犬は人間の1億倍とも言われる鋭い嗅覚を持っています。臭いを正確に感知するためには、鼻が湿っている必要がありますが、鼻水が垂れるほどの湿りは病気の可能性もあり注意が必要です。今回は気をつけなければならない犬の鼻水の状態と、考えられる病気を紹介します。愛犬の鼻水の状態をチェックして、健康管理に役立てましょう。
目次
犬の鼻が湿っているのはなぜ?
犬の鼻の表皮には小さな溝がたくさんあります。この溝は鼻鏡(びきょう)と呼ばれ、臭い成分を吸着し、嗅覚の感度を高める働きをします。鼻鏡が湿っていることで臭いの成分を吸着しやすくなるため、犬は鼻を自分で舐めるなどして保湿します。
また、顔周りには水分を分泌する外側鼻腺や、涙腺があるため、これらの腺から分泌された液も犬の鼻を濡らす一因となります。
鼻鏡には温度を感じる働きもあり、犬は、鼻を湿らせいる水分の乾き方の差から風がどちらから拭いているかを瞬時に判断する能力を持つと言われています。
気をつけたい犬の鼻水6選
健康な犬の鼻は湿っていますが、注意しなくてはならない鼻水もあります。ひとつずつチェックしていきましょう。また、犬は体調が悪いときにしっぽを下げるため、鼻水の調子と合わせてしっぽの様子もチェックするとよいでしょう。
透明な鼻水が垂れる
鼻には、冷たい空気が直接肺に入らないよう、奥で空気を温める機能があります。その際、鼻水を分泌する細胞が活性化し、鼻水の量が増えるようです。透明な鼻水が垂れている場合はまず、愛犬を暖かいところへ移動させ様子を見ましょう。
また、ほこりなどのハウスダストが鼻の粘膜に付着すると、その異物を外に出しやすいように鼻水の分泌量が増えます。症状がひどい場合は家の掃除を徹底的に行なって、様子を見てみましょう。
鼻水が黄色や緑色
鼻水が黄色や緑色をしているときは膿が混ざっている可能性があります。外傷や口内のトラブルがないかをチェックしましょう。
鼻水に血が混ざっている
鼻水に血がまざっているときには、外傷が原因の場合と、鼻炎や鼻腔内腫瘍などの病気が原因の可能性があります。命に関わる可能性もあるため、早めに動物病院へ連れて行くことをおすすめします。
鼻水と一緒に目ヤニが出ている
鼻炎や副鼻腔炎になると鼻水と一緒に目ヤニがでる可能性があります。鼻水や目ヤニと合わせてくしゃみ・呼吸困難があれば早めに動物病院へ連れて行きましょう。
鼻水が垂れており、息苦しそうである
肺水腫や重度の肺炎など、命に関わる病気の可能性もあるため、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
鼻水がピンク色
鼻水がピンク色の場合も肺水腫や肺炎などの病気が考えられます。命に関わることもあるため、すぐに動物病院へ行くことをおすすめします。
犬が鼻水を出しているときに考えられる病気7つ
犬の鼻水の状態から、考えられる病気を7つ紹介します。
外傷
飼い主の見ていないところで顔面を家具や障害物にぶつけたり、散歩中に出会った犬とご挨拶をした延長上で喧嘩に発展したりすることで顔周りや鼻に外傷を負うと、鼻水に血が混ざる可能性があります。傷を探し、処置をしてあげましょう。
【犬の怪我の処置】
小さな傷であれば、自宅での処置のみで様子を見て問題ないでしょう。
ただし、傷口が深い場合や血が止まらない場合は、傷口から感染症を引き起こす可能性もあるため、早めに動物病院に連れて行くことをおすすめします。
鼻炎
細菌性鼻炎や、アレルギー性鼻炎などの鼻炎によって鼻血がでることもあります。鼻血と一緒に鼻からヒュー、ヒューと音がしたり、くしゃみが出ていたりしたら、動物病院に連れて行き、鼻炎の原因を取り除くようにしましょう。犬の鼻炎の種類は下記のとおりです。
アレルギー性鼻炎
花粉やハウダストなど様々な原因が考えられます。動物病院で適切な処置を受けましょう。また、愛犬が生活する環境を清潔に保つことも重要です。
