「猫を飼いたい」と思ったときに、多くの人がまず足を運ぶのがペットショップではないでしょうか。しかし、猫を迎え入れる方法はそれだけではありません。猫を飼いたい人にぜひ知ってほしいのが、「猫の里親になる」という選択肢です。ここでは、猫の里親になるにあたって理解しておきたいメリットやデメリットを詳しく説明したうえで、里親になるための方法や心構えについて解説していきます。
目次
そもそも猫の里親になるとはどういうこと?
里親とは
「里親」とは、人間で言えば、さまざまな事情で親と暮らせなくなった子どもを家庭に受け入れ、親代わりとなって育てる人のことをいいます。
猫の里親の場合も意味は同じで、飼い主の病気や引っ越しなどの理由で飼えなくなったり、ひどい場合には捨てられてしまった猫を引き取って、新しい飼い主として育てる人のことを指します。
ペットショップで購入する場合との違いについて
ペットショップで猫を購入する場合と、里親になって猫を引き取る場合の違いは何でしょうか?もっとも異なるのは、猫の購入にかかる費用です。
ペットショップで血統書付きの子猫を買う場合、猫種や月齢にもよりますが、数万円から数十万円の購入費用がかかります。一方、里親制度を利用する場合、譲渡は原則無償で行なわれます。
ただし、だからといって里親になるハードルが低いわけではありません。ペットショップでは、購入する際に買う側の身元について詳しく問われることはありませんが、里親になる場合は、後述する厳しい条件をクリアする必要があります。
また、猫の年齢や種類なども異なるポイントになります。ペットショップで販売されているのは子猫ですが、里親を募集している猫は子猫だけではありません。
成猫はもちろん、場合によっては老猫も里親を募集しているケースがあります。種類に関しても、ペットショップで売られているのは純血種の猫が多いですが、里親を募集している猫の多くは雑種になります。
猫の雑種は大きく8種類!見分け方に使える柄の特徴とかわいい「ゆめちゃん」を紹介猫の里親になる場合のメリット
里親という選択肢にはどのようなメリットがあるのでしょうか。「猫が好き」「猫と一緒に暮らしたい」と考えている人にぜひ知ってほしい、3つのメリットについてご説明していきます。
保護猫の命を救うことができる
環境省の報告によると、平成29年度に飼い主からの依頼及び所有者不明で引き取られた猫の数は、62,137匹にものぼります。そのうち、殺処分となってしまった猫の数は34,865匹、負傷猫の殺処分数も含めると42,795匹にもなります。
保護される猫の数が保健所の収容限度を超えてしまい、やむを得ず処分されてしまう猫が多くいるという悲しい現実があります。
里親としてこのような保護猫を引き取ることで、可愛い家族を迎え入れるだけでなく失われてしまうはずの命を助けることもできます。尊いひとつの命を守ることができるのは、何にも代えがたいメリットであると言えるでしょう。
参考:環境省自然環境局
無料で譲り受けることができる
前述の通り、里親になる場合は猫を無償で譲り受けることができます。ペットショップとは違い、多額の購入費用を支払わなくても猫を迎え入れることができるのは、大きなメリットとなるでしょう。
ただし、注意点として、猫の飼育に必要なグッズは基本的に自分で揃える必要があります。また、引き取り後に避妊・去勢手術や予防接種が必須となっていることも多く、そのための費用は里親が負担しなければなりません。
既に不妊手術や予防接種が済んでいる猫を譲り受ける場合でも、手術等にかかった費用を譲渡費用として里親側が支払う場合も多くあります。
このように、飼育グッズや医療費などの出費はもちろんありますが、数万円から数十万円する猫の購入費用がかからないという点は、猫を飼いたい人にとっては大きな魅力と言えるのではないでしょうか。
成猫を引き取ることも可能
基本的に、ペットショップで販売されているのは生後数ヶ月の子猫です。子猫は大きくなるにつれて性格が変化していくため、すでに成長して性格がはっきりと分かっている成猫を迎え入れたいという人もいるかもしれません。
里親を募集している猫は、子猫から成猫、場合によっては老猫までさまざまな年齢の猫がいます。提示された条件を里親希望者が満たしている場合には、成猫を引き取りたいという希望を叶えることも可能です。
猫の里親になる場合のデメリット
里親という選択肢には、猫の命を救えるなどの大きなメリットがある一方で、デメリットも存在します。里親を知るうえで、以下の3つのデメリットについてしっかりと理解をしておくことが重要になります。
