犬が低く唸るのを見ると、噛みつかれてしまわないかと怖い思いをしたことがある人はいませんか。なかには、普段温厚な愛犬が急に唸ったことに、戸惑いを隠せなかった人もいるでしょう。では、犬が唸る理由にはどんなものがあるのでしょうか?今回は、犬の唸りについて解説するとともに、改善させるためのしつけについても紹介します。
目次
犬が唸るのはなぜ?考えられる理由8つ
犬が牙をむき出しにして唸っている姿を見ると、怒っているとイメージする人がほとんどではないでしょうか。
しかし、犬の唸りには、いくつかの理由があります。怒りだけではないため、他にどんな理由があるのかも理解してあげましょう。
縄張り意識による唸り
犬は自分のテリトリーを持っています。自分より上の立場である飼い主なら許せても、他の犬や見知らぬ人がそのテリトリーに入ろうとすると、怒りを露わにして唸ります。
「私のテリトリーに入ってくるな!」という犬ならではの主張でしょう。頻繁にマーキングをする縄張り意識が強い子は、この理由による唸りがよく見られるかもしれませんね。
喧嘩による唸り
敵対する犬がいれば、喧嘩による唸りの可能性があります。縄張りを守ろうとするときや、獲物をめぐって争っているときなどに、喧嘩の姿勢を見せます。
母性による唸り
妊娠中の犬や、子育て中の犬が唸る場合は、母性によるものだと考えられます。我が子を守りたい気持ちは、人間も犬も同じです。
そのため、他の犬や知らない人が近づくと、我が子を庇うようにして唸り声をあげます。
恐怖心や不安から来る唸り
恐怖や不安を打ち消すため、またその気持ちを飼い主に伝えるため、唸り声をあげる子もいます。
どんなことに恐怖や不安を抱くかは犬によって様々なので、愛犬の性格を考えて対処してあげる必要がありますが、多くの犬に見られるのは以下のケースです。
寝てる時
寝ているときの静かで暗い環境に、ふと恐怖を抱く子もいます。唸ることで、心細い気持ちを紛らわせたり、飼い主に気づいてもらおうとサインを送っているのでしょう。なかには、怖い夢を見て唸っている子もいるかもしれませんね。
抱っこしようとする時
愛犬とスキンシップを取ろうと抱っこをしたときに、急に低く唸り始めることがあります。これは、抱っこの姿勢が気に入らないという主張や、抱っこが嫌だという主張の表れだと言われています。
過去に、抱っこで落とされたことがあるなどのトラウマを抱えていると、その恐怖心から唸り声をあげることがあります。
自分の優位性をアピールする唸り
犬は序列を大切にする動物なので、自分の方が立場が上だというアピールをします。飼い主と対等、あるいは自分の方が上だと判断すれば、飼い主に対しても唸ります。
所有物を守る唸り
おもちゃやエサなど、自分の所有物を取られるのを阻止するために唸ります。何か物に触ったときに唸る場合は、それを取り上げられたくないという意思表示だと言えるでしょう。
遊びの唸り
じゃれ合っているときなどにも唸ることがありますが、これは怒りや威嚇とは全く別の表現です。判断がつかない場合は、鼻の上にシワが寄っているかどうかを見てください。シワがない唸りであれば、それは遊んでいる証拠です。
防護性の唸り
番犬タイプの子に多く見られる唸りです。知らない人が家に近づくと、飼い主の身の危険を案じて唸り、威嚇します。飼い主を守ろうとする犬の忠誠心がうかがえる唸りですね。
唸りながら噛むのにはどんな意味がある?
