はちみつの甘い香りに誘われて、興味津々な眼差しを向けてくる愛犬を想像すると、飼い主としてはついあげたくなりますよね。しかし、犬がはちみつを食べると、いくつかのリスクがあります。そのため、間違った与え方をした場合に、愛犬の健康を害する恐れも考えられます。今回は、愛犬と美味しいはちみつを楽しむための正しい与え方や、注意点を解説します。
目次
犬にはちみつを食べさせても大丈夫?
はちみつは、トーストやスイーツにかけて楽しむだけでなく、料理の調味料として使用することで、甘味とコクを与えてくれます。
幅広く活躍する万能食品としてのイメージも強いので、家に必ず常備している、という人もいるでしょう。人間にとって身近なはちみつですが、犬にとってはどうなのでしょうか。
少量なら食べても大丈夫
健康な成犬であれば、少量食べても問題ありません。特に、犬は甘味を好む傾向があるため、はちみつを舐めて喜ぶ子もいるでしょう。
しかし、免疫の低い状態や幼犬期、また与えすぎは肥満や食中毒などのリスクがあります。あまりの美味しさに食べ過ぎてしまうことも考えられるため、飼い主がしっかりと摂取量を管理してあげることが大切です。
はちみつに含まれるボツリヌス菌の脅威
はつみつには、ボツリヌス菌と呼ばれる細菌が含まれている可能性があります。
この細菌による食中毒事例もあるため、食品製造において様々な基準が設けられたり、食べても良い人や量が制限されたりします。
では、なぜボツリヌス菌がそれほどまでに危険視されているのでしょうか。安易にはちみつを愛犬に食べさせないようにするために、まずはボツリヌス菌の恐ろしさについて解説します。
参考書籍:調理師養成教育全書 必修編 ⑥食品衛生学<p45~49>
ボツリヌス菌とは?
ボツリヌス菌は、菌が毒素を発する「毒素型食中毒」に分類されます。A~Gの7つの型に分類され、日本で発見されているのはA,B,E,Fの4種類です。中毒例として多いのはE型ですが、年々A型とB型の中毒事故も増えてきています。
空気を嫌う偏性嫌気性菌なので、普通は土壌や動物の糞便などが汚染源となります。
しかし、自然界に広く分布しているため、魚類の内臓やハム、ソーセージ、はちみつなどからも検出されます。
加熱しても壊れにくい「芽胞」を形成する
ボツリヌス菌は、熱に強い芽胞を形成します。一般的に、120℃以上の高温(高圧)を与えなければ死滅しないと言われており、食中毒菌のなかでも厄介な部類です。
一般家庭の調理で120℃以上の加熱は難しく、煮る調理の場合は、沸点の関係から100℃以上に上がらないため、長時間過熱をしなければ殺菌はできません。
しかし、なかには熱に弱いタイプの芽胞菌もあります。型による殺菌目安は以下のとおりです。
- A型、B型:100℃360分、120℃4分で死滅
- E型:80℃30分、100℃5分以内で死滅
熱に弱いE型芽胞は、基本的に河川の泥土に存在するので、魚介類から検出されることが多い傾向があります。つまり、はちみつなどの陸地のものからは、耐熱性のある型が見つかることが多いと考えて良いでしょう。
また、市販されているはちみつには、加熱処理がされているものとされていないものがあります。非加熱製品は、ボツリヌス菌が含まれている可能性が高いと言えるでしょう。
一方、加熱製品は、食中毒防止のための加熱とは限らず、加熱温度や時間が明確でない以上、安全とは言えません。
ボツリヌス菌の中毒症状
初期症状は嘔吐や腹痛などの軽いものですが、進行すると神経麻痺や複視、呼吸困難などが見られます。最悪の場合、死に至ることもため、すぐに動物病院で診てもらう必要があります。
はちみつの効能と犬が食べるメリット
はちみつは天然の甘味料で、摂取することで得られるメリットもあります。犬が食べることで得られる恩恵は、以下の2つが考えられます。
エネルギー補給ができる
ブドウ糖などの糖類が含まれるため、素早くエネルギー補給をすることができます。
健康的だけれど食べムラが目立つ、という子には、ドッグフードに少量のはちみつを垂らしてみると食欲をそそる効果が出て良いかもしれませんね。
腸内を潤して便秘改善
はちみつには保湿性があると言われています。空気が乾燥しているとき、喉を潤すために、はちみつを入れたドリンクを飲む人も多いのではないでしょうか。
東洋医学の考えでは、はちみつは腸内の乾燥にも効くと言われているため、便秘解消につながることが期待できます。
はちみつによるアレルギーや薬との相性は?
