愛犬が甘え鳴きをする姿は可愛いですが、それが頻繁になるとうるさくストレスになる場合もあります。犬が甘え鳴きをするのは、飼い主に甘えているだけではありません。考えられる様々な原因を見ていきましょう。
目次
犬の甘え鳴きとは?
犬は、敵意を向ける相手に威嚇をするときや、強い要求があるときに、大きな声で「ワンワン」と吠えます。しかし、それとは違い小さな声で「クンクン」や「ピー」と鳴く場合があり、これを一般的に甘え鳴きと言います。
威嚇とは違い、飼い主に対して甘えや弱さを見せるときに多く見られ、犬にとってのコミュニケーションのひとつです。
犬が吠える理由は大きく2つ!声の高さで異なる強さアピールとは犬が甘え鳴きする理由はライフステージでも違う
甘え鳴きは、犬が気持ちを伝えようとする手段のひとつなので、なぜ甘え鳴きをするのかは犬によって理由が様々です。しかし、ライフステージごとで甘え鳴きの傾向が違うため、なぜ愛犬が鳴いているのかを判断するための材料として参考にしてみてください。
子犬の場合
子犬期は、体や心を作っていく大切な期間です。そのため、気持ちの変化や飼い主への甘えが強く見られる傾向があり、それが甘え鳴きに影響していると考えられます。子犬の甘え鳴きで多い理由は、次の3つが挙げられます。
- 構ってほしい
- 寂しさや不安を感じている
- お腹がすいている
もっと遊びたい、もっと甘えたいというふうに、飼い主に構ってほしいときに甘え鳴きをすることが多く見られます。一人遊びが苦手な犬の場合は、特に頻繁に鳴いてしまう傾向があるでしょう。
生まれて間もない頃は、母犬に甘えたい子犬も多いでしょう。母犬の飼い主のもとでそのまま育てられるのであれば良いのですが、この時期にペットショップに行ったり、新しい飼い主のもとに行ってしまうと、子犬は不安な気持ちでいっぱいになります。
新しい飼い主や新しい環境、新しい生活に戸惑い、母犬を思って鳴いたり、寂しさを紛らわせるために、小さく「クンクン」と泣いてしまいます。飼い主が姿を見せたときに鳴き止んだ場合は、寂しさや不安を理由に鳴いていることがほとんどです。
人間の赤ちゃんは、お腹がすいたらそれを伝えようと一生懸命泣きます。それと同じで、犬もお腹がすくと鳴きます。特に、子犬期は成長のために多くのエネルギーを必要とします。
たくさん食べても、その分たくさん遊んでエネルギーを消費するため、すぐにまた空腹を感じてしまう可能性があります。
食べて間もないのに甘え鳴きを始めたら「もっと食べたい」というサインかもしれないので、正しい量を与えられているかを見直したり、量はそのままで食事回数を増やすなど、犬に満足感を与えられるように工夫したりしてみましょう。
成犬の場合
ある程度体ができてくる成犬期は、精神的にも肉体的にも落ち着いてきます。しかし、甘え鳴きをする理由は子犬期とそれほど変わりません。
活発な犬は、もっと遊びたいという寂しさや甘えから鳴くこともありますし、いっぱい遊んだことで空腹を感じて鳴くこともあります。
そのため、子犬期の頃と同じような接し方で甘え鳴きを対処していけば良いパターンが多いのですが、それ以外の理由もいくつか考えられます。
- 発情している
- 偽妊娠している
メスは、発情すると「クンクン」と鳴く姿が見られます。一方、オスには発情期がないのですが、メスが発する発情期特有の化学物質を感知することで発情し、同じように「クンクン」と鳴き出すことがあります。
近くに発情期を迎えたメスがいると、それに触発されてオスも発情し、メスに接触しようと脱走を図る犬もいるので、飼い主は注意が必要です。
