ハリネズミは、ペットとして人気の動物ですが、飼い方が分からないと躊躇してしまう人も多いでしょう。しかし、正しい飼育方法さえ分かれば、一人暮らしでも安心して飼うことができます。今回は、初心者でも分かるよう、ハリネズミの飼い方を基礎から解説します。
目次
ハリネズミはどんな動物?
ハリネズミは、モグラ目ハリネズミ科ハリネズミ属に分類される動物です。「ネズミ」という名前がついているものの、モグラの仲間だというのは驚きですね。そのため、マウスやハムスターのようなげっ歯類とは異なります。
平均的な大きさは、体長17~24cm、体重200~700g程度です。一番の特徴は、背中一面に針があるところでしょう。これは、毛が硬く変化し、針のように尖ったものです。普段は針を寝かせていますが、敵から身を守るときや、ストレスを感じているときなどに針を立てます。
特徴
ハリネズミには、いくつか種類があります。見た目の違いだけでなく、原産国の違いもありますが、日本でメジャーなのはたった1種のみです。なぜ他の種類は知られていないのか、それは以下のような理由が関係しています。
日本で飼育可能なのは1種類のみ
日本で飼育可能なのは、ピグミーヘッジホッグと呼ばれる種類のみです。後足の指が4本なことから「ヨツユビハリネズミ」と呼ばれることもあります。
過去に飼育されていた品種3種
現在は、日本での飼育はピグミーヘッジホッグのみとなっていますが、規制される前は、他の種類のハリネズミもペットとして販売されていました。どんな種類がいたのかを3種紹介します。
- ナミハリネズミ
- アムールハリネズミ
- オオミミハリネズミ
ヨーロッパハリネズミとも呼ばれます。原産国はヨーロッパで、一般的なハリネズミより少し大きめなのが特徴です。ペットとして輸入されたものが野生化している事例があり、特定外来生物となっています。
マンシュウハリネズミとも呼ばれます。アジアに生息しており、比較的細身な顔が印象的です。また、お腹の毛が白いのも、アムールハリネズミならではの特徴だと言えるでしょう。現在は、特定外来生物に指定されています。
インドやアフガニスタンなどに生息するハリネズミで、名前のとおり大きな耳が特徴です。一般的に、ハリネズミは暑さにも寒さにも弱いのですが、オオミミハリネズミは、体にこもった熱を外に逃がしやすい性質を持ちます。そのため、野生は砂漠地帯に巣穴を掘って生活をしているようです。
■参考:env.go.jp
寿命
平均寿命は、約5~10年です。もちろん、飼育状況によって変わります。しっかりお世話をし、ストレスフリーな環境で育ててあげれば、10年以上元気で過ごしてくれる可能性もありますよ。
性格
背中にたくさんの針を持っているため、攻撃的な印象がありますよね。しかし、常に攻撃的なわけではありません。普段のハリネズミの性格には、以下のような特徴があります。
臆病で怒りっぽい
臆病なので、自分を守るために針を立てて威嚇します。飼い主が手を差し伸べただけで攻撃されると警戒し、背中の針を一気に立てることもあるでしょう。頻繁に針を立てる姿を見ると、短気なようにも感じられますが、実際はただ怖いだけなのかもしれませんね。
甘えん坊
人に慣れやすいタイプの子であれば、自分から甘えてくることがあります。犬のように仰向けになり、お腹を見せることもありますよ。警戒心が強いハリネズミが無防備な姿を見せると、とても可愛く感じますね。しかし、一般的に警戒心が強い動物なので、甘えん坊タイプは少数派だと言えるでしょう。
孤独を好む
単独で生活をすることを好む傾向があるため、必要以上にかまわれるのを嫌う傾向があります。回し車でずっと走っていたり、手を差し伸べても無視したりなど、マイペースな姿が見られます。
ハリネズミを迎える前に揃えておきたいグッズ
ハリネズミを迎えるためには、飼育環境を整えてあげることが大切です。まず、どんなものを揃えてあげたら良いのかを紹介します。
ケージ
ペットショップやホームセンターに販売されている、小動物用ケージで大丈夫です。熱がこもりにくいため、夏の暑さ対策にもうってつけです。底のトレーが深いものを選べば、床材の飛び散り防止にもなりますよ。
しかし、風通しが良い分、冬の温度調整が難しくなるのが難点です。寒さが厳しい時期は、水槽を利用した方が飼育しやすいかもしれませんね。
床材
床材は、ハリネズミにとってトイレにも寝床にもなるものです。万が一、口に入っても大丈夫な素材でできているものを選んであげてください。なかには、スギやヒノキなどの針葉樹にアレルギーを持つ子がいます。
シェルター
