おとぎ話によく登場するシマリスは、ペットとしても人気の動物です。その可愛らしい外見から「飼ってみたい!」と思っている人も多いのではないでしょうか。今回は、シマリスの正しい飼い方や、コミュニケーションの取り方のコツを紹介します。シマリスを飼うことを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
シマリスの特徴
シマリスとは、ネズミ目リス科シマリス属に分類されるリスの総称です。北アメリカやロシア、アジアなどに生息し、住む場所によって様々な種類があります。日本で野生のシマリスが見られるのは北海道のみと言われており、エゾシマリスという種類であることから「エゾ」と呼ばれています。
しかし、鳥獣保護法によって捕獲・飼育が禁止となり、その後朝鮮に生息するチョウセンシマリスが輸入されるようになりました。ペットとして人気のチョウセンシマリスでしたが、一部で野生化していることが判明したのです。エゾシマリスとの交雑や競争が懸念され、輸入禁止となってしまいました。
こういった経緯があり、現在は、中国から輸入しているチュウゴクシマリスが流通しています。
参考:侵入生物データベース
外見
一般的な体長は20~30cmで、そのうちシッポは8~12cmにもなります。体の約半分の長さを占める長いシッポは、リスならではの特徴ですね。
体重は大体90~130g程度です。シマリスは、その名の通り背中に黒と白の縞模様があります。これがシマリス最大の特徴と言っても過言ではないでしょう。
性格
繊細で臆病な一面と、活発で好奇心旺盛な一面とを持ち合わせています。そのため、あまり動こうとしないおとなしい子もいれば、常に動かなければ落ち着かないほど、元気いっぱいな子もいます。
それぞれ個性があるため、飼育する際は、どんな子を飼いたいかを明確にして選ぶと良いでしょう。
寿命
シマリスの天敵は、自然界にたくさんいます。そのため、寿命は大体4~5年程度と言われています。
しかし、身の危険がないペットの飼育であれば、6~8年くらいは生きられるでしょう。上手に飼育すれば、10年以上生きる子もいるようです。
値段
10,000円前後が相場ですが、希少性の高い色の子だと50,000円程度することがあります。犬や猫などに比べると、飼育を始めやすい価格だと言えるかもしれませんね。
シマリスを飼うための環境づくりをしよう
シマリスを飼うのであれば、まず環境を整えてあげることが大切です。住みやすい環境づくりができていれば、新しいお家でも早く慣れることができるでしょう。
では、どんなものを揃えてあげたら良いのか、また、飼育していくうえでどういった管理を行なえば良いかを解説します。
温度管理
シマリスの快適温度は、20~25℃程度です。比較的涼しい環境が理想なので、春や秋は飼いやすいでしょう。
しかし、夏や冬は温度管理が難しく、適温でないと体調を崩す可能性があります。ケージの通気性を考えると、冷気が入りやすい窓際や、エアコンの風が当たりやすい位置は避けた方が無難です。
常に一定の室温に保つこと、そして、シマリスの様子をしっかり見てあげることを心がけましょう。
掃除
日々の掃除は、他の小動物たちと変わりはありません。フンを取り除いたり、床材が汚れたら新しく入れ替えたり、水が減ったら新しく補充してあげたりする程度で大丈夫です。
しかし、他の動物と少し違うのが、餌の食べ残しをする、ということです。シマリスは、あえて餌を食べ残す習性があります。これは、お腹いっぱいだからではなく、食料を保存しておくことで安心感を得るためです。
餌入れは空でも、巣箱に持ち帰っている可能性があるため、時々覗いてみてください。いつまでも置いておくと、腐敗臭がしてくる可能性があります。衛生的に良くないので、きれいに掃除してあげてくださいね。
ただ、餌を残しているからと言ってすべて取り除いてしまうと、シマリスは安心感が得られず、ストレスを感じてしまう恐れがあります。腐敗するほど放置するのは問題ですが、ある程度残しておいてあげることも大切です。
ケージ
大きめの小動物用ケージで良いですが、シマリスは木登りをするため、できるだけ高さがあるケージをおすすめします。ペットショップに行けば、リス用に巣箱や回し車などがセットになったものが販売されている場合があるでしょう。
そういったものを選ぶと、いろいろと買い揃える手間が省けて便利ですよ。また、シマリスは物をかじる習性があります。そのため、プラスチック製ではなく、金属製を選んだ方が誤飲のトラブルを防ぐことができて安心です。
