愛犬を病気から守るために行なう予防接種は、非常に重要なことのひとつです。しかし、犬の体調や体質を考慮して行わないと副作用により命を落としてしまう危険性もあります。獣医さん任せにしてしまうのではなく、愛犬に予防接種を受けさせる前にワクチンの違いや副作用の症状などを飼い主さん自身が知っておくことも大切です。
目次
犬のワクチン接種
ワクチンの種類と費用
犬のワクチンには接種義務がある狂犬病ワクチンと、予防のために任意で接種する混合ワクチンの2種類があります。ワクチンの費用は製造しているメーカーで違いがあることを知っていますか?
下記は、ワクチンの種類別で予防できる病気と大まかな費用です。参考にしてみてください。
接種義務があるワクチン
狂犬病のワクチンは接種が義務付けられています。費用はおおよそ3,000〜4,000円です。
初回の場合は、別途登録料および鑑札交付手数料で3,000円程がかかります。
任意接種の混合ワクチン
混合ワクチンは一回の接種で複数の病気を予防することを目的としており、5種、8種、10種など数種類のワクチンを混ぜあわせています。
費用はワクチンの組み合わせやワクチンのメーカーによっても金額が違いますが、おおよそ5,000〜10,000円です。
また、混合ワクチンの組み合わせは、死亡率が高いウイルス予防のためのコアワクチンと、発症しても比較的症状が軽いウイルス予防のノンコアワクチンがあります。
コアワクチン
ジステンパーウイルス、アデノウイルス1型、アデノウイルス2型、パルボウイルス2型、狂犬病ウイルス
ノンコアワクチン
パラインフルエンザウイルス、コロナウイルス、レプトスピラ
なお、一般的によく接種されている混合ワクチンは5種と8種です。
成長の過程で違うワクチン接種の時期と回数
子犬の場合
混合ワクチン
- 1回目:生後45日〜60日
- 2回目:生後90日前後
- 3回目:生後120日前後
※ペットショップ、ブリーダーがすでに行なっている場合があります。
狂犬病ワクチン
- 混合ワクチン3回目から1ヶ月後
なお、子犬に短期間で複数回接種する理由としては、確実に免疫力をつけてもらうためです。
子犬は母犬から移行抗体(免疫力)をもらって生まれてきます。しかし、移行抗体の力は徐々に弱まり、早ければ8週齢あたりから自分の力で抗体を作るようになります。
その段階で1回目のワクチンを接種しますが、1回目ではうまく抗体が作られないことがあるため、2回、3回と接種を重ねて行なうのです。ちなみに3回目は、獣医さんの判断で接種しない場合もあります。
成犬の場合
狂犬病ワクチン
- 必ず年に1回
混合ワクチンも年に1回の接種を推奨されています。
老犬や妊娠中、持病を持っている犬の場合
狂犬病ワクチンよりも混合ワクチンは体への負担が大きいため、老犬や妊娠中の犬、持病を持っている犬の場合は注意が必要です。
獣医さんにしっかりと相談した上で、接種する時期を決めてください。
犬がワクチン接種することで予防できる病気
犬ジステンバー
致死率が90%と非常に高い病気です。
感染後に発熱が続き、ウイルスが全身に行き渡ると、結膜炎、鼻水、激しい咳、血便をともなう下痢が続きます。
また紅斑、水疱・膿疱、硬蹠症とよばれる、肉球が硬くなる症状が現れたときはさらに危険な状態です。
感染末期では神経系にウイルスが達して、痙攣や麻痺などの神経症状でたのち死亡してしまいます。犬ジステンバーに有効な治療法は今のところありません。そのためしっかりとワクチンを打って予防することが非常に重要となります。
犬パルボウイルス感染症
感染後に食欲不振、元気がなくなる、嘔吐、下痢、脱水症状などがみられます。
下痢は水っぽく臭いがきつくなり、血が混じってしまうことがあるため、日ごろから便の色には気をつけておきましょう。生まれたばかり=新生仔期の場合には、心筋細胞が破壊され突然死することもあります。
新生仔期を過ぎて感染した場合は敗血症になると同時に多機能不全にもなり、最終的には死に至ります。
体力や抵抗力があれば回復することもありますが、体力も抵抗力も低い子犬の場合は死に至ることが多いです。
犬伝染性肝炎
子犬に多い病気です。感染後に発熱、腹痛、嘔吐、下痢などの症状みられます。
1歳以下の子犬の場合は致死率が高く、急激な腹痛と高熱で虚脱状態になり、吐血や血便がでることもあります。こういった症状がでた子犬の場合の多くは、12〜24時間以内に死亡します。
なお、成犬の場合は感染していても何の症状も出ないことがあります。しかし、ウイルスを広げる恐れが十分にあるため注意が必要です。
犬伝染性喉頭気管炎
様々な病原体に単独、あるいは混合感染することで発症します。主な病原体は犬アデノウイルス2型感、犬パラインフルエンザウイルス、犬ヘルペスウイルス、気管支敗血症菌、マイコプラズマなどです。