リンパ球形質細胞鼻炎
犬や猫などの動物に多い鼻炎ですが、明確な原因は分かっていません。
主な症状は下記のとおりです。
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【リンパ球形質細胞鼻炎の主な症状】
- くしゃみ
- 垂れるほどの鼻水
- 粘液のある鼻水
- 血や膿が混ざった鼻水
命に関わる重症に繋がることはほぼないと考えられていますが、慢性的な鼻炎のため、快適な日常生活を過ごすためにも、動物病院で治療を受けることをおすすめします。
腫瘍性鼻炎
鼻・耳・喉は繋がっているため、その付近に腫瘍ができると鼻炎になることもあります。ガンなどの命に関わる病気である可能性もあるため、愛犬に原因不明の鼻炎が続いている際は早めに動物病院へ連れて行きましょう。
風邪
獣医学的には「風邪」という言葉はありませんが、特定の細菌やウイルスに感染することによって、鼻水やくしゃみ、咳など、風邪のような症状が出ることもあります。眠っているときに布団をかける、ケージの中にヒーターを用意するなどして、なるべく身体を温めてあげましょう。
気管支が炎症している場合も多く、呼吸に影響が出ることも考えられるため、2日ほど様子を見て、症状が改善しないようであれば動物病院へ連れて行くことをおすすめします。
歯周病
歯周病は歯垢中の細菌が歯や歯茎に増殖することにより、歯肉やセメント質・歯根膜・歯槽根などが炎症する病気です。歯肉からでた膿が鼻やのどに回ると、黄色い鼻水やくしゃみが出る原因となります。
歯周病は口内だけの症状に留まらず、顎の骨に穴が開いたり、心臓や肝臓などの臓器にダメージを与えたりと大きな病気に繋がる可能性があるため、早めに治療しましょう。
鼻の中の腫瘍
鼻の中に腫瘍ができると、鼻水に血が混ざることがあります。ガンの可能性もあるため、鼻水に血が混ざっている場合は早めに動物病院を受診しましょう。
鼻の中に腫瘍ができやすい犬種は下記のとおりです。
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【鼻の中に腫瘍ができやすい犬種】
- ミニチュア・ダックスフンド
- コリー
- シェットランド・シープドッグ
- ビーグル
呼吸器系の疾患
肺水腫
無色や、ピンク色の鼻水と一緒に、愛犬が息苦しそうな様子を見せている際は、肺水腫の可能性があります。肺水腫は本来空気が入る場所に水が入ってしまうため、常に水に溺れているかのような息苦しさになってしまうようです。
重度になると、鼻水と一緒に肺水腫で溜まった水が鼻から出てくる可能性もあるようです。命に関わる疾患のため、なるべく早く動物病院に連れて行き、治療を受けましょう。
肺炎
鼻水や咳・気管支の炎症などの症状を放置すると、肺炎になる可能性もあります。
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【肺炎を引き起こす主な原因】
- 犬ジステンパーウィルス
- アレルギー
- 異物の誤飲
- 刺激性のガス
- 刺激性の薬品
肺炎は呼吸器に支障を来たすため、重症化すると命を落とす危険性もあります。一刻も早く動物病院に連れて行きましょう。
犬の鼻水の原因を知って適した対策をしよう!
犬の嗅覚は人間の約1億倍と言われています。その優れた嗅覚には鼻の湿りが密接に関係しており、健康な犬は常時鼻が湿っているのが特徴です。
しかし、滴るほどの鼻水や、鼻水に色があるとき、他の症状が一緒に出ているときは病気の可能性もあります。動物の病気を素人が判断することは難しいため、いつもと様子が違ったら早めに病院へ連れて行ってあげましょう。とくに、呼吸困難が見られる場合は、一刻を争う事態である可能性も高いため、迅速な処置が大切です。
愛犬の鼻の状態は常をチェックすることで、異常が合ったときにすぐ気が付いてあげられるようにしましょう。