メスの場合、発情期の1~2ヶ月後に偽妊娠をすることがあります。乳腺が張ったり、巣作りをしようとしたり、発情期同様に「クンクン」と鳴き出したりなど、妊娠中のメス犬が行なう行動をとることがあるので、避妊手術を受けていないメス犬を飼っている場合には注意が必要です。
老犬の場合
老犬になると、食欲の低下や体力の低下などが見られるため、空腹や遊びたいなどを理由に甘え鳴きをすることが減ります。しかし、この時期ならではの甘え鳴きも見られるようになります。
- 認知症にかかっている
- 不安を感じている
- 体調が悪い
人間が歳を取ると、赤ちゃん返りをする人が多いのと同じように、犬も子犬の頃に戻り、甘えたいという気持ちが強くなります。
特に、強く甘えるのは認知症にかかっている犬に多く見られる傾向なので、頻繁に甘え鳴きをしたり、徘徊したりなどの行動が見られた場合、認知症を疑った方が良いでしょう。
老化すると、視力がどんどん落ちていったり、耳が遠くなったりするなどの身体的な変化を感じます。それに対して不安を感じる犬も多く、不安や恐怖を飼い主に伝えるために甘え鳴きをします。
老犬に限ったことではありませんが、体調が悪いときに甘え鳴きをする犬がたくさんいます。苦しい、痛いなどを伝える方法がないので、弱々しく「クンクン」と鳴いて、なんとか異変を飼い主に伝えようとするのです。
体力や免疫力が低下してくるシニア期には、病気にかかる可能性が高まります。そのため、体調不良を理由に鳴くのは、子犬や成犬に比べて老犬に多い特徴だと言えるでしょう。
犬の甘え鳴きをやめさせる6パターンの原因別対処法
甘え鳴きには、様々な理由があります。だからこそ、なぜ鳴いているのかという理由を理解し、それぞれにあわせた対処を行っていくことが大切です。具体的にどんな対処をしていけば良いのかを、原因ごとに解説します。
甘えているとき
甘えているときは、声が高く、甘えるような感じで鳴くことがほとんどです。「クンクン」と鳴いたり、鼻を「ピーピー」と鳴らすこともあります。飼い主を求めて鳴いているのですが、そのときに行うべき対処は以下の2つです。
- 必要な要求には素早く応じる
- 甘え鳴きは突き放すことも大切
例えば、水が飲みたい、トイレに行きたいなどのおねだりのときにも、甘えた感じで鳴きます。こういったおねだりは、生命維持のために必要なことなので、素早く対処してあげましょう。
無視すると、犬はストレスを感じてしまうだけではなく、体調を崩す可能性があるので注意が必要です。
遊んでほしい、一緒にいてほしいなどの甘えの場合、それに応じて優しく接してあげるのも間違いではありません。しかし、それが毎回になってしまうと、鳴けば優しくしてもらえると犬が勘違いしてしまいます。
わがままな犬に育ってしまった後にしつけをしても、直すのに時間がかかります。必要なおねだりではないと感じたときには、すぐに応じるのではなく、しばらく様子を見ましょう。
自力で鳴き止めたら、おやつをあげたり、褒めてあげたりすると、犬はおとなしくすることのメリットを理解することができます。
不安や恐怖を感じているとき
甘えやおねだりのときよりも、弱々しい感じで鳴くことが多いのですが、なかには、遠吠えに近い鳴き方をする犬もいます。強い不安や恐怖の場合、吠えるのと同じくらい大きな声で鳴くこともあります。
飼い主は、犬の気持ちを理解して寄り添ってあげることが大切なのですが、具体的な対処としては、以下の2つが挙げられます。
- 原因を取り除いてあげる
- 慣れる訓練をする
まずは、なぜ不安や恐怖を感じているのかを考えてあげましょう。例えば、ゴロゴロと雷が鳴っていたり、近場で花火の音が聞こえるなどの場合、恐くて鳴き出す犬がいます。
