背が高く、優雅な印象があるボルゾイは、古くから多くの人々に愛されている犬種です。貴族の象徴として扱われてきた歴史から、どこか他の犬種と違う気高さを感じるのも納得ですね。そんなボルゾイに憧れ、飼ってみたいと思っている人も多いでしょう。今回は、ボルゾイの生態を明らかにするとともに、飼うときのポイントを紹介します。
目次
ボルゾイの特徴
ボルゾイは、ロシアが原産の大型犬です。具体的な特徴を、いくつか紹介します。
体格
まるでモデルのように背が高く、スレンダーな体格を持ちます。そのため、クールで優雅な印象が強く、「美人な犬と言えば?」と問われれば間違いなく名前が挙がる犬種のひとつでしょう。
一般的な体高と体重は、以下のとおりです。
体高
標準的な体高は、74.5~76.5cm程度ですが、80cmを超す子もたくさんいます。また、オスよりメスの方が、比較的小柄な傾向があるようです。後足で立ち上がると、人間と同じくらいの高さになると言われています。
体重
約25~45kgが標準で、個体差があります。しかし、一般的にボルゾイは細身なので、体が大きいわりには体重が軽いのが特徴です。
外見
鼻が長い、脚が長いなど、洋犬らしい特徴が豊富なボルゾイですが、そこから受ける印象は大きく2つに分かれるようです。
体が大きく怖いイメージ
体が大きいため、それだけでも人に威圧的な印象を与える傾向があります。また、鼻が長く整った顔をしているところも、犬の可愛らしいイメージとは少し異なりますよね。
「こんな大きな犬が、突然追いかけてきたり噛みついてきたりしたらどうしよう」という不安から、怖いと感じる人も多いようです。
被毛が長く優雅なイメージ
被毛が長いため、ふわふわと風になびく姿が実に優雅です。まるで、長い髪をなびかせる美しい女性のようですね。被毛が長い犬種はたくさんありますが、優雅さを感じさせるのは、ボルゾイの大きな体格があってこそだと言えるでしょう。
性格
ボルゾイは、様々な面を持つため、個体によって個性が出ます。それが面白いところでもありますが、飼育していくうえでは、飼い主との相性が重要となるため、ボルゾイがどんな面を持つのかを理解しておくことが大切です。
普段は落ち着きがあって優雅
基本的に、温厚で落ち着きがある性格をしています。飼育中も、庭やソファーでのんびりとしていることが多いため、活発に動き回るタイプではありません。そんな落ち着きのある姿も、優雅さを感じさせるポイントのひとつです。
動くものに狩猟本能を見せる
もともとは狩猟犬であったことから、本能的に、動く動物を追いかけたくなる衝動に駆られることがあります。
しかし、その本能を飼い主に向けることはないので、安心して飼育をしていただけますよ。ただ、ボルゾイと一緒に他の動物を飼っている場合は、少々注意が必要かもしれませんね。
知能が高く自分で考えて判断する力がある
頭が良く、自分で考えて行動する特徴があります。そんな姿が頼もしく感じられることもありますが、逆にしつけがしにくいと捉えられてしまうことも多いようです。
「全然言うことを聞いてくれない」と憤慨する飼い主のなかには、ボルゾイを「頭が悪い犬」として不名誉なレッテルを貼る人がいますが、それが誤解であることは言うまでもありません。
飼い主に従順で人懐こい
クールな見た目とは裏腹に、おおらかで人懐こい性格を持ちます。信頼している飼い主には従順で、自分から甘えに来る姿もしばしば見られるでしょう。このギャップが、ボルゾイの魅力のひとつです。
繊細なところもある
古来狩猟犬だったボルゾイは、実はとてもナイーブな犬種です。賢いゆえに、予想だにしないことが起こると激しく動揺し怯えます。
例えば、小さな子どもが、いたずらにシッポを引っ張ると、その行動が理解できないボルゾイは、子どもを怖がるようになります。ストレスを与えてしまう要因となるため、いたずら好きな子どもがいる家庭には不向きな犬種と言えるでしょう。
運動能力
犬の運動能力によって、適した遊び方や気を付けなければならないことが明確になります。では、ボルゾイの運動能力にはどんな特徴があるのでしょうか。
足が速い
ボルゾイが狩猟のターゲットにしていたのは、オオカミが多かったと言われています。そのため、オオカミを追いかけられるほどの脚力があり、とても足が速いのが特徴です。普段はのんびりと歩くことが多いためその姿から想像すると、足が速いという事実に驚きを隠せない人も多いかもしれませんね。