愛犬に初めてはちみつを与える人であれば、アレルギーの心配がありますよね。
また、投薬中にはちみつがどういった影響を与える可能性があるのかも気になるところです。では、実際はどうなのかをそれぞれ解説します。
花粉によるアレルギーが出る可能性がある
はちみつは、花の蜜を集めて作られているため、その際に花粉が混ざってしまう可能性があります。
含まれていたとしてもごく少量だと思いますが、念のため、です。
薬との相性は心配なし
薬との相性で、特に気を付けなければならないものはありません。そのため、花粉アレルギーを持つ子は注意が必要投薬中でもはちみつを与えても大丈夫です。しかし、薬を飲みやすいようはちみつを絡めて与えるのは、糖分過多となるのでやめましょう。
犬にはちみつを与えるときに気を付けたいポイント
愛犬にはちみつを食べさせてあげたいときは、以下のようなポイントに注意してください。
子犬や老犬には与えない
ボツリヌス菌は、「自然界最強」と言われるほどの強い毒を生み出す細菌です。しかし、免疫力がある人間や犬の腸内であれば、毒素の産出を防ぐことができるため、それほど恐れる必要はありません。
ただ、腸内環境が未熟な子犬や、免疫力が低下している老犬、一時的に体調を崩している成犬は、ボツリヌス菌による中毒症状が出るリスクが高まります。
安全にはちみつを食べさせるためには、犬の健康状態が非常に重要と言えるでしょう。
腎不全などを患っている子にも与えない方が無難
腎不全を患っていると、体内に十分な酸素を供給できず、免疫力が低下するため、貧血などの様々な合併症が考えられます。
「はちみつは免疫力アップにつながる」とよく言われることから、回復に役立ちそうと考える人もいるでしょう。
しかし、はちみつにあるのは、殺菌作用と保水作用です。体内に侵入した菌を殺菌し、喉などの粘膜を保水してくれるため、風邪予防には役立ちますが、それが根本的な免疫力アップになるわけではないのです。
そのうえ、体が弱っている子にはちみつを食べさせるのは、ボツリヌス菌による中毒リスクが高く、非常に危険と言えるでしょう。はちみつの健康効果を鵜呑みにして、腎不全の子に与えないよう注意してください。
与える量に注意
はちみつは液体状なので、舐めるだけで簡単に摂取できますよね。そのため、つい食べ過ぎてしまう、ということもあるでしょう。
それを防ぐためには、飼い主が与えても良い量をきちんと算出し、その分だけを愛犬に与えることが大切です。
飼い主が食べているものを舐めないよう注意
ヨーグルトやトーストなどに、はちみつをかけて食べる人もいるでしょう。食べ終わった食器や、はちみつが入っているボトルをそのままテーブルに放置すると、それを犬が舐めてしまう危険性があります。
目を離した隙に、愛犬が大量のはちみつを食べてしまう恐れがあるので、手が届く位置にはちみつを置かないよう気を付けてください。
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市販されている商品のなかには、はちみつ味のものがたくさんありますよね。これらは犬が食べても大丈夫なのでしょうか。
はちみつ入りクッキー
はちみつを使用することで、しっとりと上品な甘さを感じられるクッキーになります。健康を気にする人のなかには、砂糖を減らす代わりにはちみつを使用する、という人もいるでしょう。
しかし、人間用のレシピで作られたはちみつ入りクッキーは、カロリーが高く、犬にとってははちみつの含有量も多い可能性があります。
愛犬に食べさせてあげたいのであれば、犬用として紹介されているレシピを参照するか、ペットショップに販売されている犬用はちみつ入りクッキーを与えましょう。
はちみつレモン
疲労回復や風邪予防に役立つと人気のはちみつレモンですが、犬にとっては危険なので与えないようにしてください。
レモンの皮には、ソラレンという成分が含まれています。嘔吐、下痢、皮膚炎などの様々な症状を引き起こす原因となるため、皮ごと使うはちみつレモンは危険です。
また、輸入レモンの場合は、表面に防カビ剤がついています。調理前にきれいに洗っていたとしても、100%完璧に落ちているとは限りません。
人間にとっては体調を崩すほどの量でなかったとしても、体が小さい犬には、少量が命取りとなる危険性もあります。
レモンだけでもこれだけの危険性があるにもかかわらず、そのうえリスクのあるはちみつも加わっているとなると、与えないという選択が賢明でしょう。
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梅干を漬ける際、はちみつを加えることで、まろやかな仕上がりになるのがはちみつ梅干しです。塩分にさえ注意すれば、犬も梅干を食べても大丈夫です。
そのため、はちみつ梅干しも大丈夫だと思う人もいるでしょう。確かに、少量であれば問題ありませんが、商品によってはちみつの含有量が異なります。
なかには、はちみつをたっぷり使っている梅干しもあるので、安易に与えるのは危険です。また、長時間はちみつと塩の液に漬けられているため、はちみつの糖分がたっぷり浸透している可能性もあります。
直接はちみつを与えているわけではないとしても、過剰摂取となる可能性があるため、与える際は注意が必要です。
犬にはちみつを与えるのはリスクが大きい
犬にとって、はちみつは様々なリスクがある食品です。犬にとってのメリットも少ないので、無理に与える必要もありません。
しかし、物欲しそうな目で見つめられると、与えないのも可哀想だと思う人もいるでしょう。その際は、与え方や量には注意し、今一度愛犬が食べても大丈夫な健康状態かを確認してください。
また、はちみつを加工した様々な食品も出回っています。人間用は、はちみつの含有量が多いものがあるので与えないように注意し、はちみつの甘い匂いが好きな子には、安全な犬用のおやつを与えてあげるのが安心でしょう。