千葉県・八街少年院で行なわれている、動物介在活動を知っていますか?「GMaC(ジーマック)」は、非行に走り少年院に入った少年と、人間に捨てられて心に傷を負った保護犬が、訓練を通してお互いに成長し、社会や家庭へ戻るために大切な経験を積むプログラムです。
八街少年院の取り組み「GMaC(ジーマック)」とは?
2014年7月に八街少年院で始まった「GMaC」は、少年の更生教育プログラムの一環の、3ヶ月間に渡る保護犬の訓練です。GMaCという名前の由来は 「Give Me a Chance=ぼくにチャンスを」という意味で名づけられました。
一度は非行に走ってしまった少年の、社会復帰に大切な情緒の育成に期待ができると同時に、処分されてしまうかもしれなかった捨て犬の保護に役立つとして、二重の役目があります。
犬が少年の心の変化を生む
犬には、人間の閉ざされた心を開く不思議な力があります。
GMaCの第一期生として参加したひとりの少年は、18歳の時にグループで振り込め詐欺を行ない、だまし取った金を持ち逃げした者たちに暴行を加えたことで少年院に入っていました。
仲間の裏切りを経験した少年は、他人へ心を開くことができなくなっていました。しかし、GMaCで担当犬の訓練を重ねるごとに、犬へ心を開くことができました。
当初は感情を一切出さなかった少年は、犬と心を通わせたことで、徐々に他者を受け入れることができるようになりました。3ヶ月のプログラムを終える頃には、見違えるほどの表情を見せるようになったそうです。
このときの少年は現在、会社を立ち上げ、少年院や刑務所から出た人の社会復帰を応援し働き場所を提供する「協力雇用主」となっています。
GMaC終了後の犬は?
プログラムに参加する保護犬は、かつて人間に捨てられた経験のある、心に傷を負った犬たちです。そのままでは、殺処分される恐れもありました。
この犬たちもまた、少年との3ヶ月におよぶ訓練によって、人の温もりを感じ、喜びの経験を重ねて、新しい世界へ踏み出すために役立つ「しつけ」を習得することができます。
訓練を終了した犬は、家庭犬として希望する家庭へ引き取られていきます。
GMaCによる少年の成長を綴った本が書籍化
このGMaCの取り組みと少年や犬のその後を追いかけたノンフィクション書籍『ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の再出発』が、2018年9月15日に講談社より発売されました。著者は、これまでに動物介在活動に関する多数の著書をもつ、動物介在プログラムアドバイザーの大塚敦子氏による執筆です。
著者:大塚敦子
定価:1,300円(税別)
動物介在活動で心を通わせよう
アニマルセラピーという言葉もあるように、動物介在活動は情緒の向上や社会的機能を向上させる力があります。命に対する思いやりが養われて、非行少年の再犯防止にも効果的だとも言われています。
欧米では、GMaCと同様の取り組みが何年も前から行なわれ、成果を上げているそうです。少年と犬の再出発を応援するとともに、この活動をもっと広めて、人と犬が心を通わせながら、お互いによりよい未来をひらいていけたらいいですね。
・画像提供:PR TIMES