甘くてジューシーな桃は、犬に食べさせても大丈夫な果物のひとつです。その芳醇な香りに誘われて欲しがる子もいるでしょう。しかし、食べ過ぎや間違った与え方は愛犬の健康を害する可能性があります。美味しい桃を一緒に楽しむためにはどんなことに気をつけるべきかを解説します。
目次
犬に桃を食べさせても大丈夫?
夏の日差しを浴びて赤く色づいた桃は、その芳醇な香りと強い甘みからお中元の品としても人気が高い果物です。飼い主が桃を食べていると、その香りに誘われて愛犬が寄ってくることもあるのではないでしょうか。そんな姿を見ると、つい食べさせたくなってしまいますよね。
しかし、犬には食べさせてはならないものがたくさんあるため、興味を示したものを何でも与えていいわけではありません。桃は与えても良いものなのでしょうか?
犬に桃を食べさせても大丈夫
結論からいえば、犬に桃を食べさせることは可能です。犬は甘味を好む傾向があるため、桃の甘さが気に入って欲しがる子もいるでしょう。また、犬にとって嬉しい栄養もたっぷり含まれており、与えても健康上問題はありません。
しかし、これは正しい与え方をしている場合に限って言えることで、愛犬に美味しく食べてもらうためには桃の成分や危険性、与え方についてもしっかり理解しておくことが大切です。
有害物質も微量に含まれている
桃の種には「アミグダリン」という青酸配糖体が含まれています。これは、体内で消化分解される際に青酸毒を発生させるため、中毒症状を起こして最悪の場合死を招く危険性があります。種を与えなければ良いのでは、と思う人もいるかもしれませんが、この有毒物質は実の方にも微量に含まれています。
そのため、種を取り除いているからといって100%無害だとも言い切れません。実を食べ過ぎることで中毒症状が起こる可能性があることも覚えておきましょう。
桃はアレルギー食品のひとつ
桃はアレルギー食品のひとつとして有名で、アレルギー体質の子が食べると非常に危険です。また、体調不良でいつもとは異なる健康状態で桃を食べるのも危険です。
普段は食べてなんともなかったとしても、タイミングが違えば桃の成分が体に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。与える際は、愛犬の体調にも十分に気を配りましょう。
桃は栄養素が豊富!犬に与えることで得られるメリット4つ
桃には犬に嬉しい栄養がたくさん含まれています。桃の栄養がどのように作用するのか、そのメリットを4つ紹介します。
ビタミンEとビタミンCで抗酸化力アップ
ビタミンEとビタミンCは、抗酸化力が高く老化防止に効果があると言われています。体が老化する原因は様々ですが、そのうちのひとつとして考えられているのは、活性酸素によって細胞膜の脂質が変化し、過酸化脂質となることです。
ビタミンEには活性酸素と結びついて無害化する働きがあり、過酸化脂質の生成を未然に防ぐため老化防止に効果があると言われています。
また、ビタミンCと結びつくことでより強い抗酸化力を生み出すことが期待されているため、この2つの成分が豊富に含まれている桃は、古くから「長生きの実」や「不老長寿の仙果」と言われ親しまれてきました。愛犬に適量の桃を食べさせてあげることで、元気で長生きしてくれると期待できるでしょう。
たっぷりの果汁で水分補給
桃のおよそ88%は水分で構成されています。そのため、食べながら水分補給もできるという魅力があります。
桃の旬は夏なのですが、この時期は夏バテなどが原因で食欲が減退する犬もいます。なかには、水分補給すらままならない子もいるでしょう。
そんなときに桃を食べさせてあげれば、ビタミンや水分をたっぷり摂ることができます。食欲がない子でも、甘くて香り高い桃には口を開いてくれるかもしれませんね。
食物繊維で腸内環境を改善
食物繊維は体内で吸収されない栄養素と言われており、腸内の老廃物と一緒に排出される効果があります。愛犬が便秘気味だと悩んでいる人は、積極的に食べさせてみてはいかがでしょうか。
糖分とクエン酸で疲労回復
桃の主成分はショ糖ですが、それに加えクエン酸やリンゴ酸も含んでいます。これらの栄養素は疲労回復効果が期待できるため、夏バテの時期にはうってつけの果物と言えるでしょう。
犬が桃を食べ過ぎることで見られる症状4つ
桃には様々な栄養が含まれていると先程説明しましたが、どんなにメリットがあるとは言え、食べ過ぎは逆効果となる可能性があります。
万が一食べ過ぎてしまった場合、どのような症状が見られるのかを4つ紹介します。