では、快適なお家にするために、ケージ内に何を用意してあげたら良いのでしょうか。揃えておきたいアイテムを、いくつか紹介します。
かじり木と登り木
木を登る習性があるため、登り木は必ず用意しましょう。安心して登れるよう、硬く長さがあるものを選んであげてくださいね。
また、かじり木に関しては、専用のものでなくてもかまいません。安く売られている廃材や、道端に落ちている木でも大丈夫です。シマリスにとって、かじる行為はストレス発散になります。
かじることができるものがないと、巣箱や餌入れ、ケージなど目についたものをかじろうとするので、それを防ぐためにも、かじり木があった方が良いでしょう。
巣箱
巣箱には、木製やプラスチック製など様々なタイプがあります。木製は、自然に近いところが強みなので、シマリスも安心して入りやすいでしょう。多少かじって食べたとしても、体に害を及ぼすほどの心配はありません。
しかし、カビが生えやすかったり、手入れがしづらいというデメリットがあります。
一方、プラスチック製は手入れがしやすいメリットがあります。汚れがひどい場合でも、水洗いが可能で、カビの心配もありません。
しかし、かじって誤飲したときの不安があるため、誤飲しないようしっかり見てあげる必要があります。
餌と入れ物
シマリス専用の餌が販売されているため、基本的にはそれを与えていれば問題ありません。栄養バランスが整っており、シマリスが食べられるものと食べられないものを分別する必要がありません。飼育に慣れないうちは、専用の餌だけで十分健康に育つでしょう。
しかし、なかには偏食をする子もいます。突然餌を食べてくれなくなる場合があるため、そのときは、副食を与えてみたり、乾燥させた野菜や果物が入った餌を与えたりしてみてください。
ちなみに、人間が食べるもので、シマリスが食べられる食品があります。スーパーなどで気軽に手に入るものは下記のとおりです。
- かぼちゃ
- とうもろこし
- 小松菜
- 枝豆
- りんご
- バナナ etc
食べられるものが比較的多いため、主食を食べさせた後、副食として与えたり、飼い主のおやつタイムに、一緒に果物を食べたりしても良いでしょう。
そのまま与えても良いものもありますが、なかには硬かったり、皮があったりして食べづらいものもあります。その場合は、食べやすいよう工夫してあげてくださいね。
また、枝豆や大豆などの豆類は、良質なタンパク質を摂取できるため、積極的に食べさせてあげたい食品です。しかし、生のままだと毒性があるため、必ずゆでたものを与えてください。その際、塩ゆではしないよう気をつけてくださいね。
一方、与えてはいけないものは下記のとおりです。
- ほうれん草:カルシウムの吸収を阻害するシュウ酸が多い
- ネギ類:赤血球を破壊する恐れがある
- アボカド:呼吸困難や肝臓機能障害を引き起こす毒を含む
- チョコレート:カフェインが含まれているものは、中毒を起こし、嘔吐や下痢を起こす
- 落花生:発がん性物質のアフラトキシンを含む
ほうれん草は、一切与えてはならないわけではありませんが、継続的に与えるのは健康を害する恐れがあります。また、これら以外にも、シマリスに適さない食品があるため、専用フード以外を与える際には注意しましょう。
餌入れは、プラスチックより陶器のものをおすすめします。かじっても壊れる心配がなく、汚れてもすぐ洗えるので、いつでも清潔な状態で餌を与えることができますよ。
給水器
コストをかけたくなければ、家にある小さなお皿に水を入れ、ケージの中に置いておく方法も良いでしょう。しかし、動き回っているうちにお皿を倒し、水がこぼれてしまう可能性があります。
特に、活発な子を飼っている場合は、水入れを倒すリスクが高いです。ケージ内を汚してしまうだけでなく、シマリスの体を濡らし、体調を崩す恐れがあります。
こういったリスクを減らすため、できるだけボトル式の給水器を用意することをおすすめします。
床材
ケージの下に敷く床材は、保温や尿の給水などの役割があります。また、シマリスは巣の中に敷く草を集める習性があるため、床材を巣箱に運ぶ姿が見られるかもしれませんね。
もし床材がなければ、細かく破った新聞紙でも代用できますよ。
シマリス飼うときの注意点
あまり手がかからないため、比較的飼いやすいシマリスですが、飼ううえで注意しなければならない点がいくつかあります。これからシマリスを飼おうと思っている人に、特に知っておいてほしい注意点を4つ紹介します。
タイガー期に気をつけよう
シマリスにはタイガー期があります。そのため、接し方に気を付けなければならないこともあるのですが、この時期を乗り越えるためにはどうすれば良いのでしょうか。
タイガー期とは?