厳しい譲渡条件をクリアしなければならない
里親になりたいと希望すれば誰でも里親になれるのかというと、そうではありません。里親募集の掲示板や保護団体などでは、保護猫の譲渡に関して厳しい条件を設けており、里親になるにはその条件を満たしている必要があるのです。
具体的な譲渡条件には、以下のような項目が掲げられていることが多いです。
- 猫の一生に責任と愛情を持って育てること
- 経済的に余裕があること
- ペットを飼育可能な住宅に住んでいること
- 猫の飼育に家族が同意していること
- 去勢・避妊手術が済んでいない場合は手術を受けさせること
- 転売や再譲渡などを行なわないこと
- 完全に室内で飼育し脱走防止対策をすること
完全室内飼育に関しては、外での怪我や病気感染、交通事故などのトラブルを防ぐという理由で条件に掲げられていることが多いようです。
うっかりドアや窓の隙間から脱走してしまうことのないよう、柵を設置するなどして対策をすることが求められます。
また、猫を保護している側としては、猫が危害を加えられたり、寂しい思いをしたりすることのないように里親を探します。
そのため、上記の条件を満たしていたとしても、猫をおもちゃのように扱ってしまう可能性のある小さな子どもがいる家庭や、留守である時間が長い家庭の場合などは、その子の将来を想って譲渡が難しくなることがあります。
60歳以上のみの世帯の場合にも、猫の寿命まで飼育できない可能性があるという理由で、譲渡してもらえないケースがほとんどです。
ただし、万が一本人が飼育できなくなったとしても、代わりに猫を引き取って育ててくれる人(高齢者でない)がいる場合には、譲渡可としている保護活動者・団体も多くあります。それぞれの譲渡条件をよく確認してみてください。
一見すると厳しいようにも思える譲渡条件ですが、譲渡後に転売されたり、虐待されてしまうなどの里親詐欺も多いのが現状です。里親を探す側としては、猫の命に責任を持ち、愛情をかけて育ててくれる里親かどうかを慎重に見極める必要があるのです。
必ずしも飼いたい猫を飼えるとは限らない
ペットショップの場合、お気に入りの猫を見つけたら、購入金額を支払って新しい家族として迎え入れることができます。しかし、里親の場合は、飼いたいと思った猫を必ずしも飼えるわけではありません。
とくに、譲り受けたい猫に応募者が集中しているような状況では、その猫を迎え入れるのはより難しくなるでしょう。見た目にかわいい子や人気の猫種などには、里親を希望する人が大勢いることもあるため、好きな猫を簡単に引き取れるわけではないということを理解しておく必要があります。
飼うまでの時間・手間がかかる
里親制度を利用する場合、猫を飼うまでにある程度の時間や手間がかかります。例えば、インターネットの里親募集掲示板を利用する場合は、このような流れになります。
- 飼いたい猫を見つけたら、まずは掲載者に里親の申込みを行ないます。
- その後、掲載者とメッセージのやり取りをします。
- その流れで、譲渡可否や譲渡方法などについての打ち合わせを行なうのが原則です。
保護猫カフェなどで猫を見つけたい場合にも、面談や審査を行ない、譲渡可能と判断された後に譲り受ける猫を決定するという手順を踏みます。
また、いずれの場合も譲渡後にトライアル期間が設けられることがあり、トライアル期間を無事に終了できれば正式な譲渡となります。
保護猫に再び悲しい思いをさせないようにするために、里親を募集する側も譲渡に慎重になるのは当然のことです。そのため、ペットショップで猫を購入する場合よりも、時間や手間がかかるということを心得ておきましょう。
里親になるための方法について
里親募集をしている猫と出会うにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、猫の里親になるための方法についてご紹介していきます。
里親募集掲示板で探す
里親募集掲示板では、たくさんの保護猫たちの中から譲り受けたい一匹を探すことができます。野良猫を保護している人が里親募集しているケースや、飼い主の都合で飼育できなくなった猫を預かって里親募集しているケースなどさまざまです。
猫の種類や性別、都道府県などで検索できる他、ワクチン接種や去勢・避妊手術の有無なども確認できます。自宅にいながら、お気に入りの猫をじっくりと探すことができるのが、里親募集掲示板のメリットと言えるでしょう。以下に、おすすめの里親募集掲示板をご紹介します。