感染後は、発熱や薄黄色い鼻水などの症状がみられます。症状は軽症で自然治癒しますが、二次感染で重症化し気管支肺炎になる場合もありますので注意は必要です。
犬コロナウイルス感染症
感染しても何も症状があらわれないことが多いです。しかし発症すると、食欲不振、嘔吐、下痢、元気がなくなるなどの症状がでます。
また、嘔吐や下痢が激しい場合は脱水症状になることもあります。致死率は低く、通常1週間程度で回復することが多いです。
しかし、犬パルボウイルスに混合感染することで回復が遅れたり、最悪死亡することもあります。
犬レプトスピラ感染症
感染後は急性の場合、食欲不振、倦怠感、発熱、嘔吐、血便、脱水、出血、口腔粘膜の潰瘍の症状が現れた後、腎不全や肝不全へと発展し、治療が遅れると2〜4日で死に至ります。
感染していたとしても上記のような症状が現れず、腎臓内に保菌していることもあります。感染している犬の尿から他の犬や人間にまで伝染することもあるため、注意が必要です。
狂犬病
狂犬病ウイルスに感染すると、水、風、音などが感覚器に刺激を与えることで痙攣を引き起こします。そして発症後は、ほぼ死に至ります。
日本は狂犬病ウイルスの撲滅に成功し、現在の日本国内での発症事例はありません。
しかし、世界ではアジア、アフリカを中心に毎年数万人が死亡している恐ろしい病気です。日本ではないからといって安心してしまわないようにしてください。
犬にワクチン接種を受けさせる前の注意点3つ
ワクチンの接種前の注意点
ワクチンは接種することが推奨されており、狂犬病の予防接種にいたっては法律で義務付けられているものでもあります。
しかし、犬の体調が悪いときなどに接種を行なうと、さらに悪化したり、最悪死に至るケースもあります。
愛犬の体調が悪い場合は獣医さんにしっかりと伝えて、無理せず接種時期をずらすなどの判断がとても大事です。また、老犬や妊娠中の犬も注意が必要です。
ワクチンの副作用
ワクチンの接種は愛犬を守るためのものですが、接種後に副作用がでてしまうことがあります。
副作用がでてしまった場合のよくある症状は下記のとおりです。
- 嘔吐・下痢
- 発熱・消化器疾患
- アナフィラキシー
予防接種の副作用でも特に多いのが下痢や嘔吐です。吐瀉物や下痢に血が混じっている場合は、すぐに動物病院に連れていきましょう。
また、小型犬の場合は副作用が出やすかったり、悪化しやすい傾向があります。
体がワクチンに対して拒絶反応を起こし、伴って発熱などの症状が現れることがあります。
発熱後は食欲不振、嘔吐、さらに水も飲めないほどに悪化し、さらには、脱水症状に陥ることもあるでしょう。
犬の体内に入ったワクチンを、体が異物として判断したことによるアレルギーです。
症状は様々ありますが、よくある症状としては急性アナフィラキシーと発疹の2つです。
急性アナフィラキシーは予防接種後、数分〜30分以内に起こります。処置が遅れた場合は、死亡することも十分に考えられますので、念のため予防接種後30分程度は動物病院に近い場所で愛犬の様子をしっかり観察しておくといいでしょう。
また、発疹の場合は30〜数時間後に症状が現れます。顔がパンパンに腫れてしまったり、全身に発心がでてしまったりとひどくなることもありますが、生命に関わることはありません。かゆみも伴いますが、ヒスタミンを抑える薬を注射すれば発疹も消え、かゆみもなくなるでしょう。
ワクチン接種後の運動やシャワー
基本的にワクチン接種後の当日は散歩も避け、数日は激しい運動やシャワーも避けて安静に過ごすようにしましょう。
なお、子犬の場合はワクチンを接種し、抗体ができるまで時間がかかりますので、それまでは周辺の犬やその他の動物への接触、草むらに入るなど、ウイルス感染に繋がりそうなことは避けましょう。
ただ、犬の社会性は生後2ヶ月〜4ヶ月で養われるといわれています。
その間に外の環境や人間に慣れておかないと、無駄吠えが多くなったり、警戒心が強くなりすぎたりすることがあります。
家以外での環境に慣らすために、歩かせずに抱いたまま散歩したり家族以外の人や地域に住んでいる犬を見せておくなど、感染のリスクを抑えた外出をすることをおすすめします。
犬のワクチン接種の時期について動物病院に相談してみよう
犬を飼う場合は、まず狂犬病の予防接種が必須となります。狂犬病の予防接種をしないことは、法律違反であり罰金刑が適用されますので気をつけましょう。
また混合ワクチンも任意ではありますが、愛犬を病気から守るための効果の高い手段ですので接種することをおすすめします。
しかし、ワクチンの副作用により命を落としてしまう危険性もありますので、予防接種の時期やワクチンの種類は獣医さんと相談してください。しっかりと検討したうえでワクチン接種をしましょう。