犬のなかには、唸りながら噛みついてくる子もいます。鋭い牙を向けられると、可愛い犬でも恐怖を感じますよね。家族だけでなく、知らない人や他の犬に対してケガをさせる恐れがあるため、直ちにしつけをしなければなりません。
では、犬はなぜ唸るだけに留まらず、噛みついてくることがあるのでしょうか。その理由には、以下のようなものがあります。
攻撃や威嚇を意味している
攻撃的になっている犬は、唸る、吠える、噛みつくの3つが一連の動作になります。これは動物の本能だと捉え、まずはそれを理解してあげることが大切です。そのうえで、本能をむき出しにする必要がないとしつけていきましょう。
野生の犬と違い、ペットの犬には狩猟の習慣がありません。自分の居住スペースも用意されており、エサももらえる環境なので、縄張りを守ろうと必死になる必要もないのです。
それを飼い主が教えてあげることで、当たり前となっている一連の動作をしなくなることが期待できます。
遊びのつもりでやっている
相手にケガをさせるつもりではなく、遊びのつもりで噛みついている子もいます。そのため、甘噛み程度の力加減で噛みつくことがほとんどでしょう。
それが可愛いと思う人も多いかもしれませんが、見逃していると習慣化し、エスカレートする可能性があります。例えば、ストレスを感じたとき、普段の甘噛みより少々強い力で噛んでも大丈夫、と勘違いする恐れがあるため、早めにやめさせることが大切です。
歯がかゆい
人や犬に対してではなく、ソファーや犬小屋などをガリガリと噛む子がいます。敵対するものがいない状態で噛みつくのは、歯がかゆいと感じているからかもしれません。
主従関係の逆転
「わがままを聞いてくれないと噛みつくぞ!」という愛犬の主張が考えられます。基本的に主従関係がしっかりしていれば、こういった理由で噛みつくことはありません。
しかし、日常生活のなかで、いつの間にか主従関係が逆転してしまうと、徐々に愛犬が自分の優位性をアピールし始めます。飼い主を恐怖で従わせようと牙をむいてくるので、直ちに関係修復を行なう必要があります。
苦しそうに唸るのは病気かも
苦しそうに唸り、噛みついてくるのは、愛犬が何らかの病気を抱えている可能性があります。具体的にどんなケースが考えられるのか、例をいくつか紹介します。
体に痛みを感じている
擦り傷や関節の痛みなど、体のどこかに痛みを感じている場合です。「クンクン」と甘え鳴きをする子もいますが、なかには低く唸り始める子もいます。
じっと動かず唸るだけの状態の場合は、体のどこかに異変がないか見てあげましょう。
衰えから来る不安
老化が始まると、徐々に視力や聴力が低下していきます。今まで当たり前に見えていたものが見えなくなってきたり、飼い主の声が遠く感じたりすることで、犬は恐怖心を抱きます。
同時に神経質になるため、近づこうとすると唸ったり、触れたことで驚いて噛みついたりすることがあります。
痴呆
痴呆になると、飼い主の判断ができなくなる可能性があります。そのため、まるで知らない人に敵意を向けるように唸り始めたり、噛みついてきたりすることも珍しくありません。
脳疾患
脳腫瘍などの脳疾患を患うと、自分の意思とは関係なく、噛みついてしまうことがあります。しつけで直せるものではないので、愛犬が脳疾患を患っている場合は、接し方に注意が必要です。
犬が唸るのをやめさせるためのしつけ方
犬が唸る理由は様々ですが、周りの人や他の犬に対し、ケガをさせたり、恐怖心を植え付けたりする恐れがあります。そのため、できるだけしつけで唸りをやめさせることが大切です。
正しくしつけるためには、どんな理由で唸っているかを理解することが重要となってくるので、まずは原因を突き止めましょう。そして、唸る理由に合わせてしつけを行なうことで、スムーズに唸るのをやめさせることが期待できます。
犬の唸りに対するしつけは、唸らなかったらご褒美をあげる、というのが基本です。唸らなければ良いことがあると覚えることで、自然と唸りが減っていくでしょう。では、唸る理由に合わせて、それぞれのしつけポイントを解説します。
気を逸らして縄張りを作らせない
縄張りによる唸りの場合、犬の本能的な部分となるため、多少は見逃してあげることも大切です。しかし、複数匹飼っていたり、家族が多かったりすると、家庭内で縄張りを作られても困りますよね。
喧嘩ではなく仲良くする楽しさを教える
他の犬を、敵ではなく味方だと認識してくれれば、唸ることも少なくなるはずです。「一緒に遊ぼう」と飼い主の方から仲良くするきっかけを作ってあげることで、他の犬との交流を楽しいものと覚えてくれるでしょう。
今にも飛びかかりそうな激しい唸り方をする場合は、何を言っても聞かない可能性があるため、その場から立ち去るのも有効な手段です。
恐怖による唸りは恐怖に慣らして改善する
恐怖を感じているとき、飼い主が優しく寄り添ってあげることも大切です。しかし、それが当たり前になると、臆病な気持ちに甘えて頻繁に唸るようになる可能性があります。
唸りをやめさせるだけでなく、愛犬に強くなってほしいと思うのであれば、ある程度の恐怖心に耐性をつけさせることが大切です。
突然大きな音を立ててみたり、背後から忍び寄ってびっくりさせたりした後、驚いた愛犬に「何もないから大丈夫だよ」と優しく声をかけてあげましょう。そうすることで、怖いと思ったことは意外と平気なものだと覚えさせるのです。
飼い主が優位に立ってしつける
序列を大切にするため、飼い主がしっかり優位に立てば、愛犬をしつけることができるはずです。家族全員が自分より立場が上なのだと覚えれば、家庭内で立場を主張して唸ることもなくなるでしょう。
すでに立場が上の人間が、愛犬に「家族に唸ってはいけない」と教えてあげることや、犬より下の立場にならないよう注意することが大切です。
