人間にとっては美味しい「生卵」ですが、実は猫にとっては健康を害する食べ物のひとつです。なぜ生卵を与えてはいけないのか、その理由について詳しく紹介します。また、安全に食べることができる食べ方も合わせてチェックしてみてくださいね。
目次
猫に生卵を与えても大丈夫なの?
猫などの動物には人間と違い、食べたら身体に悪影響が出るものがあります。
今回紹介する「生卵」もそのなかのひとつです。猫は生卵を食べてはいけません。その理由を詳しくみていきましょう。
生卵に含まれている病原菌を把握しておこう
生卵には、食中毒の原因となるサルモネラ菌や殻に付着している大腸菌といった病原菌が含まれています。
人間でも、大人が食べる場合はそこまで影響はありませんが、幼児や高齢の方、病気で免疫力が低下している方は生卵を食べないほうがいいでしょう。
このように少なからず人間にも影響を与えることのある生卵ですが、猫にもどのような影響を与えるのでしょうか。
サルモネラ菌
生卵といえば、サルモネラ菌のイメージがありますよね。世界中でも、卵を生のまま食べる日本はとても珍しいのをご存知ですか?
日本では生で食べることを想定されているので、生卵の中にサルモネラ菌が含まれている可能性はとても低いと言えます。しかし、サルモネラ菌が完全にいなくなっているわけではありません。
感染すると腹痛や下痢、発熱、吐き気、嘔吐といった症状が出る場合があります。加熱すると死滅しますが、生のまま食べる場合は食中毒の危険性があるので注意しましょう。
大腸菌
大腸菌は、卵の殻の表面に付着しているものです。私たちが食べる場合も、殻は捨てるので関係ないように思いますが、卵を割る際に殻が入ってしまうことはありませんか?
欠けた殻によって、大腸菌が混入する可能性があるのです。大腸菌に感染すると、腹痛、下痢、発熱といった症状が出ることがあります。
白身には酵素「アビジン」が含まれている
生卵の白身には「アビジン」という酵素が含まれています。このアビジンは、腸内でビオチンと結合し、腸で吸収されることなく排泄されます。
ビオチンはビタミンB群の1種であり、猫の皮膚や被毛を健康に保つために欠かせない栄養素です。このため、猫の体内でビオチンが不足することになり、皮膚トラブルや疲労、脂肪の代謝障害が起こる可能性があります。
加熱することで「アビジン」は壊れる
生卵の白身に含まれている「アビジン」は、加熱することで壊れ、働きを失ってしまいます。そのため、生卵なら猫にとって避けたほうがいい食べ物ですが、加熱することで猫にとっても栄養豊富な食べ物になります。
卵自体は猫にとって栄養豊富な食べ物?
動物性たんぱく質の卵は、もともと猫にとって食べても問題のない食べ物です。たんぱく質と脂質が豊富に含まれているため、筋肉の成長をサポートする効果が期待できます。
黄身にはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、セレン、リン、亜鉛、鉄、銅といった多くのミネラルや必須アミノ酸を含んでいます。猫によって必要な栄養素を多く含んだ卵を食べることで、皮膚や毛質を良くする効果もあります。
黄身のほうが栄養価が豊富
白身よりも黄身のほうが栄養価が高く、皮膚や粘膜の機能も強化してくれます。
生卵の白身には「アビジン」が含まれていると説明しましたが、白身と黄身を混ぜ合わせて加熱調理をしても、ビオチンとアビジンは結合したままとなるので、ビオチンの吸収力は落ちてしまいます。
黄身だけなら生でも大丈夫
猫に生卵を与える危険性を説明しましたが、黄身だけなら生でも食べることがあります。猫のご飯を手作りする時に、生で使いたいということがあるかもしれません。
卵の栄養の多くは黄身の部分に含まれており、クリーミーな生の黄身は猫にとって栄養価の高い食べ物です。黄身だけなら、必ずしも加熱する必要はないので、状況に応じて与えてあげましょう。
ただ、猫にも生や固ゆでといった好き嫌いもあるので、猫の反応を見ながら与えてくださいね。
猫に生卵を与える時の注意点5つ
必ず加熱してから与えよう
猫に卵を与える時は、しっかり加熱してから与えるようにしてください。加熱した卵を与える時は、まるごと与えるのではなく細かく砕いた状態にしてあげてください。
大きいサイズだと、喉に詰まったり、咀嚼が足りないことで胃腸の負担となることが考えられます。また、黄身のみなら生で与えてもかまいませんが、白身の付着が心配な場合には、必ず加熱するようにしてください。
調味料を使用しないようにしよう
猫に加熱した卵を与える時は、調味料を一切使用しないでください。これは、脂質、塩分などの過剰摂取を避けるためです。
人間が食べた後の残り物を与える場合も同様に、調味料の使用がないか厳重に注意してください。猫に卵焼きやスクランブルエッグを与える際には、ノンオイルで調理するようにしましょう。
卵の量や頻度に注意しよう
卵はたんぱく質や脂質を多く含んだ食べ物です。Lサイズの卵1個あたりのカロリーは、85kcalです。
脂質が多く、飽和脂肪酸を取り過ぎることになり、血液内のコレステロールが増えて肥満の原因となってしまいます。与え過ぎてしまうと、肥満やメタボリックの原因となり、猫の健康を損ねてしまう恐れがあります。
卵を上げる場合は、多くても1日に1個を目安とし、しっかり加熱した少量の卵をキャットフードに混ぜるといいでしょう。
アレルギーはないか確認をしよう
「生卵」というと、気を付けたいのはアレルギーですよね。人間だけではなく、猫にとっても卵を食べることでアレルギー反応を起こしてしまう可能性があります。
そのため、猫に卵をあげるときは必ず近くにいて、注意しながら様子を見守ってあげてください。
ちなみにアレルギーの症状として考えられるのは、次のものがあります。
- 下痢、嘔吐
- 皮膚のかゆみ
- 食欲不振、元気がなくなる
- 目の充血
初めは少量からにしよう
初めて卵を与える場合は、少量から始めるようにしましょう。初めて食べることで体調を崩すこともありますし、アレルギー症状が出ることもあります。
食べた後はしばらく様子を見るようにしてください。もし忙しく、食べた後に一緒にいられないなら、あげるタイミングをずらすことをおすすめします。
猫が生卵を食べてしまったときの対処法
猫に生卵をまるまる与えてはいけません。しかし、机の上に置いていた生卵を勝手に食べた、割った状態で置いてあった生卵を知らない間に口にした、ということがある場合はどうしたらいいのでしょうか。
猫の様子を見守ろう
猫が生卵を食べてしまったからといって、すぐに動物病院へ行く必要はありません。少量ならそこまで問題はないのですが、猫の様子を見守ってあげましょう。
もし普段と様子が違い、しんどそうにしている、横になることが多くなった、というなら、かかりつけの動物病院へ電話し、状況を伝えてください。
その際、いつ、どのくらいの量を食べたか伝えましょう。そして、獣医師と相談し、必要であれば診てもらうようにしてください。
猫に生卵を与えるときはしっかり火を通そう
人間にとって美味しいもの、栄養のあるものが、猫にも同様のいうわけではありません。
猫にとっては「食べてはいけないもの」「健康を害するもの」が多くあります。生卵はそのなかのひとつです。
どうしても与える時は、必ず加熱するようにしてください。黄身は生でも食べることができますが、心配なら加熱したほうがいいでしょう。
猫の健康を守ってあげられるのは飼い主さんだけですので、しっかり注意して与えてあげてくださいね。