そんなときには、近くに寄り添ってなだめてあげたり、音が聞こえにくい場所に移動させてあげるなどが効果的です。特に、屋外で飼っている場合には、これらの原因で鳴く犬も多いので、玄関に入れてあげるといった対処をするだけでも効果があります。
例えば、犬が恐れることが多いもののひとつとして花火があります。しかし、花火の音が響いたからと言って、それが犬にケガをさせる要因になるわけではありません。
危険ではないものに対してずっと恐怖心を抱いていては、ちょっとしたことで怯える性格の犬になってしまう可能性があります。
そうならないようにするために、飼い主が訓練をしてあげることも大切です。「大丈夫だよ、恐くないよ」と教えてあげることで、犬の苦手意識を克服するきっかけになるでしょう。
遠吠えを始めたとき
犬は群れを成す動物です。そのため、寂しさを感じると、仲間とのコミュニケーションをとろうと遠吠えをし始めることがあります。この遠吠えは、声がよく通るので、飼い主からすれば近所迷惑になるのでは、と不安になるでしょう。
そんなときには、やめなさいと怒るのではなく、胸の辺りを撫でてあげるなどしてそばに寄り添ってあげることが大切です。1人じゃないと伝えることで、犬も安心して遠吠えをやめる可能性があります。
体の不調を訴えているとき
体調が悪いときには、弱々しく「クンクン」と鳴いたり、痛みに耐えられず「キャンキャン」と大きな声で鳴いたりします。こういう場合にできる対処法は、以下の2つです。
- 気温が低ければ温める
- 病院で診察してもらう
どこか痛むところがあるわけではありませんが、寒さが原因で体がつらいと鳴くことがあります。そんなときには、体を温めてあげましょう。温かい場所に移動させたり、毛布をかけてあげるなどの対処をすることで、落ち着く場合もあります。
それでも鳴き止まない場合は、寒さだけではない原因も考えられるので、病院で診てもらうことを考えましょう。
犬が体調不良を訴えるとき、どこが痛むのかを伝えるために様々な行動をします。例えば、痛みを感じる部分をかばうようにうずくまったり、お腹や腰に痛みを感じたときに、立ったまま背中を丸めるなど、普段とは少し違う行動が見られたら、それは犬からのサインです。
応急処置が必要な場合もあるので、病院に電話をして様子を伝え、適切な対処をしながら病院に連れて行きましょう。
発情しているとき
発情による甘え鳴きは、しつけで直せるようなものではありません。犬の性格とは関係なく、習性のひとつであり、発情期を迎える以上避けては通れないからです。根本的に解決させるためには、早めに避妊・去勢手術を行うのがもっとも効果的といえます。
偽妊娠しているとき
発情期が終われば自然におさまりますが、その間ずっと甘え鳴きをされると、対処に困る人もいるでしょう。
偽妊娠をしている犬は、本当に妊娠したつもりでいるので、対処法としては、妊娠中にする行為をさせないようにすることが大切です。その方法の例として2つ紹介します。
- 乳腺を触らせない
- 子どもに見立てるおもちゃを与えない
偽妊娠中に乳腺が張り、なかには母乳を出す犬もいます。それを舐めることで母性が強くなってしまう可能性があるので、できるだけ舐めさせないような工夫をすることが重要です。乳腺が隠れる服を着せたり、腹帯を巻いたりするのがおすすめです。
普段遊んでいるおもちゃや、部屋にあるぬいぐるみなどを自分の子どもに見立ててしまう犬もいます。強い母性を働かせる要因となるので、これらは犬の目に触れないように隠しましょう。
ときには、我が子を探すように「クンクン」と鳴いて歩き回る場合もありますが、心を鬼にして、犬自身で気持ちを落ち着けられるように見守ってあげてください。
老犬の認知症による甘え鳴きに対策はある?