タイガー期という言葉を初めて耳にした人も多いのではないでしょうか。これは、シマリスが凶暴化する時期を指す言葉です。可愛い顔で人懐っこいシマリスには、あまり似合わない言葉ですね。
タイガー期は、一般的に秋から冬にかけて訪れます。急に噛みついてきたり、襲い掛かってきたりすることがあるため、飼い主はケガをしないよう接し方に気を付けなければなりません。
構わないことが一番の対策
タイガー期は、シマリスの野生の本能が影響していると考えられているため、しつけをして直るものではありません。まるで別の生き物のように凶暴化する子もいるため、無理に構わないのが一番の対策と言えるでしょう。
ケージ内から不用意に出さないようにし、自然と落ち着くまで見守ってあげてください。また、気が荒くなったシマリスを見て、伝染するように飼い主もイライラして怒りたくなるかもしれません。
しかし、怒った飼い主を見て、シマリスが恐怖心を抱くようになる可能性があります。お互いの関係に溝を生まないようにするためにも、イライラをぐっと堪え、優しく接してあげてください。
多頭飼いを避ける
シマリスは、縄張り意識が強い動物です。そのため、多頭飼いには不向きな動物と言っても良いでしょう。たくさん飼いたい場合は、必ず一匹に1ケージで飼うようにしてください。
また、他の動物であっても、シマリスはストレスを感じてしまいます。同じケージにハムスターやうさぎなど、他の小動物を入れないようにしましょう。
ストレスを与えないよう気をつける
繊細なシマリスは、ちょっとしたことでストレスを感じてしまう場合があります。そのため、大きな声で怒ったり、突然体を触ったりするのは避けましょう。常に優しい声で接すること、脅かさないよう注意することが大切です。
水回りに注意する
シマリスは、自然界に天敵が多いため、存在がバレないよう自身のニオイに対してとても敏感です。食事の後は自分の手を入念に舐めたり、毛づくろいをしたりし、全身を清潔に保ちます。そのため、他のペットのようにお風呂に入る必要がありません。
体が濡れると、体温が下がってショック状態となるため、水回りには気をつけてあげてください。ケージから出したとき、キッチンや洗面台などに近寄らないよう配慮しましょう。ニオイが気になる場合は、ハムスターなどに必要な砂風呂を用意してあげると良いですよ。
シマリスとの絆を深めるコツ3つ
「可愛いシマリスと仲良くなりたい!」と思っている人のために、ここでは絆を深めるコツを紹介します。簡単にできるものばかりなので、ぜひ実践してみてくださいね。
シッポを触らない
フワフワで大きなシッポを持つため、触りたくなる人もいるでしょう。しかし、シマリスはシッポを触れるのを嫌うため、触ってくる人に対し嫌悪感を抱いたり、トラウマとなって近寄ってくれなくなったりする可能性があります。飼い主を危険人物と捉える恐れもあるため、シッポは極力触らないようにしてください。
たくさん話かけよう
シマリスは、好奇心旺盛なので、興味があるものには自分から近寄ってくることが多々あります。そのため、初めての飼育でも仲良くなりやすいでしょう。人懐っこい性格で、飼い主の声にもしっかり耳を傾けます。名前を呼んだり、話しかけたりすることで、より懐いてくれるようになるはずです。
シマリスの気分に合わせてあげる
基本的には人懐っこい性格のシマリスですが、神経質で臆病な面もあるため、最初は警戒してしまう子もいます。
また、しつこく接したり、飼い主の気分でケージから出し入れされたりすることに、ストレスを感じる場合があります。噛みついてくるときは「今は遊ぶ気分ではない」と察し、放してあげましょう。シマリスの気分に合わせてスキンシップを取ることが、仲良くなるための近道です。
シマリスの赤ちゃんは成体より飼育が難しい