ネコジルシ
ネコジルシは猫のみを扱っている里親募集掲示板です。月齢や性別で検索できるほか、猫の柄や種類を選んで検索することも可能です。
猫の種類で検索した場合は、その猫種に似た雑種も見ることができます。お気に入りの柄や猫種がある人にはとくにおすすめのサイトです。
また、日記やお友達機能、メッセージ機能などといった多彩なコンテンツを利用できるのもネコジルシの魅力です。
既に猫を飼っている場合には、その猫を「My Cats」として登録できるほか、飼い方やしつけなどで困ったときも、質問を投稿すればネコジルシに登録しているユーザーからアドバイスを貰うことができます。
里親になるにあたり、他の猫好きなユーザーとも交流したいという人にはぴったりの掲示板と言えるでしょう。
ペットのおうち
猫以外に、犬や小動物、鳥、熱帯魚・観賞魚なども扱っている里親募集掲示板です。里親募集数・決定数は猫が一番多く、累計里親決定数は2018年12月時点で、7万件を超えています。
保健所に収容されているペットも探すことができるのが特徴です。また、里親決定後、動物病院や猫カフェ、トリミングサロンなどのペット関連施設を譲渡場所として利用できる場合があるのも嬉しいですね。
第三者のいる環境で、掲載者と里親の双方が安心してペットの受け渡しができるように配慮されています。
保健所などが主催する譲渡会に参加する
自治体の保健所や動物愛護センターなどが開催している譲渡会では、里親募集中の猫を実際に間近で見ることができます。猫の容姿や性格をしっかりと確認してから里親応募したいという人におすすめの方法です。
譲渡条件については、各自治体のホームページなどでよく確認するようにしてください。また、猫の飼い方についての正しい知識を身に付けてもらうために、講習会の受講が必要な場合もあります。
保護施設で探す
保護施設でも常時里親募集を行なっています。例として、東京・神奈川・大阪にある保護施設をご紹介します。
【東京】東京キャットガーディアン
生後2ヶ月前後の子猫から成猫まで里親募集を行なっています。里親になるには譲渡条件を満たす必要があるので、よく確認するようにしましょう。また、里親を募集している猫は全て、健康診断・駆虫・3種混合ワクチン・去勢避妊手術が済んだ猫となっています。
譲渡の際、猫自体の費用は無料ですが、これらの手術やワクチン接種等にかかった費用は里親が負担する必要があります。猫を飼うのが初めてという人でも安心できるよう、譲渡後のサポートもありますので、気になる人は一度ホームページをチェックしてみてください。
【東京】ネコリパブリック
2022年2月22日までに猫の殺処分をゼロにすることを目標に、地域の保護団体と協力して里親探しを行なっている保護猫カフェです。東京に3店舗あるほか、岐阜、大阪、広島にも店舗を構えています。
里親になるには、ネコリパブリックの審査基準を満たす必要があります。また、譲渡後は2週間のトライアル期間が設けられており、無事にトライアル期間を終えたら正式な譲渡となります。
保護猫たちの様子はホームページからも見ることができるので、店舗に行く前にどんな猫がいるか見てみたい場合はホームページを確認してみましょう。
【神奈川】たんぽぽの里
開放型保護猫シェルターです。里親を希望する場合、まずは譲渡希望フォームから申し込みを行ないます。その後、シェルターへ出向いて譲渡を希望する猫と実際にお見合いをし、譲渡可否を決定します。
この時、アンケートの記入と身分証明書の提示が必要になるため覚えておきましょう。譲渡が決定したら、猫を迎え入れる準備をし、飼育環境が整った後に譲渡となります。
なお、先住猫がいる場合には、希望すればトライアル期間を設けることも可能です。保護猫の様子や譲渡条件などの詳細についてはブログから確認できるので、チェックしてみてください。
【大阪】ハッピーハウス
公益財団法人日本アニマルトラストが設立した動物の孤児院です。元はシェルターとして設立され、その後規模の拡大とともに動物診療所などが新たに配置されました。
里親を希望する場合、電話予約のうえ施設に見学に行き、面接を受ける必要があります。去勢・避妊手術やワクチン接種については、敷地内にある動物診療所で済ませてからの譲渡となるので安心ですね。
里親は常時募集しているため、気になったら一度施設を訪ねてみてはいかがでしょうか。
【大阪】猫の幼稚園
