犬の打撲の処置・治療法は?腫れや内出血症状や未然に防ぐ対策を解説

診療を受ける犬

愛犬が打撲によって腫れや内出血を起こしているとどう処置したらいいかわからない方もいるのではないでしょうか。犬が打撲をした際は、様々な合併症を引き起こす可能性があるため、その都度適切な処置をしてあげることが大切です。

犬が打撲をしたときの症状3つ

ボール遊びの際に打ち所が悪かったり、机の角に足をぶつけたりなど、人間と同じように犬が打撲をする原因は身近にあります。軽くぶつけた程度であれば、気にせず普段通りに振舞っている子もいるでしょう。しかし、強い痛みが長引く場合、愛犬の様子にも異変が起こります。

打撲をしたときによく見られる症状は、以下の3つです。

ボール遊びをする犬

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歩き方が不自然になる

打撲による衝撃が骨や筋肉にダメージを与えている場合、歩くたびに痛みを感じます。そのため、歩き方がフラフラとしていたり、足を引きずるように歩いたりなどの様子が見られることがあります。

強い打撲によって患部が腫れあがっている可能性もあるため、歩き方が不自然だと感じたときには、すぐにどこか異常がないか足回りや股関節周辺をチェックしてあげましょう。

運動を嫌がる

痛みを感じることから、体を動かすのが億劫になってしまう傾向があります。普段からのんびりしていることが多い子であれば、動かない原因が打撲のせいだとは気づきにくいでしょう。

しかし、活発な性格でよく動く子であるにもかかわらず、急に運動を嫌がるとなると、打撲によってどこかを負傷している可能性が高いといえます。

頻繁に鳴く

遠吠えする犬

痛みを言葉で伝えられない犬は、なんとか異変に気づいてもらおうと頻繁に声をあげるようになります。痛みが強いと「キャンキャン」と高く大きな声を出し、じんじんと鈍い痛みが続く場合は「クンクン」と弱々しい声で甘え鳴きをすることが多いようです。

普段鳴かない子が、何かを訴えているような場合には、体を触って熱を持っている部分や嫌がるところがないかを確認してみましょう。

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犬が打撲をすることで引き起こされるケガや病気5つ

犬が打撲をすると、それが原因で合併症を引き起こす可能性があります。なかには、すぐに病院に連れて行かなければならない重度の場合もあるため、飼い主は事前に症状を理解しておくことが大切です。

具体的にどのような合併症が考えられるのかを5つ紹介します。

骨折

打撲の強い衝撃が骨にダメージを与え、骨折してしまうことがあります。患部は腫れあがり、じんじんとした痛みを伴うため、犬も混乱して頻繁に鳴き出すようになる子が多いでしょう。

適切な処置をすれば、骨折は完治が可能なため慌てる必要はありません。骨折になるほどの強い打撲は、交通事故や落下事故が原因の場合がほとんどです。

しかし、骨が丈夫でない子犬やシニア犬などは、軽い打撲でも骨折してしまう可能性があります。成犬でも、飼い主が見ていない場所で、高所から飛び降りた際に骨折することも考えられるため油断は禁物です。

一言に骨折といっても、症状によって4種類に分けられます。それぞれを簡単に解説します。

  1. 開放骨折:折れた骨が筋肉や皮膚を突き破って外に出ている状態です。骨や筋肉などが外界に触れているため、細菌による感染症を引き起こす可能性があります。
  2. 閉鎖骨折:骨折した部分が完全に皮膚に覆われている状態で、出血などは見られません。
  3. 若木骨折:骨が未発達な若い犬に多い骨折で、若い枝をしならせたような状態が由来となっています。周囲組織の損傷は小さいのが一般的です。
  4. 成長板骨折:未成熟の犬に多く見られ、成長板にのみ損傷を受ける骨折です。
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耳血腫

外傷がもとで耳が腫れる病気を「耳血腫(じけつしゅ)」と呼びます。犬の耳は犬種によって位置や形が異なりますが、構造は同じで薄くひらひらとした耳介を持ちます。

耳を打撲したり、他の動物に噛まれたりなどの外傷が原因で、耳介に血液や漿液がたまって膨れ上がります。熱を持ち、痛みを感じる子もいるため、見た目に分かるほど腫れている場合は、不用意に触らないよう気を付けましょう。

治療は、患部に注射針を刺して血液や漿液を吸い取る「穿刺」か、患部のみを切って余分な液を取り除く「切開」のどちらかが一般的です。

その後は患部を圧迫するように包帯を巻き、再び液がたまるのを防ぎます。傷が塞がるまでの間に感染症を引き起こす可能性もあるため、抗生物質やステロイド剤を注入し、患部の回復を目指します。

膝蓋骨脱臼

膝関節の膝蓋骨、いわゆる「皿」がずれてしまう関節の病気です。打撲などの外傷だけではなく、先天的な異常によっても起こります。症状によって4つの段階に分けられます。

  1. グレード1~2:飼い主が異変に気づくのが難しいほどの軽い亜脱臼
  2. グレード3:獣医師の処置でもとに戻るレベルで、手術の可能性もあり
  3. グレード4:膝蓋骨がほとんど動かなくなるレベルで、手術の可能性もあり

異変を感じるものの、どこが患部か見分けられないこともあるため、医師にしっかり状態をチェックしてもらうことが大切です。

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脳外傷

交通事故や落下事故、他の犬とのケンカなどが原因で頭を打撲すると、脳外傷が起こる可能性があります。症状には以下のようなものが挙げられます。

ケガを負った犬

  • 頭を傾ける
  • 歩行困難
  • 意識低下
  • 痙攣
  • 頭蓋骨変形

打撲の強さによって脳へのダメージが変わるため、見られる症状も様々です。どんな症状が見られるかをもとに検査が行なわれ、出血や脳障害があるかどうかをチェックするため、MRI検査やCT検査が必要な場合もあります。