ボールやフリスビーなどを投げれば、自慢の脚力であっという間にキャッチしてしまうでしょう。
跳躍力がある
脚が長いうえに脚力があるため、高い跳躍力を持ちます。1mくらいの囲いであれば、軽々と飛び越えてみせるでしょう。そのため、犬用の小さなアスレチックでは、物足りないと感じるかもしれません。ドッグランなどを使用する際も、囲いの高さには注意が必要かもしれません。
寿命
平均寿命は、約7~10年と言われています。大型犬種の一般的な寿命が12~14年程度なので、それに比べると短命な方といえますね。
しかし、ボルゾイは大型犬に多い股関節形成不全などの遺伝疾病がほとんどなく、体も丈夫です。しっかり健康管理をすれば、平均寿命以上に長生きしてくれるでしょう。
ボルゾイの歴史
13世紀初期頃のボルゾイは、うさぎ狩りの猟犬として活躍していました。しかし、飼い主である貴族たちが「もっと大きな獲物を狙おう」と企て、別犬種と交配させるようになったのです。その結果、見事に大型化に成功し、オオカミ狩りで活躍できるほどになりました。
しかし、ロシア革命をきっかけに、王侯貴族が飼育する高級犬種のボルゾイは、共産主義者たちの手で虐殺されてしまいました。なかには、愛犬を他の人間の手で殺されることを恐れた貴族が、自らとどめを刺したという悲しいエピソードもあるようです。
貴族とともに迫害されたボルゾイでしたが、イギリスやアメリカの上流階級の人々に気に入られ、再び多くの人々に愛されるようになりました。ちなみに、1936年にボルゾイに改名される前は、ロシアン・ウルフハウンドと呼ばれていました。
ボルゾイを飼いたい!気になる値段と購入方法
貴族階級の人々が飼っていた歴史があるため、他の犬種に比べ相場が高いのでは、と思う人もいるでしょう。では、現代のボルゾイはどれくらいの価格で購入可能なのでしょうか?
ボルゾイの販売相場
相場は、大体10~30万円くらいとなっています。毛色や血筋などによって価格が変わることが多く、なかには50万円という高値がつくこともあります。
一般的には他犬種同様、仲介業者を挟むペットショップよりも、ブリーダーから購入する方が安く済む傾向があります。
里親になるかブリーダーを探すのが一般的
ペットショップで見かけることがなかなかないボルゾイは、里親になるか、ブリーダーから購入するのが一般的です。特に、ブリーダーであれば飼育経験や専門知識が豊富なので、飼い方もしっかりレクチャーしてくれるでしょう。
全国にあるおすすめのボルゾイブリーダー4選
ブリーダーからボルゾイを購入する場合、ブリーダー選びが重要となります。どんな環境で飼育されたかが今後に影響するだけでなく、正しく飼育するためにブリーダーと協力していくことも大切だからです。
しかし、日本でのボルゾイの飼育数が少ないため、ブリーダーの数もそれほど多くはありません。そんななかでも、全国的に人気が高いブリーダーを4犬舎紹介します。ボルゾイを飼ってみたいと思っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
細川葉子ブリーダー【埼玉】
一般家庭により近い環境で飼育しているため、新しい家に引き取られた後も、スムーズに順応してくれることが期待できます。また、トイレトレーニングなどの基本的なしつけがしっかりされているので、ボルゾイを迎えるのが初めてだという人でも安心ですね。事前に予約をすれば、犬舎の見学が可能です。
参考サイト:みんなのボルゾイブリーダー
大石家世美ブリーダー【神奈川】
ドッグショーに出場し、多数のチャンピオン獲得経験があります。しつけの仕方からお手入れの仕方までを丁寧にレクチャーしてくれますよ。
高品質なブリーディングが魅力なので、ボルゾイに限らず、犬の飼育自体が初めてで不安だという人にもおすすめです。関東地方であれば、出張サービスも行なってくれますよ。
参考サイト:みんなのブリーダー
古和田純子ブリーダー【京都】
京都の自然豊かな環境でブリーディングされるボルゾイは、とてもおおらかで元気いっぱいです。外部から病気が侵入するのを防ぐため、犬舎の見学はできませんが、代わりにブリーダー経営のペットショップで見学が可能です。
数多くのボルゾイを、宝物のように大切に育てているのが分かりますね。