嘔吐や下痢
桃を食べることで嘔吐や下痢を起こしやすくなるのにはいくつか理由が考えられます。
食物繊維による影響
老廃物の排出を手助けしてくれる食物繊維は、便秘気味の犬にとっては非常にありがたい栄養素でしょう。しかし、その影響が強すぎると逆に下痢を招く可能性があります。
お腹をくだしやすい
桃は水分量が多いため、食べ過ぎることでお腹を冷やしてしまう可能性があります。それによって腹痛を伴う下痢が見られます。
胃酸が薄まって消化不良を招く
甘みのある桃は、その美味しさからつい食べ過ぎてしまう犬もいるでしょう。必要以上の水分を知らず知らずのうちに摂取してしまうことで、胃酸が薄まる可能性があります。
胃酸は、感染症の防止や円滑な消化吸収に必要不可欠なものであるため、それが薄まることで消化不良につながります。
消化不良で下痢をするだけではなく、不快感から嘔吐する子もいるでしょう。
腎疾患
桃にはカリウムが含まれています。含有量が多いと言えるほどではありませんが、たくさん食べていれば過剰摂取になることも考えられます。
血液中のカリウム濃度が高いと、心拍が安定せず不整脈を引き起こす可能性があります。
少量口にした程度では心配はありませんが、腎機能に問題がある犬の場合は、例え少量であっても命の危険があります。医師から食制限を言い渡されている子は、食べない方が無難でしょう。
ドッグフードを食べなくなる
桃の甘みが強いと、その味を欲して他の物を食べなくなる傾向があります。嗜好性の高いドッグフードであればそれほど変化は見られないかもしれませんが、嗜好性を重視しないドッグフードだと、味に物足りなさを感じて受けつけなくなる子もいます。
肥満になる
意外にも桃は果物の中で比較的カロリーが低い果物です。他の果物とのカロリーを比較すると、以下のようになります。
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100gあたりのカロリー
- バナナ86kcal
- りんご54kcal
- みかん45kcal
- 桃40kcal
身近な果物を例に挙げましたが、これを見ると桃のカロリーが低いというのが分かりますね。
そして糖質ですが、カロリーの例と同じ果物で比較してみましょう。
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100gあたりの糖質
- バナナ21.4g
- りんご14.3g
- みかん11.0g
- 桃8.9g
糖質においても他の果物に比べて低いことが分かります。
桃はカロリーと糖質が低いことに加え、むくみ解消効果のあるカリウムや、腸内環境を整える食物繊維を含みます。そのため、ダイエットのために積極的に食べている人もいるでしょう。
しかし、与え過ぎは逆効果を招きます。どんなにカロリーと糖質が少なくても、たくさん食べれば肥満の原因になるため、愛犬に与えすぎないように気をつけましょう。
桃アレルギーの可能性がある症状3つ
犬が桃を食べて以下のような症状が出た場合、それは桃アレルギーの可能性があります。
嘔吐や下痢
アレルギー症状としてだけではなく、食べた桃が大き過ぎたり、食べ過ぎたりしたときにもこの症状が現れます。
体が赤くなってかゆくなる
体毛で覆われていて分かりづらい場合には、耳や目の周り、足の裏などの比較的体毛が少ない部分をチェックしましょう。赤みがあればアレルギーの可能性があります。
また、同時にかゆみが出る場合もあり、体を柱などにこすりつけたり、噛んだりするような行為が見られたら皮膚の様子を見てあげてください。
呼吸が早い
桃アレルギーで過呼吸のような症状が出ることがあります。なかには、顔が腫れてくる子もいるでしょう。一刻を争う場合が考えられるため、すぐに病院を受診しましょう。
犬に桃を与えるときの注意点
犬に桃を与える際には、気をつけなければならないことがいくつかあります。正しい食べ方をすれば健康に良い桃ですが、与え方を間違えれば健康を害する可能性があるため、飼い主はきちんと理解しておく必要があります。
皮と種を取り除く
先程も説明したように、種には有害物質が含まれているため、食べると中毒症状を起こす原因となります。それだけでなく、桃の種を誤飲することで食道や胃腸を傷つけてしまう恐れがあり、さらには、腸に詰まってうまく排出できない可能性も考えられます。
種の核の部分は漢方薬としても使われているため、健康を害するようなものではないと思ってしまう人もいるでしょう。