老化によって脳機能が低下し、様々な弊害を及ぼすのが認知症です。人間と同様に、犬にも認知症が見られ、症状もとてもよく似ています。
認知症になった犬には、それに適した対応をしていくことが大切です。飼い主として、どう愛犬に接してあげれば良いのかを解説します。
認知症の症状
今まで甘え鳴きをしなかった犬でも、認知症になると急に甘え鳴きをするようになる場合があります。その他の症状は、下記のとおりです。
- 同じ場所でグルグル回る
- 甘えてくる
- 夜鳴きをする
- 決められた場所でトイレができないなどの失敗をする
- 急に攻撃的になる
- フラフラと歩く
- 昼夜が逆転する
この他にも様々な症状がありますが、今までに見たことがない異常な行動をとっている場合にも、認知症の可能性が考えられます。
適度な運動や勉強で甘え鳴きを改善
老犬でも、認知症にならない犬はたくさんいます。これは、老化しても脳機能がしっかり機能しているからです。認知症になりやすい犬は、普段から脳に対する刺激が少ない傾向にあるので、認知症予防や改善のためには、脳を適度に刺激することが大切です。
体を動かしたり、勉強をさせたりすると、脳が活性化します。これによって、認知症による症状が軽減し、甘え鳴きが軽減される可能性があります。
優しく接して不安を取り除こう
認知症になった犬は、自分自身の衰えに不安を感じています。特に、寝たきりになってしまった犬は、元気に走り回ることもできないので、精神的なストレスをためやすくなります。
そんなときに、支えになってあげられるのは飼い主です。寝てばかりで何もしない、食事やトイレが下手になるなどが原因で、イライラしてしまうこともあるかもしれません。
しかし、人間と同じように、犬の寿命が延びたことで介護が必要な愛犬が増えているのも現実です。優しく接してあげることで、犬の不安な気持ちを軽くしてあげられるでしょう。
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甘え鳴きの声が大きかったり、頻繁だったりすると、しつけをしなければと思う人もいるのではないでしょうか。しかし、そのときには気を付けなければならないことがいくつかあります。
- 大きな声で怒鳴る
- 叩いたりマズルを掴む
- 目を見つめる
犬は、飼い主が大声で怒鳴ることについて、自分が悪いことをしているからだとは思っていません。そのため、なぜ怒鳴っているのかが理解できないのです。
怒鳴りつけるようなしつけを続けても、犬は一向に行動を改めようとはしませんし、飼い主もストレスがたまるだけで何のメリットもありません。
こういったすれ違いは、犬と飼い主との間に壁を作る原因となるので、しつけで怒鳴るのはNGです。
しつけで叩くのは、犬に恐怖心を植え付けます。飼い主からすれば、言いつけを守らないからしつけのために叩いた、と言うかもしれませんが、犬からすれば、急に叩かれたという事実だけが残ります。
怒られていることが分かっていないので、犬は「また叩かれるかもしれない」という恐怖心を持ってしまうのです。
また、しつけの際にマズルを掴むのもNGです。マズルは、犬にとってとても大切な部分です。
それを掴まれることで、犬は強い嫌悪感を抱きます。お互いに信頼関係を築きにくくなってしまうため、人間の感情的なしつけを押し付けないよう気を付けましょう。
人間同士であれば、相手の目をしっかり見るのはコミュニケーションをとるうえで大切なことなのですが、犬にその常識は通用しません。
犬の場合、目をじっと見つめるのは、相手に対する威嚇や攻撃を意味します。大事な話だからとじっと目を見て話していると、犬は、飼い主に敵意を向けられていると思ってしまいます。
犬の甘え鳴きはコミュニケーションのひとつだと理解してあげよう!
犬の甘え鳴きは、可愛いと思うときもあれば、うるさいと思ってしまうこともあるでしょう。しかし、言葉の話せない犬にとって、鳴き声はなんとか自分の気持ちを伝えようと一生懸命に表現をする手段のひとつなのです。
甘えやおねだりだけではなく、不安の伝達や体の異常など、できるだけ早く対処してあげなければならない場合もあります。愛犬からのメッセージを、無視をせずに適切な対応をしてあげることが絆を深めて快適な毎日を送るうえで大切だといえます。
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