ハリネズミは夜行性なので、日中は巣穴でひっそりと眠っています。そのため、安心して眠れるようなシェルターを用意してあげましょう。太陽の明かりや照明などが当たらないよう、体をすっぽり覆うくらいのサイズが適切です。
トイレ
自分で決めた場所でトイレをする習性があります。そのため、トイレの場所を固定できるよう、トイレスペースを作ってあげましょう。床材で埋まる程度の浅いトレーを用意してあげるのがおすすめです。
温度調整グッズ
ハリネズミは、自分で体温調節をするのが苦手です。そのため、適温を維持できるよう、温度調整グッズを用意しましょう。ケージに取り付けるものや、ケージの中に入れておくものなど、様々なグッズが販売されています。使いやすいものを選び、夏用と冬用でそれぞれ揃えておくと安心です。
初心者でも大丈夫!ハリネズミを飼ったら行なう基本的なお世話
無事にハリネズミを迎え入れたら、どんなお世話をしてあげれば良いのでしょうか?ここでは、日常的に行なうお世話について解説します。
1日1~2回の餌やり
ハリネズミ用フードが販売されているので、それを主食にしましょう。目安は1日1~2回程度で、夜行性ということから夜に与える人が多いようです。1回の食事量が少ない子は、朝と夜の2回に分けた方が食べてくれるかもしれませんね。
ハリネズミ用フードは、ドライタイプが多く販売されていますが、どのように与えたら良いのでしょうか?餌やりのポイントを2つ紹介します。
若いうちは水でふやかして与えよう
野生のハリネズミは、ミミズやコオロギなどの虫を食べて生活しています。そのため、硬いものを食べる習慣がなく、ドライタイプは食べづらいと感じる可能性があるでしょう。
まだ噛む力が弱い若い子や、食が進んでいない子は、水でふやかしたものを与えてみてください。食べやすくなることで、食が進むことがありますよ。
成長したらドライのままで与えよう
ある程度噛む力が身に付いてくれば、ドライタイプのままでも食べられるようになります。噛むことで口内ケアもできますよ。
副食(おやつ)も用意してあげよう
ハリネズミ用フードを与えていれば、基本的に必要な栄養は摂取できます。しかし、栄養を補うため、あるいはおやつとして副食を用意してあげることも大切です。
大好きなおやつを用意すれば、ハリネズミが喜んで駆け寄ってくるかもしれませんよ。
ハリネズミが好きな副食(活きエサ)
ハリネズミが大好き活きエサは、以下のようなものがあります。
- ミルワーム
- コオロギ
- ピンクマウス
- etc
爬虫類や熱帯魚、肉食動物用にこれらのエサが販売されています。一般的なスーパーにはないので、ペットショップに行って探してみてくださいね。
また、農薬などで土壌が汚染されていなければ、野外で採集したバッタやナメクジ、カタツムリなども使えます。そのため、自然に囲まれた環境は、ハリネズミにとっておやつの宝庫と言っても良いでしょう。
人間の食品で食べられるもの
虫が大好きなハリネズミですが、抵抗があってとても与えられない、という人も多いでしょう。また、ずっと同じフードばかりで飽きてしまう子もいます。
そんな場合は、人間の食品を与えることも可能です。スーパーで簡単に手に入り、かつハリネズミが食べられる食品には以下のようなものがあります。
- ささみ
- ゆで卵
- レバーやハツ(新鮮なら生でも可)
- チーズやヨーグルト
- 野菜(ニンジン、サツマイモ、小松菜など)
- 果物(りんご、バナナ、梨など)
毎日水を取り替える
とてもデリケートなハリネズミは、飲み水が汚れているだけでストレスを感じてしまいます。そのため、常に新鮮な水を用意してあげることを心がけてください。
特に、夏場は1日中同じ水だとぬるくなります。美味しい水を飲ませてあげられるよう、適度に新しいものに取り替えてあげましょう。
トイレ掃除をする
ハリネズミの糞は、それほど強いニオイではありません。しかし、ずっと放置しているとニオイがきつくなってくるので、1~2週間に1回程度は掃除してあげてください。
汚れがひどい場合は、もう少し短いスパンで掃除をしても良いですが、あまりきれいにし過ぎると、ハリネズミ自身のニオイが薄まってしまいます。ケージ内で落ち着いて過ごしづらくなり、ストレスの原因となるため、適度に掃除をすることを心がけましょう。
週1回程度で床材交換
トイレをしたり、飲み水をこぼしてしまったりなど、床材は次第に汚れてきます。ハリネズミにとって寝床でもあるものなので、定期的に新しいものに取り替えてあげましょう。頻度としては、週1回程度が最適です。
ハリネズミと仲良くなるためのコツ
夜行性なので、スキンシップを取る時間がなかなか作れないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。もとから単独行動を好む傾向があるハリネズミと仲良くなるには、少しずつ距離を縮めていく必要があります。