アメとムチでしつける
愛犬が唸るから、物を取り上げないというのが当たり前になると、犬はどんどんわがままな子になってしまいます。唸ったからと言って、ダメなものはダメなのだと教えてあげることが大切です。
すると、飼い主が自分より上の立場だと再認識したり、わがままが通らないと理解したりします。所有物を素直に渡してくれたら、ご褒美を与えて褒めてあげましょう。
興奮状態から落ち着かせる
遊びによる唸りは、攻撃的な姿勢になっているわけではないため、比較的危険性が低いと言えます。しかし、エスカレートすると噛みついてくることがあるため、放置しておくのは危険です。
あまりにも興奮しているようであれば、名前を呼んだり、別の場所に移動したりして落ち着かせましょう。
きちんと落ち着くことができたら、褒めてあげることも忘れないでくださいね。
「大丈夫だよ」と言い聞かせる
飼い主を守るために唸っている場合は、飼い主自身が「大丈夫だよ」と言い聞かせてあげることが大切です。犬に対し飼い主が落ち着いて対応すれば、犬は安心することができます。
唸りだけでなく噛む癖も直そう
なかには、唸るだけでなく、人や犬に対して噛みつく子もいます。それを容認していると、癖になって直すのが難しくなるため、早急にやめさせましょう。
唸ったり、牙を見せて噛みついてきそうになったら「ダメ!」と叱り、唸りをやめたらすぐに褒めます。この繰り返しで、少しずつ噛み癖も直ってくるでしょう。
犬が夜になると唸るのはなぜ?考えられる原因と対処法
日中は何ともないのに、なぜか夜になると唸り始める子もいますよね。その原因をいくつか紹介します。
不安を感じている
夜になると、不安を感じて心細くなってしまう子がいます。そのため、唸るだけでなく、甘え鳴きをして、飼い主に不安を訴える姿も良く見られるでしょう。そんなときはどう対処すれば良いのでしょうか。
部屋を真っ暗にしない
真っ暗だと、不安な気持ちがより強くなってしまいます。特に、犬は聴覚が敏感です。真っ暗ななかで急に物音がすると、日中とは比べ物にならないくらいの恐怖を感じるでしょう。
そんなときは、豆電球や間接照明などをつけてあげるのがおすすめです。明かりが柔らかいので、睡眠を妨害することもないでしょう。
寝るまで傍にいてあげる
部屋を真っ暗にしていなくても、唸りが止まらない場合は、飼い主が傍にいてあげてください。「大丈夫だよ」と声をかけたり、頭を撫でてあげたりすることで、安心して眠ることができるでしょう。
空腹を感じている
人間でも、お腹がすきすぎて眠れないことがありますよね。それと同じように、空腹から眠ることができず、唸り始める子がいます。そのときの対処法は以下の2つです。
食事時間のしつけをしっかり行なう
毎日の食事時間や量を決めておくことで、生活リズムが整い、夜中の空腹を防ぐことができます。忙しさを理由に、日々の生活リズムが乱れていないかを、一度見直してみてください。
気を紛らわせる
お腹がすいているからと言って、夜中におやつを与えるのはおすすめしません。それが当たり前となり、夜食が癖になってしまう可能性があるからです。
空腹を感じているようであれば、飼い主が話しかけたり、撫でたりして気を紛らわせましょう。気持ちも落ち着き、眠れるようになるはずです。
トイレを我慢している
トイレを我慢しているつらさから、唸り始める子がいます。室内であれば、ペットシートを敷いている人がほとんどなので、なぜトイレを我慢する必要があるのかと不思議に思う人もいるでしょう。
しかし、なかにはしつけ上は室内トイレを成功させていたとしても、実は屋外でのトイレを好み、したくてもできない状況にあるかもしれません。
この場合は、愛犬からの「トイレに連れて行って」サインがだと受け取り、外に連れ出してすぐに用を足したということも珍しくはないようです。
トイレに行ける環境を整える
愛犬のタイミングでトイレができるよう、環境を整えてあげましょう。ペットシートを敷いていても我慢してしまう子であれば、ペット用のオムツをつけてみることをおすすめします。
また、トイレまでの道のりにタオルなどを敷いておくと、フローリングの冷たさを感じにくくなり、トイレに行きやすくなりますよ。
部屋を暖める
人間でも、部屋が寒いと動くのが億劫になりますよね。それと同じように、寒くて動くのが嫌になり、トイレを我慢してしまう子がいます。夜が冷えるときは、部屋を暖めてあげてください。
甘えやストレスによる唸り
寂しさから甘えたくなったり、運動不足でストレスを感じていたりすることで、夜に唸り始めることがあります。精神的なことが原因なので、愛犬のメンタルを管理することで回避できます。
落ち着くまでかまってあげる
甘えたいのであれば、思う存分甘えさせてあげましょう。気持ちが落ち着いて寝れるようになるだけでなく、愛犬との絆を深めることもできますよ。
普段から適度な運動をさせる
活発な子にとって、運動不足は大きなストレスです。そのため、散歩時間を十分にとったり、公園でたっぷり遊んだりなど、愛犬が満足するまで運動させましょう。
心が満たされるだけでなく、疲れからぐっすり眠ってくれることが期待できます。
犬が唸るのはいろんな意味がある!原因を理解して正しくしつけよう
犬が唸る理由はひとつではありません。たくさんの意味があり、そのなかには、しつけでは改善させるのが難しいものもあります。唸ったら怒る、という単調な繰り返しでは、一向に改善させることはできないでしょう。
唸るだけでなく、噛みついてくる子もいるので、飼い主は適切な対処を行なう必要があります。まずは、愛犬の気持ちに寄り添い、理由を明確にしてそれぞれに合ったしつけを行なっていきましょう。