赤ちゃんから育てると、より飼い主と深い絆で結ばれるでしょう。そのため、赤ちゃんから育てたいと思っている人も多いはずです。
しかし、成体より飼育が難しい赤ちゃんシマリスは、正しい知識と覚悟を持って飼育に挑む必要があります。どのように育てたら良いのか、基本的な飼育のポイントを解説します。
しっかり保温しよう
成体のシマリスは、涼しい環境を好みます。しかし、赤ちゃんはその逆で、暖かい環境を整えてあげなければなりません。適温は28℃前後です。
プラスチックケースや水槽など、四方が囲まれて保温しやすいものに入れると、温度をキープさせやすいですよ。
餌
人間の赤ちゃんと同じように、シマリスの赤ちゃんもミルクからスタートし、少しずつ固体の餌へと移行させていく必要があります。与え方のポイントは、以下のとおりです。
ミルク
ペット用粉ミルクを使用します。口が小さいので、スポイトを使って与えると飲ませやすいですよ。体が小さく、一度にたくさんは飲めないため、焦らず様子を見ながら与えていきましょう。
離乳食
生後1ヶ月~1ヶ月半くらいになると、徐々に離乳食に挑戦させても大丈夫になります。お湯でふやかしたペレットや、ペット用クッキーなどを使うと良いでしょう。今まで飲んでいたミルクに混ぜる、という手段もありますが、これはあまりおすすめしません。
なぜなら、食べ慣れていたものが別の味になることで、今までのミルクも飲んでくれなくなる可能性があるからです。離乳食をスタートさせたばかりの頃は、ミルクと離乳食をどちらも与えていくことになるでしょう。そのため、2つをまったく別の食べ物だと認識させた方が、何も食べてくれないというトラブルを避けられます。
病気に注意
まだ体が弱い赤ちゃんは、病気にかかりやすい傾向があります。環境の変化によって病気にかかり、数日で亡くなってしまう子も珍しくはありません。毎日の体調管理をしっかり行ない、少しでも異変があれば、病院で診てもらうようにしましょう。
シマリスとの上手な付き合い方を教えてくれる本3選
初めてのことだらけで分からない、という人であれば、シマリスの飼い方が分かる本を持っていると安心ですよね。ここでは、シマリスの飼い方が分かる、おすすめの本を3冊紹介します。
リス:住まい、食べ物、接し方、病気のことがすぐわかる!
シマリスを飼ううえで、必要な情報がしっかりまとめられています。ビギナー向けに分かりやすく書かれているため、初めての飼育でも、心強い味方となってくれるでしょう。可愛い絵や写真がたくさん掲載されているのも、見どころのひとつです。
リス暮らしの本
シマリスを中心に、リスの飼い方をまとめた本です。リスを飼っている「リス暮らしの先輩」たちの声も多く掲載されているため、よりリアルな飼育事情を知ることができるでしょう。可愛い写真だけでなく、優しいタッチで描かれたイラストにも注目です。
リスクラブ―シマリスの飼い方
シマリスを飼いたいと思ったらこの本!と言われるほど、人気のある本です。シマリスを迎える準備から、ペットショップで選ぶときに見ておくべきポイント、飼い方のノウハウまでの一通りを知ることができます。専門的な書き方ではなく、分かりやすく書かれているのも魅力のひとつですよ。
正しい方法が分かればシマリスの飼育は難しくない
シマリスは、見た目だけでなく、その性格もとても可愛らしい動物です。人懐っこいので、手や肩に乗ってくれることもあるでしょう。これだけ愛らしいと、ペットとして人気があるのも納得ですね。
しかし、油断は禁物です。ひとたび接し方を間違えると、お互いの関係に溝を生む可能性もあります。良好な関係を保つためには、シマリスのことを正しく理解すること、そして飼い主本位の接し方にならないことが大切です。
困ったときは、シマリスの飼育書を参考にしてくださいね。きっと、飼い主を力強くサポートしてくれるはずですよ。