人懐こい犬のように、すぐに仲良くなることができないケースも多いので、焦らず着実に絆を深めていきましょう。では、具体的にどういったスキンシップを取れば良いのでしょうか?ハリネズミと仲良くなるためのコツを紹介します。
寝ていないときにスキンシップを取る
日中は、光が当たらないよう身を隠して眠っています。そんなハリネズミに対し、無理矢理スキンシップを取ろうとすると、ストレスを与えてしまう可能性があります。
仲良くなる第一歩として、ハリネズミの生活スタイルに合わせてあげることが大切です。そのため、ハリネズミが起きて活動しているタイミングで、スキンシップを取るようにしましょう。
針攻撃を受けないようストレスに注意する
ストレスを感じると、針を立てて攻撃的な姿勢をとります。仲良くなろうとしているのに、ハリネズミがストレスを感じているのを目の当たりにすると、飼い主としてはショックですよね。
ストレスを感じやすい状況
夜行性なので、基本的に明るい状況を嫌います。直射日光が当たらない場所にケージを置いたり、夜も間接照明などの柔らかい明かりにしたりなどの工夫をしましょう。また、臆病な性格から、大きな音や突然触られるなどの行為も苦手です。
ストレスを感じたときの行動
よく見られるのは、針を立てて身を守る行為です。ハリネズミならではの精一杯の抵抗でしょう。また、「シューシュー」と鳴いたり、緑色の便が出るなどの特徴も見られます。
手のひらに乗せる
ハリネズミは、手に乗るのが大好きです。手に乗せることで、飼い主のニオイを感じられるので、効率よく距離を縮められる可能性があります。手の上で自由に遊ばせるだけでなく、直接手でエサを与えてみるのも良いでしょう。
ハリネズミを飼うときの注意点
ハリネズミは、基本的に飼いやすいペットであるため人気です。お世話も簡単で、神経質になる必要がないため、一人暮らしでも安心して飼えるでしょう。しかし、そのなかでも気を付けなければならないポイントがいくつかあります。
針に刺さらないよう注意
ハリネズミの針は、先端が少しだけ湾曲しています。この返しの影響で、一度刺さると抜けにくくなるため、触るときは針に刺さらないよう注意してください。
病気に注意
ハリネズミがかかりやすい病気は、以下の4つがあげられます。これらを意識して、日常的に健康管理を行なったり、予防したりすることが大切です。
ふらつき症候群
その名の通り、足が震えてぎこちない歩き方になる病気です。特に、後足に震えが出ることが多いようです。原因や治療法は明確になっていませんが、現状では栄養不足が原因ではないかと考えられています。
そのため、日頃の栄養管理をしっかり行なうことが予防につながるでしょう。
アレルギー
床材の解説でも触れましたが、ハリネズミのなかには、木材の種類によってアレルギーを発症する子がいます。くしゃみや鼻水などの症状だけでなく、顔やお腹、足などの木材に触れる部分がただれることもあります。アレルギーと疑われる症状が見られたら、すぐに床材を取り替えてください。
ダニ症
ダニ症は、ハリネズミの病気で一番多く見られると言っても過言ではありません。小屋の中にダニが発生し、それがハリネズミの体に移ることで発症することが多く、毛や針が抜け落ちたり、針の部分にかさぶたができたりといった症状が見られます。
小屋の中はきれいに掃除をし、ダニ取りグッズを置いておくことで予防可能です。また、他のハリネズミからダニが移ることもあるため、複数匹飼っている人は、それぞれの体をしっかりチェックしてあげてくださいね。
歯周病
高齢のハリネズミに多く見られる傾向があります。症状は人間と同じで、歯ぐきの腫れや歯が抜けるなどが見られます。以前より食べる量が減ったり、硬いものを食べようとしなくなったりしたら、一度口内をチェックしてあげてください。
健康管理
長生きしてもらうため、ハリネズミの健康管理を行ないましょう。具体的なポイントは、以下のとおりです。
体重測定
一般的なハリネズミの体重は200~700g程度なので、その範囲内であるかをチェックしましょう。もちろん、個体差があるため、700gを超える子もたくさんいます。明確な肥満の基準がないため、なかなか判断ができない人も多いでしょう。肥満かもしれないと思ったら、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 脂肪が邪魔することなく丸くなれない
- 自分でグルーミングができない
- 歩くときお腹が地面につく
- 首回りや足などに脂肪がついている