猫の幼稚園は、自宅兼事務所を利用した保護猫預り所になります。毎週週末にお見合い会を開催しており、実際に猫と触れ合いながら譲り受けたい子を見つけることができます。
なお、お見合い会に参加するには事前アンケートの回答が必要となるので覚えておきましょう。保護猫たちの様子やお見合い会の様子などは公式ブログでも詳しく紹介されていますので、興味のある人はチェックしてみてください。
知り合いや動物病院から譲り受ける
頻度としては低いかもしれませんが、知り合いが猫を保護して里親を探している場合や、動物病院の貼り紙で里親募集の情報が見つかる場合もあります。
猫の里親を希望しているのであれば、こうした身近な人からの情報や、動物病院などから得られる情報にもアンテナを張っておくと良いかもしれません。
契約後のトラブルを防ぐために注意すべきこと
めでたく里親になることが決定したとしても、注意しなければならないことがあります。譲渡の際に、医療費などと称して高額な費用を要求されるケースが、契約後のトラブルとしてよくあるからです。
譲渡までに去勢・避妊手術やワクチン接種が済んでいる場合、そのためにかかった費用は里親の負担となることが多いですが、悪質な場合は、このことを利用して実際の費用以上の金額を要求してくることがあります。
このような詐欺被害に遭わないようにするためにも、手術やワクチン接種の費用相場を知っておくことが肝心です。地域や病院によっても異なりますが、おおよその相場は以下の通りです。
- 避妊手術:約20,000~35,000円
- 去勢手術:約10,000~20,000円
- 3種混合ワクチン接種:約3,000~6,000円
上記の相場を参考にして、譲渡にかかる費用の詳細を、事前に保護活動者・団体等によく確認しておくことをおすすめします。
里親になる際の心構えについて
【画像】:ポペットフレンズのつくだにちゃん
里親に応募する人は、猫が好きで、一匹でも多くの命を助けたいという強い気持ちを持っている人が大半でしょう。ただし、猫の里親になるということは、生半可なことではありません。
里親として猫を迎え入れる前に、本当に自分の手で猫を幸せにしてあげられるのかどうか、もう一度慎重に考えてみてください。
里親を募集している猫は、経緯はそれぞれ違えど、既に一度不幸な境遇に遭っている猫たちです。その猫たちに再び悲しい思いをさせるようなことがあってはいけません。
家族として迎え入れたからには、何があっても、その子の生涯に責任と愛情を持って育てていく覚悟を持たなければならないのです。
とくに、「ペット不可の物件に住んでいるけれど、大家さんに見つからなければ大丈夫」などという考え方の人は里親には向いていません。結局のところ、大家さんに見つかって飼育できなくなり、やむを得ず猫を捨ててしまったというケースもよくあるのです。
今現在住んでいる物件がペット不可であるが里親になりたいと希望するならば、必ずペット可の物件へ引っ越してから里親に応募するようにしてください。
また、猫を譲り受けたものの、家族が猫アレルギーを発症してしまったというケースも少なくありません。こうした万が一の事態も想定し、猫と家族の居住スペースをそれぞれ分離できるようにしておくなどの対策を事前に考えておく必要があるのです。
くれぐれも、「猫アレルギーになってしまったからもう飼えない」となることのないようにしてください。
里親を募集している人や保護団体のスタッフは、一匹でも多くの猫に幸せになってほしいと願い、安心して猫を譲り渡せる里親を探しています。
小さくてもかけがえのないひとつの命を預かる責任を十分に自覚し、最後まで寄り添う覚悟を持つことが、里親になるうえで何よりも重要なのです。
里親という選択肢で一匹でも多くの猫を幸せに
猫を飼いたいと思ったときに、猫を迎え入れるためのもっとも一般的な方法はペットショップでの購入でしょう。しかし、里親に出会えるのを待っている猫が全国にたくさんいるという事実にも目を向けてみてほしいのです。
もちろん、ペットショップで買う場合に比べると、時間も手間もかかるうえに、必ずしも気に入った猫を譲り受けられるわけではありません。しかし、そのままでは失われてしまうかもしれない命を救うことができるのは、何にも代えがたいメリットです。
猫の幸せを第一に考えてあげられる覚悟をしっかりと持てるのであれば、ペットショップに行く前に、里親になるという選択肢も一度検討してみてはいかがでしょうか。
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