位だけ骨が変形したままになり立ったり座ったりといった動作がしづらくなるなど、日常生活に支障をきたす問題もあります。
骨折して日数が経過してからの治療になると、後遺症が残るリスクが高まります。後遺症を残さずまた元気な姿に戻るためにも、愛犬の様子には敏感になっておきましょう。早期発見によって症状の悪化を予防できるだけでなく、後遺症も残さずにすみます。
手術にかかる費用について
犬の骨折によって手術が必要になった場合、気になるのが費用でしょう。現実問題、骨折の治療や手術にはとてもお金がかかります。
手術の費用は平均40,000~60,000円程度になっており、その他レントゲン検査に5,000円ほど、血液検査が2,000円ほどと費用が発生してきます。
もしも、手術のあと入院することになったら、入院費も発生します。小型犬で見てみても、1週間でおよそ15,000円となっているので、犬種によってはもう少し料金が加算される可能性が高いです。
このように、手術や治療に関してはまとまったお金が必要になるので、骨折の可能性が高くなると治療費についてもきちんと確認しておきましょう。
最近はペット保険に加入する人も増えているので、保険を利用すればもう少しリーズナブルな料金で治療を終えることができるでしょう。
犬の骨折は未然に防ぐことと正しく対処することが大切
犬の骨折は症状が悪化すると、治療や手術が大変になります。日頃から骨折のリスクを伴う交通事故や衝撃などに気を付け、飼い主が愛犬の安全を確保するよう心がけましょう。
未然に防ぐことで、痛みや手術による体への負担などをかけずにすみます。愛犬が骨折で痛い思いをしないように、毎日きちんと様子を観察しておくことも飼い主の役目と言えるでしょう。