これらのポイントに当てはまる場合、肥満体型となっている可能性が高いと言えます。普段の食事を見直したり、体を動かすのが楽しくなるよう回し車を用意してあげたりなどの対策を取りましょう。
食事
基本的に、ハリネズミ用フードは高タンパク高カロリーで作られているため、それだけでも十分な栄養を摂取することが可能です。しかし、日々の運動量によっては不足することも考えられるため、適度に副食与え、栄養補給を行ないましょう。
お風呂・爪切り
体臭が少ないため、基本的にお風呂は必要ありません。しかし、ニオイがきついと思ったときには、お風呂に入れてあげても良いでしょう。
野生のハリネズミは、穴を掘ったり地面を歩いたりするうちに、自然と爪が削れていきます。しかし、ペットとして飼われている子は削れることがなく、どんどん伸びてしまうため、飼い主がきちんとケアしてあげることが大切です。
温度・湿度管理
ハリネズミにとって快適な温度・湿度は、以下のとおりです。
- 温度:24~29℃
- 湿度:40%以下
比較的温暖で乾燥した環境を好みます。そのため、冬は特に温度管理に注意が必要です。また、湿度は低めを好みますが、極端に低いと乾燥するので、適度な環境を保ちましょう。
夏の暑さ対策
温度が30℃を超えると、夏眠します。体温が高くなったり、ぐったりしたりなどの症状が見られ、明らかに元気がない状態になる恐れがあります。そのため、暑さ対策を行なうことが大切です。
暑いからとクーラーをつけていると、涼しくなりすぎる可能性があるので、注意してください。暑さ対策としてできる例をいくつか紹介します。
- エアコンの設定温度を20℃後半にしておく
- 部屋の空気を循環させる
- 水を小まめに替える
- 保冷剤をケージに入れる
冬の寒さ対策
暑さだけではなく、寒さにも弱い特徴を持ちます。大体20℃程度を下回ると冬眠し、体を丸めて動かなくなったり、手足が冷たくなったりします。そのため、以下のような寒さ対策を行なうことが大切です。
- 暖房で室温を調整する
- ケージ内にペット用ヒーターを入れる
- 小屋にタオルを使用している場合は、厚みがあるタオルにする
ヒーターなどの熱源は、ハリネズミを低温やけどさせる恐れがあります。熱源に触れられないような位置に配置するなどの工夫をし、安全に過ごせるよう配慮してあげてくださいね。また、冬は乾燥しやすいので、湿度もしっかりチェックしましょう。
診察可能な病院を探しておこう
犬や猫に比べ、ハリネズミを診てくれる病院は少ない傾向があります。万が一に備え、飼う前にハリネズミを診察してくれる動物病院を探しておきましょう。
ハリネズミの飼い方が分かるおすすめ本3選!
手間がかからず、比較的飼いやすいペットとして人気のハリネズミですが、初めての飼育となるとやはり不安ですよね。そこで、ハリネズミの飼い方がよく分かる本を3つ紹介します。家に1冊置いておけば、分からないことをすぐに調べられて便利ですよ。
ハリネズミ 完全飼育
ハリネズミの生態から飼い方まで、徹底的に解説している本です。基本的な内容がしっかり書かれている飼育書なので、初めての飼育でも安心ですね。
ハリネズミ飼いになる
可愛い表紙が印象的な本です。飼い方だけでなく、ハリネズミと楽しい生活を送るにはどうしたら良いか、という観点で書かれている部分もあります。どうすれば一緒に遊べるのか、どうすれば可愛い姿を写真に収められるのかなど、実用的な内容が豊富なので、ハリネズミとの生活を豊かにしてくれること間違いなしです。
かわいいハリネズミと暮らす本
初心者向けに書かれたハリネズミの飼育書で、難しい単語が少なく、文章が短いため理解しやすいと好評です。飼い方や病気についてなど、飼育するうえで知りたい基本的な情報がまとめられています。
飼育中はもちろん、ハリネズミを飼う前の心構えとして見ておくのも良いかもしれませんね。
基本を押さえればハリネズミの飼育は簡単!
犬や猫に比べ、ハリネズミの飼育数はまだまだ少ないのが現状です。そのため、生態や飼い方が分からず、不安を抱く人も多いでしょう。しかし、普段のお世話は簡単なので、それほど身構えなくても大丈夫です。
お風呂は入れても入れなくても良いですし、おやつとして虫を与えることえおどうしても避けたいという場合は、人間の食品で代用しても良いでしょう。手がかからないため、一人暮らしの人や、初めてペットを飼う人にも人気ですよ。
少々怒りっぽい面も見られますが、とても愛嬌があって可愛らしい動物です。興味がある方は、上記の飼育書を参考に、飼育にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。