しかし、桃の種が漢方に使用されている理由は、少量の毒をうまく用いることで薬に転ずるという考え方からです。つまり、毒があることが分かっているうえで薬として使われているため、犬に食べさせるのはNGです。
一方皮は、一切食べさせてはいけないというわけではありませんが、体内で消化しづらいので与えない方が無難です。
また、与えるつもりはなくても、人間が取り除いた種や剥いた皮などを犬の届く範囲に置いてしまうと、甘い匂いに誘われて分別無しに口にしてしまう事故もあります。与えないと同時に、きちんと手の届かないところへ捨てるよう注意しましょう。
フレッシュな桃と缶詰の桃を同じように与えない
桃は桃でも、フレッシュなものと缶詰として加工されているものがあります。缶詰の桃はたっぷりのシロップに浸けられているため、果肉はフレッシュなものよりも甘みを増しています。皮むきや種を取るなどの処理が必要ありませんし、フレッシュな桃を買うよりも安く手に入るため、缶詰を犬に与えようとする人もいるかもしれません。
しかし、砂糖がたっぷり入っている缶詰は肥満の原因になりかねません。フレッシュな桃と缶詰の桃は別物と考え、同じ量を与えるのではなく、それぞれの適切な量を確認しましょう。
与える量に注意
飼い主が与える量をきちんと管理しなければ、犬はあるだけ食べようとします。特に、香りが良くて甘みがある桃を好む犬は多いため、簡単に過剰摂取をしてしまう恐れがあります。
食べ過ぎを防ぐために、愛犬に適した量を事前に確認したうえで桃を与えるようにしましょう。
完熟の桃を選ぶ
有害物質のアミグダリンは、熟すと分解されて糖に変わります。つまり、果肉内の青酸配糖体の含有量は、熟していくにつれて徐々に減っていくと言えます。より安全なものを食べさせたいのであれば、未成熟なものではなく完熟した桃を選びましょう。
冷たい状態で食べさせない
甘くてジューシーな桃は、犬だけではなく私たち人間にとっても美味しいフルーツです。そのため、桃を使ったアイスや、ケーキなどもたくさん市販されています。
しかし、冷えた状態の桃を犬に食べさせると、お腹を壊してしまう可能性があるので注意が必要です。桃を与えるのであれば、なるべく常温で冷えすぎていないものを与えましょう。
ちなみに、桃は長時間冷蔵庫で保存しているとどんどん甘みが失われていきます。普段は冷暗所で保存し、食べる直前に冷蔵庫で冷やすのが美味しく食べるコツなのですが、犬の場合は冷蔵庫で冷やさずそのまま与えれば大丈夫です。
冷えた方が美味しいのでは、と思う人もいるかもしれませんが、むしろ冷えていない方が甘みもしっかり感じられて、お腹を冷やすリスクも減るので一石二鳥です。
桃を生食以外で美味しく食べる方法
フレッシュな状態で食べるのも美味しいのですが、味に飽きないよう少しアレンジを加えてあげたいという人もいるでしょう。そこで、犬も飼い主も両方楽しめるような桃の食べ方を3つ紹介します。
桃ゼリー
桃とゼラチンを使って作られる手作りゼリーであれば、犬に与えても問題ありません。つるっとした食感で、夏バテの食欲減退中でも食べやすいでしょう。市販されているゼリーは、糖分などの添加物が多く含まれている可能性があるため、与える場合には原料をよく確認して、安全なものを選びましょう。
桃豆乳プリン
牛乳を用いても良いのですが、アレルギーが心配だという人の場合は豆乳を使用すれば安心です。ゼリー同様につるっとした食感が楽しめるだけでなく、豆乳の濃厚さも味わうことができるでしょう。
桃スムージー
果肉をジューサーにかけ、水や豆乳などの液体を少量加えて飲みやすくしたものです。固体のものより液体状のものの方が食べやすいという犬には特に喜んでもらえるのではないでしょうか。
愛犬と一緒に甘くてジューシーな桃を味わおう!
甘くてジューシーな桃は、子どもから大人まで多くの人に愛されている果物です。そのまま食べても良し、お菓子作りの材料としても良し、なかにはサラダやスープなど料理の食材として使用するなんて人もいるでしょう。幅広い場面で活躍するのも愛される所以なのかもしれませんね。
そんな桃を愛犬にも味あわせてあげたいのであれば、食べさせ方や量に注意が必要です。アレルギーがあるかが分からないという人は、果汁を使ってパッチテストをしたり、少量食べさせて様子を見るなどし、安全に食べられるかを見てあげてください。正しい与え方を心がければ、愛犬の嬉しそうな表情を見ることができるでしょう。