参考サイト:みんなのボルゾイブリーダー
安部啓子ブリーダー【岡山】
ペットアドバイザー、トリマー、家庭犬訓練士など、犬のプロフェッショナルたちが集結した犬舎です。購入後も、しっかりサポートしてもらえるので、とても心強いですよね。
ボルゾイだけでなく、チワワやトイプードルなどもブリーディングしています。興味がある方は、一度犬舎見学に行ってみてはいかがでしょうか。
参考サイト:みんなのブリーダー
ボルゾイを飼うときの注意点
ボルゾイは、日本では希少性が高い犬種だと言っても過言ではありません。そのため、他の犬種に比べて情報も少なく、飼育に不安を感じる人もいるでしょう。しかし、ボルゾイは賢く温厚な性格なので、必要以上に身構える必要はありません。最低限の注意点さえ押さえておけば、大きなトラブルもなく飼育することが可能でしょう。
具体的な注意点をいくつか紹介するので、ボルゾイを飼いたいと思っている方は、購入前にぜひ参考にしてみてください。
眼の病気を起こしやすい
進行性網膜萎縮症や白内障など、眼の病気を発症しやすい傾向があります。片目だけ発症するケースもあるので、眼の状態が左右で違うと感じたときや、歩き方が頼りないなどの違和感があれば、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
胃捻転に注意
胃捻転は、大型犬に多く見られる病気です。原因は、食事の仕方やストレス、加齢など様々で、症状が急激に進行すると死の危険もあります。特に、ボルゾイは胃捻転になりやすい傾向があると言われているため、日頃から注意して見てあげることが大切です。
被毛の手入れ
被毛が長いため、小まめに手入れをしてあげる必要があります。日頃のグルーミングをしっかり行なえば、絹のような美しい被毛を、より美しく輝かせることができるでしょう。
ボルゾイの一番の持ち味だと魅力を語る方も多く、その長所をしっかり活かしてあげたいですね。
他の動物に怪我をさせないよう配慮する
人間や犬に対して狩猟本能を見せることはありませんが、それ以外の動物に関しては、思わず追いかけてしまうこともあるようです。そのため、ターゲットとなった動物に大きなストレスがかかったり、執拗に追いかけて怪我をさせてしまう恐れがあります。
万が一、犬以外の動物を飼育している場合は、一緒の部屋にしないなどの配慮をしてあげてくださいね。
しつけにはコツが必要
飼い主に従順なところと、自分で判断し行動するという二面性を持ちます。そのため、しつけがスムーズにいかず、なかなか言うことを聞いてくれないこともあるでしょう。特に、成犬から飼い始めた場合は、意思の疎通が難しいと感じるかもしれませんね。
言うことを聞いてほしいのであれば、まずは主従関係をしっかり築いていくことが大切です。そして、飼い主の言うことをすべて聞かせようとするのではなく、ときにはボルゾイの意思も尊重してあげましょう。
お互いを認め合うことができれば、きっとボルゾイは心を開いて、飼い主に信頼を寄せてくれるはずです。
夏場は脱水症状や熱中症に注意
原産国がロシアということから、ボルゾイは寒さに強い傾向があります。しかし、暑さにはめっぽう弱く、長い被毛の影響で熱が体にこもりやすいため、夏場の飼育には注意が必要です。小まめに水分補給をさせたり、被毛を短くするなどのケアをしっかり行ないましょう。
事故を防ぐためリードをつける
足が速いため、走り出したらあっという間に遠くまで行ってしまいます。そのため、自由に走らせていると、車にはねられるなどの事故を起こす可能性があります。どの犬を飼育する場合にも言えますが、愛犬の安全のために、外を出歩くときは必ずリードをつけましょう。
高貴な犬種と言われるボルゾイの飼育に挑戦してみよう!
ボルゾイの性格は様々なので、可愛いと思うこともあれば、しつけの難しさを痛感させられることもあるでしょう。しかし、それも含めてボルゾイを飼育する醍醐味だとも言えます。
意思疎通がうまくできないことがあったとしても、少しずつお互いを認め合っていけば、必ず良好な関係を築いていけるはずです。
また、体格が大きいため、飼育スペースの確保や、食事の管理などにも気を付けなければなりません。できるだけストレスを与えないよう、快適な飼育環境を整え、高貴な犬種と呼ばれるボルゾイを家族に迎えてみてはいかがでしょうか。