脳外傷の犬はショック状態になっている場合が多いことから、最初に点滴などの救命治療が行なわれます。その後状況にあわせて適切な治療を行なっていきますが、重度の脳外傷は死亡するリスクも高くなります。

命に関わる病気なので、頭部への打撲があった場合は、迷わずすぐに病院で検査をしてもらいましょう。

脳膿瘍

脳の一部に膿瘍と呼ばれる膿の塊ができる病気です。打撲などの外傷が原因となることがほとんどで、なかには、飼い主の不注意で割り箸や竹串などを口にさせてしまった場合、口内から脳内に貫通することで膿瘍を作ることもあります。

脳内のどこに膿瘍が形成されるかで影響する神経が変わるため、症状も様々です。

状態を的確に判断するためにも、MRI検査とCT検査は欠かせません。軽度であれば、抗生物質の投与や脳圧を下げる治療で改善されることもありますが、重度の場合は開頭手術を行なう可能性もあります。

術後に順調に回復するか、後遺症が残るかは膿瘍ができる場所や手術内容によって異なるため、手術に成功した後も経過をしっかり見てあげることが大切です。

犬が打撲をしたときにとるべき処置3つ

犬が打撲をしたときに、飼い主はどういった対処をするべきなのかを解説します。間違った方法は、打撲の症状を悪化させたり、愛犬を混乱させたりする可能性があるため、正しい方法を理解しておくことが大切です。

愛犬に声をかける

声をかけて落ち着かせる

突然の打撲により、犬は軽いショック状態になります。なかなか鳴きやまなかったり、じっとしていられなかったりなどの混乱が見られるため、声をかけて落ち着かせることが大切です。

混乱状態の犬は、患部以外であっても体を触られるのを嫌がる可能性があります。また、頭部を打撲しているにもかかわらず、普段の癖で頭を撫でてしまうと、それが傷の悪化につながる可能性もあるため、不用意に撫でるのは禁物です。

声をかける際は、落ち着いたトーンで優しく声をかけてあげるように意識しましょう。、パニックになっている愛犬も、安心して心を落ち着けることができるでしょう。

病院で診てもらう

症状が重度であったり、合併症を起こしていたりする場合、すぐに医師に診てもらうことが大切です。適切な処置をしてもらえれば、それ以上に状況が悪化するのを防ぐことができるでしょう。

キャリーケースに入れて運ぶのが不安だという場合は、どのようにして連れて行けば良いのか、不安なことがあれば細かなことでも動物病院に電話で確認してみてください。

患部への衝撃を最小限にして運ぶ方法や、応急処置のやり方を電話越しにレクチャーしてくれます。

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患部を冷やす

患部が腫れていたり、熱を持っていたりする場合、患部を冷やすと痛みを和らげることができます。これは人間も同じですが、ケガをして気が立っている子も、多少は痛みがひいて気持ちを落ち着けることができるでしょう。

水浴びを楽しむ犬

犬の打撲を未然に防ぐための対策3つ

打撲の原因は身近にたくさんあるため、それらを完全に取り除くことはできません。しかし、対策を講じることで打撲のリスクを減らすことは可能です。環境を整えてあげることで打撲を防ぐためにできる対策法を3つ紹介します。

高所からジャンプさせない

ソファーやイスなどの家具は、小柄な犬からすれば高所だといえるでしょう。それらから飛び降りたり、家具から家具に飛び移ったりなどの行為は、打撲だけではなく脱臼や骨折などのリスクにもつながります。

特に、体が小さい犬や骨がもろいシニア犬、活発で家中を走り回る子などは注意が必要です。ソファーやイスなどを使って遊ばないこと、勢いよく飛び降りないことをしつけ、家庭内では落ち着いて過ごせるようにしましょう。

どうしても活発に動き回ってしまう子であれば、ソファーやイスの下に、飛び上がらないで済むようステップ台を置くことをおすすめします。段差が小さくなることで、着地時のケガのリスクを減らすことができるでしょう。

滑りやすい場所で走らせない

フローリングなどの滑りやすい場所で走り回ると、うっかり足を滑らせて打撲をする可能性があります。カーペットやマットを敷いておくと滑り止めになるため、ケガのリスクも減らすことができるでしょう。

そのほか、階段の昇降も滑りやすい危険なポイントとなります。階段の滑り止め対策も忘れずに行ないましょう。

床に散らばっているおもちゃを片付ける

床にあるおもちゃや小物を踏んで転ぶことで、顔や頭部などを床に強く打ちつけてしまう可能性があります。また、足をくじいて骨折することも考えられるため、床はきちんと片付けておくようにしましょう。

愛犬とコミュニケーションをとる

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犬の打撲を甘くみてはダメ!

人間の打撲による内出血は、皮膚が変色して分かりやすいですが、体毛に覆われている犬は内出血をしても見えづらく、気づかないで過ごしてしまう飼い主さんもたくさんいます。

合併症を引き起こしてから初めて気づくのでは、後悔してしまいますよね。打撲は程度によっては命の危険もあるため、簡単に考えていると取り返しのつかない事態を招いてしまいます。

飼い主ができることとして、まずは打撲を未然に防ぐための環境対策を行ない、日々のコミュニケーションの中で体調チェックをしながら愛犬を守ってあげましょう。 

【参考:イヌ・ネコ 家庭動物の医学大百科 改訂版】

【参考:もっともくわしいイヌの病気百科】